第1話 プロローグ
「ぐるぅぁ!」
「っ……」
目の前には、緑の小さな体躯を持った子供のような、しかし確実に人間ではないと断言できる子鬼がいる。現在俺は……そいつと暗い洞窟の中で対峙していた。
「ルイ、何かあいつ凄い敵対的だぞ!」
「大丈夫。相手は弱いニャ」
何を根拠に、野生の勘か?しかし、このまま睨み合いしていても埒が──
「がァァァァァ!!」
「!」
棍棒を振りかざしながらこっちに走ってくる奴を見て俺は息を飲む。
「くそ、何でこんな事に──」
こんな状況に俺が陥っているのには、ある理由があった。それは……… 。
ーーーーーー
「あぁ、やべぇ!今日テストあるの忘れてた!」
時間は朝7時頃。俺は焦って勉強道具を取り出し、学校に間に合う時間ギリギリまで家で勉強する事に決める。
馬鹿な事に、今日は期末テストがあるのだがそのテスト実施日を忘れて挙げ句の果てには全く勉強をしてこなかった。つまりは自業自得だ。
カチ カチ
「…………」
時計の針が、俺のシンプル・イズ・ベストな部屋に響き渡る。それは集中力を促進させ、しばらくの間勉強に集中することができていた。
──だが、その時間は唐突に終わりを遂げる。
シュバ!
「ニャア~」
そう。突如飼ってる猫が俺の机に飛び乗り、勉強道具をそんなもの知るかと言わんばかりに香箱座りで押しつぶしてきたのだ。
「!?」
こ、こいつぅ!それだと勉強が!!あ、ちょっそれ暗記用の紙ぃぃぃ!!
焦りに焦った俺は何とか荒ぶる猫を沈め退かすと、残念ながら紙はグシャグシャになっていた。一応課題の紙でもあるからその被害は侮れない。
「お前ぇ……許さんからな」
「なぁん」
「くぅ、やっぱ許す」
不機嫌そうな顔でこっちを見る猫、名前はルイだ。俺の名前が猫目瑠衣だから、その下の名前から取っている。
「そんなに構って欲しいなら、少し遊ぶか?」
ガタッ
テストより猫を優先した俺は猫じゃらしを取ろうと思い、席から立ち上がると── 。
ずるっ……
「ウォッハァ!!?」
何故か足元に転がっていた空のペットボトルに足をすくわれ、盛大に転んでしまう。
ガン!(椅子の足に頭をぶつける音)
「ッ、誰だよ。こんな所にペットボトル放置したやつ……」
と、悪態をつきながらも立ち上がろうとするが、何故か体が動かない。衝撃で脳でもやられたのだろうか。
そう思っていると、強い眠気に襲われていく。痛みはなく、不思議な、今まで味わったことのない感覚だ。
あ、これ寝たら遅刻しちゃう…… 。
徐々に思考がぼんやりしてくる。そんな俺の横で、猫がニャンニャンと鳴いている。
「可愛い」
それが、死に際に彼が放った最後の呟きなのであった。
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