4 女神様の悲恋
遅くなりました。
エドワードが帰って行った後、フィオナは顔を両手で覆い、ベッドの上で寝転がっていた。
(『嫌いか?』の問いに『好き』はやり過ぎたかも!そこはフルフルって首を振って『嫌いじゃないです。…好きです』が一番可愛らしい受け答えだったかもー)
メアリーがダリルの訪問を何度伝えてもフィオナの耳には一切届いていない。痺れを切らしたメアリーはダリルを部屋へ招き入れた。
「姉上?姉上?聞いていますか?」
(二年ぶりに抱きしめられたけど、二年前よりガッチリとして広い胸板、色気たっぷりだったー。口付けも以前より積極的に応えてしまったけど、大丈夫だったかな?あぁー恥ずかしい)
「あーねーうーえー!実力行使しますよ?」
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ。右へ左へと転がっているといきなりシーツをザッと抜き取られ、ドスンという音と共に床へ落下した。
「なっ何??」
目をパチクリさせているとフィオナの顔の目の前にダリルの顔があった。
「何度呼んだら気づくんですか?」
「あら、ダリル。来てたのね」
床から起き上がり回復魔法を自分にかけ、椅子に腰掛けた。
「ダリルも座ったら?
メアリー、お茶にしましょう」
「かしこまりました」
メアリーはお茶の準備をしにキッチンへ向かった。
「はぁー。学院に入学したら王妃教育も始まるんですよね?そんなんで大丈夫なんですか?」
ダリルは椅子に座ると共に訝しげな視線をフィオナに向けた。
「大丈夫よ」
「エドワード殿下に見放されないように頑張ってくださいね」
「ダリルがキースお兄様みたいになってるー。あの可愛いダリルはどこにいったのー!?」
今にも泣き出しそうな顔でフィオナは叫んだ。
「兄上ですが、先程戻られましたよ」
「そうなのね。邸には近寄らないようにするわ」
「はぁ。
姉上は貴族学院に入学されるんですよね?」
「そうよ。ダリルは騎士学院でしょ?」
「いえ、貴族学院に入学することにしました」
「えっ?それはお父様もご納得されたの?」
「はい。姉上が変なことをしないように見張るように言われました」
「えっ?」
「というのは冗談で、変な虫がよってこないように護衛目的ですよ」
「学院ってそんなに危険なのかしら?コンラッド殿下も入学されるのよね?」
「姉上はあの噂をご存知ないのですか?」
「ん?黒髪美女がエドワード殿下の婚約者っていうやつ?」
戻ってきたメアリーが紅茶とマフィンをテーブルに置いた。
「それは古い噂ですね。僕の言ってるのは『王太子になるのは女神様に愛された男』というものです」
フィオナは口に含んだ紅茶を吹き出しそうになったのを堪え、むせてしまった。
「ゴホゴホゴホ。なっ何それ!?」
メアリーがフィオナの背中をさすった。
「どこからか姉上のことが漏れたようです」
ダリルはマフィンを口に含み、美味しさを噛み締めていた。
「それにしたってまるで私が国王を決める権利があるみたいじゃない!?好きになったのがたまたま王子様だっただけなんだし」
「王族は創世の女神様に頭が上がらないですからね。まぁそれだけの罪を王族は背負っているんですから当たり前ですけど」
「ん?どういうこと?」
「姉上は『女神様の悲恋』を知らないんですか?」
「御伽話か何か?前王宮で女神様について調べた時にはそんな話出てこなかったけど?」
「御伽話みたいなものですよ。王宮にはないと思います。王族が隠したいことですから」
「そうなの?どんな話?」
「話は何種類かあるんだけど、全てに共通しているのは、創世の女神様が人間の男に恋をする。
彼はある国の第一王子であり、彼も女神様に惹かれる。国王と王妃は女神様を歓迎した。しかし自分の子である第二王子を国王にしたい側妃は女神様を拒絶した。
側妃は第一王子と女神様を毒殺しようとしたが、二人ともどうにか命を取り止めた。女神様は順調に回復をしたが、第一王子は全ての記憶を失ってしまった。女神様はそれでも王太子を愛し、いつも側で寄り添っていた。
王太子はまた一から国のことを学ばなければならず、国王は第二王子を王太子にすることを決め、側妃は喜んだ。
女神様は側妃によって城から追い出され、闇の森を彷徨った。それを知った第二王子は女神様を助けに向かった。第二王子も女神様に惹かれていることを知った側妃は女神様を殺した。
神殺しをした側妃は闇落ちし、人ならざるものとなってしまった。それを記憶を取り戻した第一王子が封印して、女神様の無念を晴らす。
これが『女神様の悲恋』だよ」




