宇宙での戦い
背後を取られ、彼は驚いた。徹底的に痛めつけたはずのロボットに組み付かれたのだ。もう動けないと思っていたのに。先程までの余裕の笑みはどこへやら、彼は自身の戦闘プログラムの迂闊さを呪う。正面にいるもう一人のロボットの方に視線を戻す。背後のロボットと同様、青い装甲をまとったそのロボットは剣を構えたまま、じっと彼の方を見つめていた。
背後から熱量を感じる。見ると、組み付いているロボットの装甲が光輝いていた。こいつ、自爆する気か。彼は慌てて、拘束を解こうとする。何度も何度も、背後のロボットの鳩尾あたりに肘打ちを入れる。すると少しだけ、彼の体に回されたロボットの腕の力が緩んだ。よし、あともう少しだ。彼の顔に安堵の表情が戻る。
しかし、彼は間に合わなかった。光輝くロボットの装甲は破裂し、そこから生じた激しい光と熱量とが、彼とそのロボットを包み込んだ。
彼が意識を失っていたのは、ほんの少しの間であったようだ。自身の損傷をすぐに確認。大丈夫だ。少なくないダメージを受けてしまったが、致命傷になり得るほどではない。次に確認すべきは敵の存在だ。奴はどこにいるのだろう? 無事だったセンサーを使い、自爆したロボットを探す。ひょっとしたら、既に粉々になってしまったのだろうか?
そうではなかった。どうやら纏っていた外部装甲だけを爆発させたらしい。例のロボットは宙を漂い、その背後にある青い惑星へと引力に引かれ落ちていこうとしていた。ロボットの目が彼と合う。するとなんと、そのロボットは口元に笑みを浮かべた。爆発のダメージで全身ボロボロで、装甲の色も鮮やかな青から鈍い灰色へと変化し、いつ機能停止してもおかしくない状況で、力なく、しかし満足そうに笑ったのだ。
彼の心に怒りが生じ、体に力が戻った。奴をこのまま行かせてはならない。必ずここで、今、仕留めなければ! 感情のまま、彼はそのロボットにとどめを刺そうと加速しようとした。
そんな彼の胸部を背後から剣が貫いた。迂闊にも彼は、敵であるロボットがもう一人いたことを忘れてしまっていたのだ。彼が自分を背後から刺したロボットの方に顔を向けると、先程と同様、そのロボットの装甲も光り輝いていた。
こんなところで終わるなんて。彼が無念という感情を認識すると同時に、再び強い光と熱量に包まれた。