7 婚約発表ー準備ー
長めです。
婚約発表当日の朝、フィオナは馬車に揺られていた。婚約発表自体は夜会で行われるのだが、婚約して二年経ってやっと行われるフィオナのお披露目に、気合いが入った王妃や2人の側妃、王宮侍女たちはフィオナを着飾るのを大変楽しみにしているため、太陽が顔も出さない早朝から家を出ることになってしまった。
フィオナの隣にはメアリー、正面には父のアレキサンドロスが新聞を読んでおり、膝には妖精のリアがアレン特性の星形クッキーをもぐもぐと食べていた。
「ふぁー。眠いー」
「もう少しで着きますので、シャンとしてください」
「はぁい」
「フィオナ、一つ伝え忘れていたが、今日から王宮で暫く暮らしてもらうことになった。必要なものはエドワード殿下が用意してくれるそうだが、侍女たちにある程度の物を用意させている。夕方にキースとダリルが持ってくることになっているから、急ぎ必要な物があればメアリーに伝えてくれ」
「え?どうしてですか?」
「私の口からは詳細は伝えられないんだ。エドワード殿下から聞いてくれ。夜会の前に話せる時間をもうけてくれるそうだ」
「そうですか。分かりました」
(何でお父様が話せないの?まぁきっと身の安全の為だよね)
「フィオナ様、到着しますよ。寝ないでくださいね」
「大丈夫よ!」
フィオナたちを乗せた馬車が門をくぐり、城の前で止まった。従者によって扉が開けられると、エドワードが立っているのがフィオナの目に入った。
エドワードにエスコートされ馬車を降りるとそこには目を輝かせた侍女たちがズラリと並んでいた。
「フィオナ、着いて早々で申し訳ないが、侍女たちが湯殿で準備して待っているからそちらへ向かって欲しい。支度が整ったら、控室で待っててくれ。私は少し仕事をしてくるよ」
フィオナの手にそっと口付けしエドワードは去っていった。
フィオナは湯殿で侍女たちに全身ピッカピカに磨かれた。普段は一人で入ることが多いフィオナは同性とはいえたくさんの侍女たちに裸体を晒すことがとても恥ずかしかったが耐えた。その後、オイルマッサージ、泥パック、ローションパック、頭皮マッサージなどフルコースのエステを堪能した。
全身のトリートメントだけで午前中が終わってしまい、王妃と昼食を取ることになった。
「フィオナさんの髪って綺麗ね。今回はあまり時間がなかったから出来なかったけれど、爪のお手入れも一緒にしましょうね」
「はい、王妃様」
「お義母様って呼んで頂戴」
「はい、お義母様」
「ふふ。やっぱり女の子は可愛くていいわね。
さぁ、冷めないうちに召し上がって」
「いただきます」
昼食のメニューはサラダ、野菜スープ、パン、フィレステーキ、チーズケーキと豪華なフルコースだった。王妃もフィオナも優雅に全てを平らげ、食後にお茶を飲んでまったりしていた。
「フィオナさんは本当にコンラッドではなくてエドワードで良かったの?」
王妃の爆弾発言に口に含んだお茶を吹き出しそうになるのを何とか堪えた。
「コンラッド殿下もお優しく、誠実で素敵だと思いますが、私はエドワード殿下の包容力に惹かれました」
「そうなのね。エドワードは私にとって甥でもあるし、どちらと結ばれても嬉しいわ」
「王妃様、そろそろフィオナ様のご準備を」
近くにいた侍女がそっと声を掛けた。
「そうね。側妃たちもきっと待っていることでしょう」
その後フィオナは数着ドレスを着せられた結果、真っ白のエンパイアドレスを着ることに決まった。髪は綺麗に編み込まれ、銀色で青い石のついたティアラが乗せられている。また首には真珠のネックレスがつけられ、左手の薬指にはエドワードから貰った婚約指輪が、右腕には銀と黒ダイヤでできたブレスレットが付けられている。
瞳の色はいつもの茶色ではなく、青と緑のオッドアイに戻され、薄く化粧をほどこされ、どこからどう見ても美女に変身した。
「そちらの瞳の色が本来のお色なんですね」
「とってもお綺麗です」
「本当に女神様です。神々しい」
「本当に素敵です」
侍女たちは口々にフィオナを褒め称えた。
「エドワードには勿体ないくらいの美女だわ。想像以上ね」
「本当に。素敵だわー」
「エミリーもフィオナさんみたいに素敵な女性になると嬉しいわ」
「メリンダ様、エミリー殿下はもうお歩きになりましたか?」
「まだなの。つかまり立ちはしているからそろそろかしらね」
「きっと素敵な王女様におなりになります。楽しみにしております」
「フィオナさん、ありがとう」
「フィオナ様、そろそろ控室へご案内致します」
控室に入ると既にエドワードが待っていた。
「エドワード様、お待たせ致しました」
エドワードは王子の正装をしていた。黒いズボンに青い刺繍が施された黒いベストに白いジャケットを着ていた。
(凄い。めちゃくちゃカッコいい)
フィオナは赤面し固まったままエドワードを凝視していた。エドワードは少し困った様な顔をして、フィオナをソファに座らせた。
部屋にいた護衛の騎士二名とフィオナを案内した侍女は気を利かせて退室していった。
「フィオナ、とっても綺麗だよ。その瞳、久しぶりに見たな。きっと大勢の男たちがダンスを申し込むだろう。その瞳に私以外が映るのは許せない。ずっと私の腕の中に囲っておきたいよ」
「エドワード様もとっても素敵です」
フィオナは真っ赤に火照る頬を手を当てて俯いた。しかしすぐにエドワードに顎を持ち上げされた。
「きちんと私に顔を見せて」
(な、な、何かいつものエドワード様じゃないー)
「早く私のものにしたいよ」
そっと触れるだけの口付けがされた。
「フィオナ、今日から暫く私の城に泊まることになる。マキナム侯爵から話は聞いたかい?」
「は、はい」
「今は時間がなくて詳しくは話せないんだが、闇落ちした妖精の封印が解けてしまってね。その妖精がフィオナを狙っているんだ。そいつが捕まるまで私の城、黒影宮に泊まってもらう」




