2杯目「夢の宴」
今日も一日お疲れ様です。
「なー言っただろ? 私の弟は必ずやり遂げるって!」
幼女姿のクロノスは、農耕の神のふくよかなお腹をぺちぺちと叩いていた。
丸い目に丸いお腹をした中年男性は、コップに湧き水を注ぐとテーブルに出した。
「クロノス姉さんその話は何度も聞いて分かったから。キャラ変わってるし、なんか身体透けてるし、色々変だからちょっと呑むの休んだらどうかな?」
「今という刻は今しかないのよ!? 今呑まなくていつ呑むのよ!? ええ?」
「いや、そうだけど、そうじゃなくてさ。あ! 朝採れた野菜なんだけど食べない?」
「お、良いもん持ってんじゃないの。ちょうどお腹空いてたのよね。はむ」
差し出されたきゅうりに口で噛りつくと手を使わずにきゅうりをポリポリと食べ出した。
(姉さんって意外と器用だったんだなあ)
ポリポリ食べる姿を眺めていると突然、遠くの空から突風と共に風の神が飛んできた。ブオオッ! と風を撒き散らしながら着陸したかと思うと、二人の影は転げるように寄ってきた。
「サターン! 助けてくれ! どこまで逃げても『フフフ、恥ずかしがらなくていいんだぞ☆』って、姉さんが物影から現れるんだ!
仕舞いには、どこまで行ってもポリポリ聞こえてくる! 俺は、ホラー系苦手なんだよおお!」
いつもお気に入りのスーツで固めた髪でスマートに決めていたはずの妹シルフィが、髪をボサボサにしながら転がってきた。そしてそのまましくしくと泣き出した。
そんなシルフィの頭を、でんぐり返ししてきたもう一人の幼女は、なでなでしてあやし始めた。
「おーよしよしよし。なんか怖いことあっらのか」
「それは災難だったね、て? クロノス姉さんが二人!?」
なでなでしてるクロノスと腹をぺちぺちするクロノスは、転がっているシルフィをお立ち台に見立てて乗った。
「「私、嬉しくて嬉しくて皆の所に瞬間移動して自慢してるのろ。フフフ、やったなあバッカス」」
「ああ、だから透けてるのか」
「ああ。じゃなくて、なんとかしてくれって!」
シルフィがガバッと顔を上げて抗議するも、僕は申し訳なさそうに頬をポリポリとした。
「いやー、どうしようもないんじゃないかな?」
「そうだぞ、シルフィ~、せっかく姉がこうやって絡んでやってるんだから喜べよ~。いや、恥ずかしいのかあ?」
「だー! 付きまとうのは良いから物影から出てくんのは止めろ! それと今日やる部下への指示がまだ終わってねぇんだよ!」
「やだ。だって反応が面白いんだもん」
「た、助けてくれサターン!」
「ごめん。あとで、お見舞いの野菜届け───」
「何二人で話してんだよお。先ずは呑めって! 楽しくなってきたな、フフフ」
二人は、いつの間にか取り上げられていた盃を顔に押し当てられグビグビと酒を飲んだ。
「そうだ! まだ顔付けてない皆にもこうすればいいのか!」
─ ─ ─ ─
「ねえ、キュア兄知ってる? お父さん達が信徒創造する遊びしてるみたいなの」
破壊の神シヴァと治癒の神キュアはクロノスを背負いながら、ちょびちょびとバッカスの夢を呑み、青い芝生の上でほろ酔いトークをしていた。
キュアは、顔の前で手を振ると、熱くなった息を吐き出した。
「いや、知らねえな」
その言葉を待ってましたと言わんばかりに、二人のクロノスは、ダンスバトルを始めた。
「頼れるクロノス姉さんが答えてあげよう~。ニュクスちゃんが今取り組んでる世界に、自分が考えた最強の存在をそれぞれ創って闘わせてそれを観戦しながら、バッカスの夢を呑むお祭りよー」
「なんだそりゃ、面白すぎるじゃねえか!」
「はい、素体」
クロノスは、どちゃどちゃっと顔なし人間を落とした。
「これを弄るのか……まるで邪神だね」
「ムハハハ、我を呼んだか?」
「「どうしてここに!?」」
突然現れたゴリマッチョにスーツ姿の邪神は、黒いチョビヒゲを一撫でした。
「ム? それ───」
邪神は音もなく消えた。
「あれ、お呼びじゃ無かったのか。これは失礼したわ」
「姉さん!」
二柱がクロノスに勢いよく顔を向けると、空がキラリと煌めいた。煌めきは男性を中心とした炎で、隕石のように飛びながらこちらへと向かってきた。
「ムハハハ! 姉さん! 話の途中で帰さな───」
邪神は音もなく消えた。
「「バアルー!!!」」
賑やかな二柱にクロノスは目を細めた。
「フフフ……アハハハ、楽しくらっれり───」
びたーん! と、音を出しそうな倒れかたをしたかと思うとクロノスは、姿を消した。
「なんだか知らないが消えたぞ!」
「まあ、あれだけ色々しながら呑んでりゃそうなるわ」
「ムッハー!」
地面にゴスンッと鈍い音を出しながらバアルの頭だけが降ってきた。
「おい、シヴァ! 今のうちに姉さんの体内アルコールと酔ってた時の記憶を全部破壊しろ!」
キュアは、手をポンと叩き、シヴァは、面倒そうな顔をした。
「おお、その手があったか!」
「えー、恥ずかしいかもだけど記憶は良いじゃん。あのイメージ壊れたお姉ちゃん、私好きだけどなあ」
「馬鹿野郎! それで邪神になったら誰が抑えると思ってんだ。頼むからやってくれ!」
「あ、もしかしてバアル、姉さんに何かしたの?」
バアルは、渋い顔をすると視線を地面に向けた。
「……我が文字通り身体を張って寝かし付けた」
「「え……」」
その後バアルの神域に向かい寝てるクロノスを回収すると、方々へとバラバラに飛ばされた身体が空から降ってくる度に合体を繰り返したバアルを交え、三柱は楽しく素体を弄りあった。
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