18 夜会
フィオナの部屋には光の妖精が飛び回っていた。
フィオナが気を失った後、マックスが光の神殿から一緒に連れてきてくれ、契約をした子だ。
『フィオナ様ー。私に名前付けてー。』
「そうだなぁー。リア、はどう?」
『いい名前ー。気に入ったよ!』
「良かった。」
フィオナはリアに手伝ってもらって、瞳の色を赤に変えてもらっている。これで邸に戻っても外出が出来る。
先日、やっと医師から外出許可が出た。すぐに邸に帰ろうとしたフィオナを止めたのはキースだった。キースの婚約発表が王城で行われるらしく、その夜会に出席するように頼まれた。つまりフィオナの社交界デビューが決まったのだ。その夜会が終わったら邸に戻ることになった。
それからは大忙しだった。礼儀作法やらダンスやらを猛勉強した。ダンスにはコンラッドやマックスが付き合ってくれた。フィオナにはダンスの才能はなかったらしく、こけたり足を踏んだりと散々だった。
今日はフィオナの夜会デビューの日だ。キースの婚約発表は直前まで秘密らしく、表向きはデビュタント向けの夜会でフィオナ同様今回が初めての夜会の令息令嬢がたくさん来る。
「メアリー、変じゃないかな?」
「フィオナ様、お綺麗ですよ。」
フィオナは真っ白のプリンセスドレスに赤い蝶の刺繍をあしらったドレスを身につけている。背中が開いたドレスで少し大人っぽい。化粧は控えめにし、髪はアップにしている。
「フィオナ、準備はできたかい?」
アレキサンドロスが迎えにきた。
「はい、お父様。いかがですか?」
フィオナはドレスをつまんでクルリと回った。
「可愛いよ。私の天使。」
優しく抱きしめた。
アレキサンドロスのエスコートで会場までやってきた。アレキサンドロスと共に何人かに挨拶をした。フィオナは飲み物を取りに行ったアレキサンドロスを壁際で待っていた。
辺りを見回していると、コンラッドが大勢の令嬢を連れてこちらにやってきた。
「フィオナ。綺麗だね。一曲踊っていただけませんか?」
コンラッドは手を差し出した。
令嬢たちはフィオナを睨んでいた。
「喜んで。」
断れるはずもなく、コンラッドの手を取った。
コンラッドはダンスが上手かった。フィオナがステップを間違えても上手くフォローしてくれた。
「殿下、ダンスお上手なんですね。」
「フィオナと踊るために頑張ったよ。今日は一段と綺麗だね。惚れ直したよ。」
少し頬を赤らめたコンラッドにフィオナはドキドキした。
「ありがとうございます。」
恥ずかしさで俯いてしまった。
するとすっと顎を持ち上げられた。
「俯いてはダメだよ。」
間近にコンラッドの顔があった。もう少しで唇が触れてしまう程距離が近かった。
「フィオナ。」
フィオナはマックスに腕を取られ、コンラッドから離されていた。
いつの間にか曲が終わっていたようだ。
「兄上。」
それはマックスにしか聞こえない程小さな呟きだった。コンラッドは目を大きく開き狼狽した。
「人違いだ。」
マックスはフィオナを庭園まで連れてきた。
「今日はいつもの格好じゃないのね。」
マックスは赤いベストに黒のジャケット、黒のズボンを着ていた。赤い髪は整えられ、顔立ちの良さを際立たせていた。
「これでも伯爵の息子だからな。」
「えっ、そうだったの?知らなかった。」
マックスは平民だと思っていた。
騎士や魔導師には平民の者が多くおり、貴族は安全な文官になることが多いのだ。
「俺の父は宮廷魔導師団長なんだ。」
「あーなるほど。宮廷魔導師は全員貴族じゃないとダメだったね。じゃぁマックスは騎士じゃなくて宮廷魔導師?」
「そうだ。今はただの護衛だけどな。」
「ふふ。そうだね。
さっきはありがとう。」
「いや、曲が終わってもあのままだったからな。
邪魔したか?」
少し寂しげな瞳がフィオナを見つめた。
「いやいや、助かったよ。」
「フィオナは本当にコンラッド殿下と婚約したくないのか?」
「えっ?」
「あのダンスの間、お似合いだと噂されていたぞ?最後にはお互い見つめ合ってキスでもしそうな勢いだった。」
(え?マックスは何を言ってるの?)
「そろそろキース殿の話が始まる。戻るぞ。」
マックスはフィオナを置いて会場へ戻ってしまった。




