第2話 転生
『目覚めよ、目覚めるのです。』
ぼんやりとしている中、俺の意識は目覚めた。だが、まだ眠いのは自明の理。やはり睡眠は、三度寝ぐらいはしないと満足できない。
よし、もっかい寝るか。
まぶたを開けずにそう決心した俺は、心地よい眠気に体を預ける。
『目覚めよ、目覚めなさい。ねぇ、起きてるよね?二度寝しないで起きて!』
うるさい。何だこの高い音は、俺はこんな眠りにくい睡眠用BGMなど頼んでないぞ。
『誰が睡眠用BGMだ!いいから起きろ!!』
!
すぐ耳元で音がする。あまりの煩さに俺は跳ね起きた。
『ぐぇ!』
頭に何かが当たった気がするが……それよりも、何だこれは。
まぶたを開き、目にした光景は一面に広がる白。地面はあるがあまりにも白すぎて曖昧だ。なんて住みづらなさそうな場所なんだろう。
『住みづらそうで悪かったね!あ、ごほん』
『目覚めましたか。猫目瑠衣さん』
目の前には金髪の女の人がいる。恐らく外国の人なのだろう。そう思った俺はコミュニケーションを試みた
「あ、へろーあいねいむいず、るい ねこめ、あーゆーすぴーく……ジャパン?」
あまりの英語力のなさによって謎の言語と化した何かが辺りに虚しく響き渡る。
『まだ寝ぼけてるようですね。スゥ……起きろ!!!』
ビクゥッ!!
「ごめんなさい先生!!て、夢じゃない?」
『そう、ここは現実です。いい加減目覚めましたか?』
「え、うん……てかここ何処。もしかして俺誘拐された?」
『違います。説明すると、今の貴方は死んで魂となりました。それを神たる私が拾ってきた、という状況です』
目の前の変質者は真面目な顔をして意味不明なことを宣うので、俺は熱の時によく見る謎の夢を思い出す。
「は?それつまり誘拐じゃねぇか。てか夢でしょこれ、俺別に死んでないからさ、寝ていい?」
『何でそんな寝たがるの!?はぁ……そうですね。お気づきになられていないと思いますが、あなたは声を出していないのに、心の声が私に通じてますよね?つまり貴方は本当に死にんだのです!いい加減分かって頂けましたか?』
「なる程、それで証拠は?」
『え?』
「だから証拠、そんな口だけで言われても、納得出来る訳ないでしょ?」
これは明晰夢なのだろうか。その割には意識がハッキリしているな、などと思いながら俺は自称神の荒唐無稽な話に刑事ドラマでよく見た証拠出せ戦法を繰り出す。
『確かに…そうですね。分かりました』
フゥン
半透明のモニターが眼前に出てくる。
するとそこには、昨日飲んだペットボトルに足をすくわれて転び、頭から血を垂れ流して意識を失っている俺がいた。
そんな俺に対し飼い猫ルイは、頭におい起きろと言わんばかりの猫パンチを繰り出している。何やってんだよルイ…俺に何の恨みが── 。
じゃねぇ!マジかこれ!え?夢じゃないの?嘘でしょ?
『本当です。そんな貴方に良いお知らせがあります!聞きたいですか?』
ふぅ……落ち着け俺。てか声出さなくても通じるみたいだし、もうこれで話すか。それで、良いお知らせってのは何なんだ?
俺は落ち着く為に、深呼吸をしてから女神(仮)に聞いてみる。
『ふっふふ…何と転生特典をあげちゃいましょう!今ならどんな世界だろうと転生できますよ!』
ナ、ナンダッテー!?って言っても、大体のラノベを網羅してる俺にはあまり驚きはない。
──むしろ、驚きよりもこの展開に対する興奮の方が遥かに上だといえるだろう。こんなコテコテな展開を目の当たりにして興奮しないラノベ好きはあまりいないはずだ。
『やけに冷静ですね?大体の人は面白いぐらい困惑するのに……まぁ、そうゆう事なのでどんな世界が良いですか?』
女神(仮)のこの質問に、俺は少し考え込む。そして案外直ぐ、その答えは出た
……自称女神様、俺は異世界系のラノベが好きだ。
『知ってます』
日夜妄想を膨らませたり、憧れを抱いてきた。
『妄想の時気持ち悪い顔してましたね』
だから俺は、剣と魔法がある世界に行ってみたい!
『分かりました。じゃ、もう休みたいんでこれを使って自分の能力値を設定してください。後自称じゃないです』
投げやりに自称女神様が手をスナップさせると、目の前に半透明の板が浮かんでくる。
おぉ……これ見覚えがあるぞ。ステータスってやつだろ?
『はい、やっぱり知ってましたか。一応説明しておくとステータスというものは、自分の身体能力やスキルと呼ばれる特殊効果を持つ力を分かりやすく可視化させた創造神様の創ったシステムになります。
見たい時にいつでも見れるのでどんどん活用していくといいです。ということで終わったら呼んでね〜』
言いたいことを言い終わったのか自称女神は早々に姿を消した。しばらくそこを見つめてから、俺はステータスに視線を移す。
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名前:猫目瑠衣 年齢:13 レベル:1 種属:-
ステータス
力:ゴミ
魔力:ゴミ
防御:ティッシュ
魔防御:ティッシュ
敏捷:ナメクジ
器用:めっちゃ不器用
適性種属
人間:普通
獣人:それなりに良い
エルフ:諦めろ
魔族:不向き
竜族:普通
適性魔物(多すぎるから良いものだけを表示)
虎:まぁまぁ良い
狼:それなりに良い
猫:めっちゃ良い (前世猫ですか?)
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うわ。俺のステータス、低すぎ……?って、誰が前世猫だ!まぁ良くわからんがこれは、適正から考えるに猫を選んだ方がいいのか?
憶測で考えると一番強そうな竜族の方がいいと思うんだが、適性考えると一番相性が良いのは猫なんだよな。でも流石に猫はないだろ猫は。やっぱここは竜族か?
ええい、後悔はしない。我が人生最大の選択── 。
『あの、迷ってるとこすいません。少しアドバイスを。猫目瑠衣さんがこの種属の中で一番強くなれるのは猫、です。他も確かに強くはありますけど、最終的には猫が一番いいと思いますよ。ではごゆっくり』
自称女神の声が消える。そして俺は思う。
こんなん猫しか選択肢ないじゃん!と。
かくして神の遊び心か、実質猫しか選択肢のない種属欄をタップし、猫を確定させる。
フォン
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種属が猫になった!
ーーーーーーーーー
やったー!猫になったぞー⤴︎
そう半ばやけになって叫ぶと、画面に新たな項目が生まれる。
↓
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種属スキル(横にあるのは必要ポイント)
猫語0〈猫系統の言葉がわかる〉
爪研ぎ0〈伸びすぎた爪を削る他、爪の威力を上昇〉
威嚇0〈威圧を出す〉
グルーミング0〈毛を完璧に整える〉
惚れ惚れする香箱座り0〈パーフェクトな香箱座りが出来る〉
本能0〈狩猟本能 危険察知 敵の力量が分かる 狭い箱に入りたくなる本能等〉
癒しの波動0〈人類種にのみ効果あり 周囲にいるものに安らぎを与え、短気な人も少し落ち着く〉
選択スキル
魔力操作100〈魔力の使い方が分かる。スキルレベルによって扱いやすさが上昇〉
魔法操作100〈魔法の扱い方が分かる。スキルレベルによって駆使のしやすさ、自由度が上がる〉
身体強化100〈自身の肉体を強化する〉
治癒術100〈癒す力を扱える。回復効力は魔力により変動〉
物理耐性100〈物理的ダメージの軽減〉
魔法耐性100〈魔法的ダメージの軽減〉
全状態異常耐性200〈あらゆる状態異常に対する耐性〉
体術1000〈体捌きなどが効率化される〉
武器の心得1000〈あらゆる武器に対する熟練度上昇〉
自己再生1000〈状態異常や傷などを自動回復させる〉
高速思考1000〈思考する速度が速くなる〉
暗殺術1500〈隠密 急所攻撃 気配隠蔽のスキルが合わさった複合スキル〉
ベクトル変化10000〈エネルギーの方向を操れる〉
魂耐性10000〈魂に影響を及ぼす危険なモノに対する耐性を持つ〉
鑑定10000〈対象の内容やステータスといったものを可視化する〉
生体錬成500000〈錬金術、禁忌を獲得〉
残りポイント120000+350000
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何……だと。これヌルゲーじゃね?
そう思った俺は、生体錬成以外の全てのスキルを取得する。そうした事によってまた画面に変化が起きた。
フィン
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慈愛と慈悲に満ち溢れた偉大なる女神シャルキャットを呼びますか?
いいえ はい
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うわ、何この恥ずかし痛い自己紹介と思いながら、俺は少し嫌だがはいに指を運ぶ。
ポチ
そうして押すと、目の前にナルシスト女神が現れた。
『終わったようですね。では、行きますか?』
あー……行く前に一つだけ聞きたいことがある。
『何でしょう』
うちで飼ってたルイ、アイツはどうなる?
『大好きな飼い主の元へ行きます。幸せな余生を過ごすでしょう』
そうか……なら、良かった。じゃあ、早速その異世界とやらに行かせてくれ。
『はい、では送ります』
シュゥン
眩い光と共に、視界がだんだんと薄れていく。
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