16 黒髪
「フィオナ、準備はできたか?」
「うん。変じゃないかな?」
フィオナはいつものドレスではなくマックスが幼い頃着ていた騎士の服を着ていた。さすがにドレスで洞窟を歩くのは歩きにくい。だがフィオナの持ち物の中に女性用のズボンがなく、また今から仕立ててもらうのも時間がかかるのでマックスに借りることにしたのだ。
「いいんじゃないか?」
マックスはフィオナをマジマジと見つめた。
ちなみにマックスはいつものローブは被らず、黒い生地で赤のラインが入った騎士服を着ている。腰にはいつもの短剣と荷物を入れた小さな拡張鞄を付けている。
(フード外してるの初めて見る。やっぱり美少年だ。爽やか系イケメン)
「じゃぁ行くか。フィオナ、⋯⋯おいで」
ちょっと照れながら両腕を広げた。
フィオナはおずおずとマックスの腕の中に入った。
転移するのに触れ合っている必要はないが、転移先が安全かどうか微妙な所のようで、着いてすぐに戦闘になる可能性を踏まえて、マックスに抱っこされた格好で転移することになった。
(うぅ。恥ずかしい)
「じゃ、じゃぁフィン、後はよろしくね。帰ってきたらお菓子いっぱいあげるね」
『はーい。楽しんできてねー』
さすがに瞳の色は同じに出来なかったので、今日は一日体調不良としてベッドに寝ていることになったフィンはベッドの上からヒラヒラと手を振った。
一瞬宙に浮く感じがし、森の中に転移した。
「特に危険はないようだな」
マックスはフィオナを抱きしめていた手を離した。
「あ、ありがと」
ドキドキする胸を押さえ、辺りをキョロキョロと見回した。木が生茂る森。木の間から火の光が注ぎ、少し木がない空間に転移したようだ。とても空気が澄んでいて気持ちがいい。
「フィオナ、ここをまっすぐ行くと光の神殿へ続く洞窟がある。妖精は嘘が嫌いだ。妖精に信頼されたいのなら絶対に嘘をつくな」
「分かったわ」
「あーそれで、嘘が嫌いな妖精は偽った姿をした人間も嫌う。
あー、その⋯⋯俺の髪色は⋯⋯偽物なんだ」
マックスが魔法を解き、髪の色が赤から黒に変わった。
「黒髪だったのね。じゃぁ行きましょうか」
元日本人だったフィオナは特に珍しくもないので軽く流してしまった。
「えっ、それだけか?」
意を決して黒髪を見せたマックスはかなりビックリした。幼い頃はこの髪のせいで外に出ることも許されなかった。黒髪を見た者には魔族だ忌み子だと罵倒され、友達1人作れなかった。それなのにフィオナは全く気にした様子がない。
この時、マックスはほのかに温かい光が胸の奥に生まれたのを感じた。
「ん?艶々して綺麗だね」
(黒髪を自慢したかったのかな?)
「さぁ行きましょう。」
フィオナはマックスの手を引いて洞窟へ向かった。




