10 もう一人の王子 side コンラッド
自室でコンラッドは黒い何かと話していた。
「何でこんなことになったんだ?何でフィオナが死にかけた?」
『オレのせいではない。』
「俺は瞳の色を変えるだけでいいといったはずだ。」
『お前はアレを気に入ったのだろう?闇属性の魔力は人の心を操るのに最適なんだ。今回は上手く行かなかったがな。』
「フィオナは自分で手に入れる。心も体もな。だから俺の邪魔は二度とするな。」
黒い何かをギロリと睨みつけた。
『まぁ何かあったら手を貸すよ。半身殿。』
黒い何かはケラケラと笑ってすっと消えた。
コンラッドははぁ、とため息をつき謝罪の為にフィオナの部屋へと向かった。
フィオナの謝罪が済むとジェフリーの執務室へと向かった。そこには激昂するアレキサンドロスもいた。
「父上、お待たせ致しました。
マキナム侯爵殿、此度の件、本当に申し訳ありません。私の確認不足により大切なフィオナを亡くすところでした。」
「許さん。」
怒りで握り締めた拳から血が滴り落ち、アレキサンドロスの足元に血溜まりができていた。
「コンラッド、あの指輪はどこで手に入れた?」
(まずい。本当のことは言えないな。何かいい手はないか。)
「あ、兄上の部屋で見つけました。試しに着けてみたら、問題なかったので…。」
頭を下げ、再度謝罪した。
「兄上?コンラッド殿下に兄上が…?」
「コンラッド、この場で兄のことを言うのはいただけないな。」
はぁ、とジェフリーは溜息をついた。
「あ、申し訳ありません。」
「ジェフ?どういうことなんだ?」
「あーこれは国秘である。私とメリッサ、コンラッド、騎士団長、宮廷魔導師団長、侍女長、執事長しか知らない話だ。」
「国秘だと?」
「コンラッドの兄、エドワードは私の子ではあるがメリッサの子ではないのだ。」
「は?妾や愛人がいたという話はしらないが?」
「正妃の子だ。
私は知っての通り、前国王と前正妃の侍女との間に生まれた。その為、腹違いの兄弟の中で王位継承権は一番下であった。そして私は元々王になる気はなかったのだ。だから自分で好いた相手を見つけ結婚し、子供をもった。だがその後、腹違いの兄弟たちが不慮の死を遂げ、私が王位継承権の一位となってしまった。
前国王は妻のラナを私の正妃とは認めなかった。止む無くラナの妹であるメリッサを正妃とすることとなり、ラナとエドワードは王宮内に軟禁されることになった。
ラナは宮廷内の何者かに毒殺され、私はエドワードを逃した。」
「何故前国王は正妃と認めなかったのだ?正式な調印をしていれば認めざるを得ないのではないか?」
「正式な調印はしていたが、ラナは髪の色が黒かったのだ。もちろんエドワードもな。だから教会も前国王に従い、結婚事態がなかったことにされた。もちろんエドワードもいなかったことにされた。」
この世界では黒髪は魔族の象徴であり、黒髪の人間は魔族と思われ忌み嫌われている。王族で黒髪を持った者が生まれた場合、ただちに殺される。
「そういうことか。
エドワード殿下は今どうしている?」
「元気に暮らしていると聞いている。」
「エドワード殿下が今回の件に関わっている可能性はないのか?」
「それはない。
ラナは聖女だったのだ。その子であるエドワードにも聖なる力が受け継がれているそうだ。
聖なる力を持つ者は罪を犯すと聖なる力によって殺される。
フィオナ嬢に手を出すことは出来んのだよ。」
「そうか。疑ってすまなかった。」
アレキサンドロスはやっと握り締めた拳の力を緩めた。
(これで俺への疑いは晴れたな。)
一人ほくそ笑むコンラッドに二人は気付かなかった。




