8 魔法ー後編ー
きりが良いので短めです。
ほとんどメアリー目線です。
朝食を食べ終えたフィオナは軽く湯浴みをし、ベッドに腰掛けた。
ゆっくりと右手に回復魔法の魔素を集め、薄い霧の様になったソレは上手く全身にまとわり付いた。その時、かすかな違和感に気付いた。
(ん?思ったよりも魔力を使うなぁ。)
薄い霧では心許ないので少しずつ濃度を濃くしていくとその違和感が顕著になった。
異変に気付き、魔素の放出を辞めようとしても魔素の放出が止まらなかった。ぐんぐん何かに魔素が吸い取られていく。
「メアリー!何か変。魔素が吸い取られていく。」
「フィオナ様、今調べます。お気を確かに。」
メアリーはフィオナの服を脱がし、何が悪さをしているのか調べ始めた。
フィオナの身体からどんどん魔力がなくなっていき、遂に気を失ってしまった。だが魔力の放出は止まらない。
メアリーはフィオナの指にはめてある指輪の異変に気付いた。付いていた青い魔石が血の様に赤くなり、光り輝いていた。この指輪が原因だと気付き、必死に外そうとするも外れない。
フィオナの顔色から赤みが消えた頃、何者かが部屋に飛び込んできた。メアリーは即座にフィオナにシーツをかけ裸体を隠した。
彼は何も言わずに、フィオナから指輪が外そうとするメアリーを止め、指輪に両手をかざした。黄金色の光が手のひらから現れ、バキッという音と共に指輪が外れた。
メアリーは身体の力が抜け、放心状態だった。主人が命を落としそうになっているのに助けられない自分に憤りを感じ、ただアワアワしていた自分を恥じた。
彼はフィオナを抱き上げ、小さな小瓶を口にあてて薬の様な物を飲ませようとしていたが、口元から流れて上手くいかなかった。
彼は瓶を自分の口に持っていき液を口に含んだ。フィオナの赤みの無くなった唇に自分のそれをあて、流し込んだ。それを何回か繰り返すとフィオナの顔に赤みが戻り、ゆっくりとベッドに寝かせた。
「あ、ありがとうございます。」
「いや、間に合って良かった。」
メアリーは彼をじっと観察した。小柄で黒いフードを被り、腰に短剣をさし、冒険者風である。王宮内には似つかわしくない格好。色々気になるところはあったが、主人の命を救ってくれた恩人である人を不快な気分にさせたくない。
「あの、お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「マックスだ。」