7 魔法ー前編ー
ちょっと短めです。
(ん?私はいつの間に寝ていたんだろう?うーん。記憶が曖昧。さて、ここはどこなんでしょう?)
フィオナはベッドから起き上がり辺りを見回した。
寝室にしては広めの部屋で壁紙は桜色、ベッド以外の家具は丸いテーブルと椅子のみ。出窓があり、そこには白いレースのカーテンがかかっていて太陽の光がキラキラと光っていた。とてもシンプルな部屋だが全てが質がよく高級な家具しかない。
(確か、コンラッド様と庭園で話してたんだよね。その後の記憶がないなぁ。昨日からなんだかおかしい。なんか気分が悪いなぁ。)
フィオナが考え込んでいるとトントンとドアがノックされ、声をかけるとフィオナ専属侍女のメアリーが入ってきた。
「メアリー!」
フィオナは思わずメアリーに抱きついた。
「お嬢様、はしたないですよ。」
「今日くらいは大目に見て。昨日1日で色々あったんだから。」
メアリーはフィオナの10歳上の20歳で、フィオナが産まれてからずっと専属侍女として働いている。フィオナはメアリーを姉のように慕っており、二人きりの時はくだけた会話をしている。
「まぁ今は二人きりですし許しましょう。」
メアリーは慣れた手つきで朝食の準備を始めた。
「ここって王宮なんだよね?」
「はい、コンラッド殿下とお話の最中にフィオナ様は倒れてしまったそうで、こちらに運ばれました。王宮医師の診察によると、魔力枯渇による疲労との診断ですが、何か魔法を使われたんですか?」
「えっ??何も使ってないけど?」
「もしかすると極度の緊張で魔力が垂れ流しになっていたのかもしれませんね。」
「そうなのかなぁ?」
王宮に来てから起こる体調不良に不安になり、昨日あったことを全てメアリーに打ち明けた。記憶が曖昧になったことも含めて。
「フィオナ様、それはもしかすると何か魔法をかけられていたのかもしれませんね。その魔法から逃れるために無意識に魔力を使い、魔力枯渇を起こしたのかもしれません。」
「無意識に魔力を使うなんてことあるの?」
「まだ魔力制御が上手くいかない子供の場合はよくあります。心配なのは、フィオナ様の魔力量はとても多いので枯渇までいったということは高度な魔法をかけられていたということですね。どんな魔法かは分かりませんが、何か対策が必要かと思います。」
「うーん。魔法となるとカーティスに頼むしかないかぁ。」
執事のカーティスは宮廷魔導師にスカウトされるほどの魔法の手練れであり、フィオナに魔法を教えてくれる先生である。
「そうですね。ただ今日は旦那様と外出されているので明日になると思います。」
「そっかぁ。何か魔法を弾き返す方法とかないかなぁ?」
「魔力量の消費が激しいですが、回復魔法を身体に纏わせることができれば魔法を弾くことはできると思います。」
「へー回復魔法ってそんなこともできるの?」
「教会の聖女様は回復魔法で身を守っているそうですよ。だから不可能ではないと思いますが、具体的にどうすれば良いのか私では分かりませんので。お役に立たず申し訳ありません。」
メアリーは申し訳なさそうに目を伏せた。
「十分役に立ってるよ。ありがとう。朝食食べたら試して見るね。」
フィオナはニコリと微笑んで、焼きたてのパンに手をつけた。