8 婚約発表
遅くなりました。
暫く毎日更新していきます。
「黒影宮?」
(王城の敷地内に宮なんてあったかな?確か、騎士の宿舎が2つ、魔道士の宿舎が1つ、見習いの侍女や従者の宿舎が2つ、あるはずだけど。王族が住むような建物なんてなかった気がする)
フィオナは首を傾げた。
その姿がなんとも愛らしく、エドワードは笑みを浮かべ、近くにいた従者に何か指示し、大きな紙を持って来させた。
「王族に男児が産まれると一人1つの宮が与えられるんだ。コンラッドには碧影宮、俺には黒影宮が与えられた。これは王城の見取図だ。ここが俺の部屋であり、黒影宮の入り口になっている」
エドワードは見取図の最奥の二階の一番奥の部屋を指さした。
「部屋が入り口ってどういうこと?」
「この城は初代の国王が建てた城なんだが、彼はとても魔力が多く、武術に優れ、人としての性格も良く、賢王だったんだ。そして、これはあまり知られていないことなんだが、創世の女神と地の女神、光の妖精王の加護を受ける者でもあった。その為、特殊な能力を持っていた。この城はその能力をふんだんに使って建てられている。
彼は特に空間魔法が得意であった為か、見た目の広さ以上に部屋の数が多いし、王城の中に宮がいくつも入っている。ただ誰でも宮に入れる訳ではなく、登録された場所から登録された人でないと入れない。
んーなかなか口頭での説明では上手く説明できんな。
実際に夜会の後、黒影宮へ行けばどんなものか分かると思う」
(おぉー。それって魔法の城ってことー!?すごーい!ファンタジーそのものじゃない!)
「楽しみにしてます!」
フィオナは目をキラキラと輝かせてエドワードを見つめていた。エドワードはフィオナの見えない圧に圧倒され、後退りしたのをメアリーと従者は生暖かく見守っていた。
『コンコンコン』
「殿下、キース様とダリル様がお着きになりました」
ドアの外から騎士の声が響いた。
「通せ」
ドアが開き、騎士の正装を見に纏った二人が入ってきた。
「うわぁー。本物の騎士みたい。凄いわ」
「うちの家系は騎士の家系だから正装はこの格好なんだよ。姉上も本物のお姫様みたいだよ」
ダリルがニヤっと笑った。
「お褒めに預かり光栄ですわ。ダリル様」
「エド、ほんとにこいつでいいのか?まだ間に合うぞ?」
「ああ。フィオナがいいんだ」
エドワードはとろける様な微笑みをフィオナに向けた。向けられたフィオナは顔を真っ赤にし俯いてしまった。
「兄上、エドワード殿下くらいしか姉上を貰ってくれる寛大な方はいらっしゃらないですよ」
「まぁそれもそうか」
「メアリー。キースお兄様もダリルも酷いのよー」
今にも泣き出しそうな顔でメアリーに抱きついた。
「フィオナ様、お化粧が崩れてしまいます。そして、淑女としてどんな嫌味にも笑顔で軽やかにかわして行かなければなりません」
メアリーは手早くフィオナの化粧を直した。
その後、キースとダリルは部屋を退出し、会場へと向かって行った。
今回の夜会は王太子の婚約者であるフィオナのお披露目が目的である為、招待客が全員揃った時点でエドワードとフィオナが揃って入場することになっている。
暫くすると会場へ行くよう従者に促され、会場前の大きな扉の前まで案内された。少しすると重厚感ある扉がゆっくりと開き、エドワードにエスコートされフィオナが入場した。
会場は破れんばかりの拍手に包まれ、エドワードもフィオナも微笑みを張り付け、国王陛下の元へゆっくりと歩みを進めた。
「今宵は皆が集まってくれたことに感謝する。先日立太子したエドワードの婚約者であるフィオナ・マキナム嬢である。彼女は宰相であるマキナム侯爵の娘である。尚、この婚約は2年前に調印したものであるのでこれから王妃教育が始まることになる。様々な憶測でフィオナ嬢を悲しませる者がいないことを切に願う」
しんと静まり返った会場に国王の言葉が轟いた。
(やっぱり国王陛下って優しい。心遣いが嬉しいな)
静かな会場にゆるやかな音楽が流れ始めた。
「フィオナ、私と踊っていただけますか?」
「はい、喜んで」
フィオナはキースとダリルに叩き込まれたことを必死に思い出しステップを踏んだ。途中で間違えそうになると、エドワードがフォローし、見た目には優雅にダンスを楽しむ様に見えた。
ファーストダンスが終わると、招待客からの挨拶に対応することになった。
令嬢がいる家は、フィオナに美辞麗句を連ねつつも、自分の娘を是非側妃にと勧めた。
挨拶が終わると、エドワードは国王に呼ばれた。
「フィオナ、少しこの場を離れることになった。キースとダリルを呼んだからこの場で少し待っていてくれ。一応近くに近衛兵もいるが念の為リアを呼んでおいてくれ」
「分かったわ」
(リア。お願い出てきて)
『はぁーい』
「リア、後のことは頼む。フィオナを守ってくれ」
『もちろん』
エドワードが会場を出る頃、キースとダリルがフィオナの元にたどり着いた。
「フィオナ、何か飲むか?」
「何か取ってくるからちょっと待ってて」
ダリルはリンゴジュースをフィオナに差し出した。
「ありがとう」
フィオナは喉が渇いていた為、一気に飲み干した。
一気に目の前が暗くなり、フィオナは意識を失った。




