16 Aクラス
フィオナたちが教室に到着すると共に一人の壮年の男性が入ってきた。彼は綺麗な長い銀髪を三つ編みにし赤い紐で結んでいた。燃えるような紅い目にとても整った顔立ちをしていた。
三人は慌てて空いている席に座ると、彼は話し始めた。
「私はこのクラスを担当するエリオット・ミストです。以前宮廷魔道士団に所属していました。
このクラスは高位貴族の属するクラスですが、今年は魔力が高い者が多いので、基本は魔術についての授業になります。マナーやダンス、剣術なども一通り行い、皆さんが基礎を身につけているようであればその授業は終了となります。
また、年に二回長期休暇があり、その前後で試験が行われます。試験終了後には夜会が開かれ、学院の生徒でなくても参加が可能となります。
この学院内では原則魔法の使用は禁止です。いかなる魔法も使用できないよう結界が張っておりますので、魔法は発動しません。ですが、誰かが使用すればすぐに分かります。魔法を使用した者は停学または退学となりますので、十分気をつけてください」
(結構罰則が重いわねー。退学はやり過ぎじゃ無い?)
『ほんとほんと。フィオナに何かあっても私が守れないじゃない』
フィオナの肩にリアが現れ、耳元で囁いていた。フィオナは驚いて声が出そうになったが、すんでのところで堪えた。
(びっくりさせないでよー。叫びそうになったわ)
『ふふ。ごめんなさい』
『エドワードが迎えにくるらしいから、それを伝えにきたのよ』
リアはフィオナが毒に倒れて以来デビリアスの行方を追っていた。リアもフィオナを守れなかったことを嘆いていたが、二度とこんなことが起きないように元凶を叩き潰そうと心に決めたのだ。
(王太子自ら迎えにくるってどんだけ過保護なんだろ。終わったらすぐに馬車の停留所まで行かないと大変なことになるわ)
チラッとアリューシアを見ると、リアの話を聞いていたようで「分かった」と言うように頷いていた。その後ろのダリルも少々呆れた顔をしていたが、頷いていた。
エリオットの学院説明も終わり、教室を出ようとした所でコンラッドに捕まってしまった。
「フィオナ、昼食を一緒にとらないかい?この学院の料理人は元宮廷料理人なんだ。今から用意してもらうんだけど、フィオナたちも一緒に食べないかい?」
「コンラッド殿下、お誘いいただきありがとうございます。ですが、わたくしどもはこれから急用がありまして、すぐに帰らなければなりませんの」
「殿下、そういうことですから失礼しますね。姉上、急ぎましょう」
コンラッドの返事も聞かぬままダリルはフィオナを引っ張って行った。
「殿下、申し訳ありません。また機会がございましたらよろしくお願いいたします。それでは先を急ぎますので」
「あ、あぁ。フィオナに今度晩餐を一緒にと伝えてくれ」
「はい、お伝えいたします」
アリューシアは優雅に一礼して去っていった。
三人が停留所に着くと既にエドワードが着いていた。さっと馬車から降りたきて恭しくフィオナの手を取り口付けた。そのまま馬車までエスコートをし、周りにいた生徒や教師たちは突然の王太子の登場にどよめいた。ダリルとアリューシアも急いで馬車に乗り込んだ。
「エドワード殿下、どうしてお迎えにいらっしゃったんですの?」
「なんだか口調がアリィに似てきたね」
クスクスと笑いながらエドワードが呟いた。
「で、何で来たんですか?」
「学院の関係者の中にデビリアスが紛れ込んでいるらしくてね。心配で来てみたんだが大丈夫みたいだね」
「あら、魔法が使えない学院の中で何をするつもりなのかしらね?」
「魔法は使えないが、神力を使うことはできるんだよ。さすがに人間では神力を防ぐことはできないし、感じ取ることもできないからね」
「あの女狐には神力は使えないわよ?まさか魔神まで来ているなんて言わないわよね?」
「いや、来ていたと思いますよ」
「えっダリル?魔神を知ってるの?」
「昔会ったことがありますからね。入学式の時、僅かですが彼の神力を感じました」
「ダリルって一体何者なの?」
「姉上のお守役です」
「とりあえず、この馬車は盗聴防止の結界を張っているが、結界が攻撃を受けているようだから続きは着いてからにしよう」
「そうね。きっとワザと攻撃しているんでしょ。ここにいるって知って欲しいのでしょうね。あの男は本当に馬鹿だもの」




