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短編置き場

我輩は猫である。我輩なんて今まで使ったことないけど。

作者: 海ほたる
掲載日:2020/01/09

最近になって、不憫可愛いに目覚めました。

息抜き作品でございます。

 我輩は猫である。名前はシュワルツ。我輩の体毛が黒いからという安直な理由で名付けられた。


「もう、シュワルツっ、授業に遅れちゃうじゃないっ、早く降りてきてよ!」


 そこでキャンキャンと吠えているのは、我輩の主である。不本意ながらも召喚の儀で呼び出されたのである。我輩の名付けから分かるように、実に物わかりが悪い。


『うるさいぞ、我輩は昼の微睡みを楽しんでいるのだ』


 実に不粋である。人の都合を我輩に強要するとは何様であるのか。午後の授業は使い魔との共同などと、人が勝手に決めた都合である。我輩が従う道理はない。


「我輩って何よ、普段はそんな物言いじゃないじゃない」


 大した意味はない。そんな気分なだけである。呆れたと言わんばかりの態度であるが、貴様にその様な態度を取っているだけの余裕があるのか?


「あ、鐘が鳴ってる!」


 予鈴というものらしい。予定の時間よりも前に鳴らし、さっさと集まれと急かす鐘の音である。実に不粋であるが、鐘の音自体は非常に耳心地が良い。


「もうっ、シュワルツ早く!」


 あっ、やばい。この場所もそろそろ陽当たりが悪くなってきたのである。場所の変え時であるな。


「伸びなんてしてる場合じゃないわよ!」


 この娘は何を勘違いしているのか。我輩は授業などというものに参加するつもりはない。一度参加したこともあるが、非常に退屈なものだった。


「走れば間に合うかしら……って、ちょっとどこに行くのよ!」


 日当たりの良い場所に決まっているのである。本当に頭の回転の悪い娘である。日光の心地よさを理解できないとは、人とは何と感性の乏しい生き物なのであろうか。


『フハハ、さらばである小娘。今晩はカリカリを食したい気分である』


 今日の昼は柔い食感の物であった。味は満足のいくものであったが、何やら物足りない気分を感じたのも確かである。こう、噛み砕く感覚で補完したいものである。


「勝手なこと言ってるんじゃないわよ!」


 勝手なことを先に言ってきたのはそちらである。あのような陽も当たらぬ部屋に隠って、ただ聞き心地の悪い声を聞いていても不快なだけである。


『こらぁ~、シュワルツ! いつもいつもアメリアちゃんを困らせて!』


 うるさいのがやって来たのである……。見つかる前に移動しようと思っていたのであるが、遅かったのである。


『リリィベル、そなたの豊かなネーミングセンスの主に、我が貧相なネーミングセンスの主を連れて行くように言っておくのである』

『なに、その変なしゃべり方』


 ……うるさいのである。興が削がれたのである。もう行くのである。


『あっ、ちょっと、もうっ!』


 基本的には良い奴なのであるが、お喋り好きでうるさい奴なのである。昔の話である。奴がヒラヒラと目の前を飛んでいたのである。楽しそうに何かを話していたのであるが、ついはたき落としてしまったのである。しこたま怒られたのである……。


 奴は自分の主が大好きな奴である。いつも主の周りを楽しそうに飛び回っているのである。つい前足が浮くのである。その主と我が主は仲良しである。……なぜか我が主のことも大好きなのである。


 謎である。一番の謎は我輩が主に迷惑をかけていると非難してくることである。謎である。我輩の行動を制限してくる主の方が迷惑である。


 数ある昼寝ポイントの一つに到着したのである。気の向くままに移動していたら、屋外に出ていたのである。何の問題も無いのである。


 何かが近づいて来たのである。敵意や害意は感じられないのである。


『今日はここで昼寝か』


 知っている奴なのである。実に厳つい顔と体格な奴であるが、実に良い奴である。リリィベルのように口喧しくないところが実に良いのである。


『あまりリリィベルの機嫌を損ねるな……』


 こいつは良い奴だが、不器用な奴である。真面目にリリィベルの話しに付き合っていたのであろう。


 我輩は全身が弛緩しきっているのである。こいつは何の反応を示さなくても察してくれる凄い奴なのである。我が主も見習ってほしいものである。


 人の集団が近くに移動してくる気配を感じるのである。まぶたはまだ重い。


『今日の授業だがな』

『あっ、シュワルツ見つけた!』


 うるさい奴に見つかったのである……。周りの気配に紛れて気づかなかったのである……。我が主が鋭い眼光を飛ばしてくるのも感じるのである。ぜんぜん怖くないのである。


『結局アメリアちゃんは一人で授業に出席したのよ!? 他のみんなはペアで出席してるのに!』


 恥の追い打ちである。共感覚で主が羞恥に震えるのがわかる。美味である。使い魔は基本的に主の感情を糧とする。我が主の羞恥の味は極上である。


『いつまで寝てるのよ! さっさと起きなさい! アメリアちゃんが可哀想でしょ!?』


 実に美味な追撃である。我が主は人目を気にするタイプである。そしてプライドが高い。なのにお人好しである。こいつはわざとやっているのかと、疑問に思うほど主に羞恥を与えてくれるのである。善意の天然とは恐ろしいのである。


『きゃあっ、何するのよ!』


 気分が良いのである。戯れに尻尾を振ってやれば、思う通りの反応が返ってきたのである。


『喉鳴らしてるんじゃないわよ!』

『……』


 痛いのである。ウォルフの奴が我輩の尻尾を押さえつけてきたのである。興が削がれたのである……。


『よくやったわ、ウォルフ!』

『はぁ……』


 我輩の興が削がれたのを感じ取ったのか、ウォルフは直ぐに尻尾を放してくれたのである。良い奴なのである。一連のやり取りで目を開けるくらいは出来るようになったのである。


 主がこちらへと向かって来ているのである。美味な感情を垂れ流す実に良い主なのである。


「やっと捕まえたわよ、シュワルツ!」


 文字通り首根っこを掴む我が主。我輩を捕まえた達成感に羞恥を一瞬だけ忘れたようであるが、すぐに思い出して美味な羞恥心を垂れ流し始めたのである。いつまでも引きずる良い主である。


「あんたのせいで、要らない恥をかいたじゃない……!」


 我輩のせいではないのである。主にリリィベルのせいである。


「あんたが発端でしょ……!?」


 言葉を発していないにもかかわらず、我輩の意を察するとは成長したようである。


「クスクス、またやってるよ」

「ねぇ~?」


 クラスメイトの囁きを拾った主が、顔を真っ赤にして我輩を睨んでくるのである。フハハ、美味である。


「んんっ、フロイライン・ヘンネフェルト」

「は、はいっ」


 神経質そうな女である。甲高い声が不快なのである。我輩を御しきれていない、我が主をよく叱責しているのである。美味な感情を生み出してくれる存在であるが、その不快な金切り声で台無しなのである……。


「さあ、使い魔を使って中から鍵を取り出してみせなさい」


 ふむ、ギミックを解除して扉を開ける類いの箱なのである。なぜ外でやるのか謎なのである。


「アメリア、君たちなら出来るよ」

「オスカー君……」


 リリィベルの主が出てきたのである……。良くない流れなのである……。


「ひゅ~ひゅ~、見せつけてくれるねぇ!」

「他所でやれ、オスカー!」


 この類いの羞恥は好みではないのである……。やる気が削がれたのである……。


『早くやりなさいよ、シュワルツ!』


 うるさいのである。


「……」


 はっ、その小袋は! この眼鏡の女はよくわかっているのである。我輩にやる気を出させる術を心得た、優れた人間なのである。声の周波数が適正なら、なおよかったのである。


 我輩は猫である。隙間を通るなどと容易いことなのである。……ふむ、なかなか良い暗がりなのである。


『いや、早く出てきなさいよ』


 名前はシュワルツ。『影猫』と呼ばれる種である。

この前から銀英伝を見ているのである。

地球教徒どもは許せないのである。

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