第97話 ばっちいから狙わない
まもなく、午前零時になります。
きょうは、間に合いました(笑)。
なんか、まったりシンプルな格闘シーンで、ちょっと物足りないかもしれないです。
「いてえっ!いてて…放しやがれっ!」
目の前で、ガラの悪そうな大男が、悲鳴を上げている。
オレは、こいつの足を踏みつけているだけだ。
でも、これで、相手は動けなくなると、習ったことがあった。
思い出したくもない。
師匠などとはとうてい呼べない。そんな奴だった。
オレは、そいつの訓練を受けるとき、アイツから、得体のしれない『薬』を飲まされた。
それで、しばらく、信じられないくらい動き回ることができた。まるで、自分ではなくなったような、違う人間になったような気がした。
今思うと、あれは、『ポーション』の一種だったのかもしれない。もちろん、特殊なものだろうが…
ただ、ふだんは、まともに動かすのも難しい体を、めちゃくちゃ動かしたのだ。そのあとの激痛は、心身ともに、はんぱではなかった。
思い出したくもない。
オレは、アイツのことを、忘れたことはない。
それは、もちろん、憎しみなどではない。
これほど、美少女に囲まれても、それは、変わらない。
それでも、思い出したくないことは、多いのだ。
たとえ、それらの苦しみのおかげで、今のオレがあるとしても…
オレは、足を踏みつけながら、ゆっくり、周囲を見回した。
オレのまわりには、同じような悪党づらの男たちが、三人ほど、這いつくばっていた。
*****************
また、いつものように、すこし時間をさかのぼる。
あの人柄のよい金髪イケメン騎士は、『騎士団長』とかいう役職に就いているそうだ。
くわしいことは、よくわからないが、いちおう、戦闘系のトップではないのだろうか。
「いざ、戦争にでもなれば、『将軍』と呼ばれている歴戦の英雄が何人もいてね」
ぼくなんかは、全体のまとめ役とか、都合のいいことを言われて、こき使われているだけなんだよ。
そんなことを言いながら、にこにこしている。
筋金入りのイケメンだけど、親しみやすい人だった。
シャルは、昨日のように、ウルフに乗って、オレたちの教室まで来ていた。
あとは、聖女セシリア・イレーヌのふたりと、合流するだけだ。
オレたちは、『騎士団長』とともに、聖女ふたりのもとに向った。
待ち合わせ場所の『正門前』に、着いた時だった。
セシリアと、イレーヌさんが、だらしない恰好の兵士に囲まれているのが見えた。図体の大きいのが、四人ほどいた。
誰も、倒れていないところみると、幸い、手を出されたりはしていないのだろう。
二人に触れようとすれば、『電撃』でマヒするだろうから。いや、『電気』という概念はないらしいので、『雷撃』だろうか…
「セシリアさん、イレーヌさん…」
オレは、即座に、近くに寄って、ふたりの名を呼んだ。
「「ジュンさまっ!」」
ふたりの表情が、ぱあっと、明るくなった。
少なからず、困っていたのだ。
兵士たちも、すぐに、振り向いた。
「なんだぁ…、てめえは…」
四人で、オレを睨みつけている。
他人をみれば威嚇する、悪癖でもあるのだろうか。
オレは、とうぜん、無視した。
「シャルも、クレアさんも、あっちで待ってる…」
「さあ、行こう…」
兵士たちの間を、かるく割って、ふたりに手を伸ばした。
もちろん、強く押したわけではない。
それでも、二人の大男は、ぶざまによろめいた。
オレは、『騎士団長もいる』とは、言わなかった。
そう言えば、こいつらも、すぐに引き下がったろう。
でも、オレは、そんなに、優しくはないのだ。
そもそも、オレは、独占欲の人一倍強い少年なのだ。
オレの関係者(美少女と美女)に、手を出すなど、ぜったいに許せるものではない。
「て、てめぇ…」
「ふざけやがってっ!」
女の前だからって、
「チョーシこいてんじゃねぇぞ!」
怒鳴りながら、殴りかかってきた。
ふん…
オレは、体を半身に開いて、ひらりとかわすと、男の足を払った。
『目』を使うほどでもない。
拳が空を切って、つんのめった上に、足を払われたのだ。
大男は、思い切り、顔から地面に突っ込んでいった。
「てめえっ!なにしやがった!」
さっき、よろめいたもう一人も、無造作に、殴りかかってきた。
学習能力がないのだろう。
オレは、さっと、かがみこんで、大男の懐に潜り込んだ。
股間を狙うのは、ばっちい気がした。
なので、バランスを崩して倒れこんできた鳩尾に、肘を入れた。
大男は、がっくり、膝から崩れおちた。
「吐いたら、許さんぞ…」
ねんのため、注意しておいた。
あと、ふたり…
オレは、大男ふたりに、顎をぐっと上げて、いちおう、見下ろしてるぞ視線にしてから、相手が仕掛けてくるのを、待っていた。




