第09話 誤解は解けたらしいけど
段落の一字下げとか、ふつうにしてみました。このほうが読みやすいのかもしれません。いろいろためすのも楽しいです。
対抗魔法で、スターたちの魔法が消滅していった。
「魔法が、消えてしまったわ!」
「なにこれっ!」
「どうなってるの!」
シスターたちが、呆然と戦意喪失しているのを見て、オレはふうっと張り詰めていた息を吐いた。
どうやら、高額ステンドグラスを守った上に、ぴちぴち粗暴シスターも傷つけずにすんだらしい。
はじめの実戦で緊張したが、なんとかなった。
肉片とか、消し炭とか、全消滅とか。
そんなことにはならずに済んでほっとした。
天界で『特訓』しておいてよかったと、つくづく思った。
「…すまなかったねぇ。まさか、使徒さまとは思ってもみなかった」
さきほど、『やっちまいな』と叫んでいたばあちゃんシスターが頭をさげた。
いっせい攻撃を相殺されて唖然としていたが、オレの頭上のライムを見て『高位精霊』と気づいたらしい。
『高位精霊』を従えているなら『使徒』に違いない。と思い直してくれたのだろう。
「すまないねぇ。あのとんでもない魔力に当てられちまったとしかいいようがない。それに、そのなりだからねぇ」
ばあちゃんシスターは、オレのお気に入りのコスチュームをじろりと見た。
「だから、全身黒ずくめは怪しまれると、言ったのニャ…」
オレの、自慢のコスチュームに問題があるらしい…
しかし…だ。
「魔法デビューは、上下黒ずくめに赤のコートって決まってるんだよ」
まあ、赤のコートはがまんしたけど、黒の上下は譲っちゃいけない。
例の無限収納クローゼットにも、なぜかちゃんと用意してあったんだし。
「ふふっ、あたしゃ、つい。どこぞの魔王かと、おもっちまったよ」
見かけで判断しちゃいけないねぇ。と、ばあちゃんは笑って言った。
オレのコスチュームのことは、おいておくとして、もっと重要な問題点が浮かび上がった。
「魔力の隠蔽が足りなかったニャー。もういっぺん重ねがけをするニャ」
「そうだね。しかたがないね」
ぶつぶつ言いながら、何度目かの隠蔽をかけることにした。
魔王と勘違いされてはたまらない。
ところで…
「あの、オレ、『使徒』とかじゃないはずですから」
いちおう訂正しておくことにした。
なんか、へんな期待とかされても、困るし。
「おや、違うのかい?使命は授かってないのかい? なにより、自分が『使徒』かどうかは、ステータスを見れば一目瞭然じゃないのかい?」
ばあちゃんは、オレの訂正を耳にして、矢継ぎ早にたずねた。
…くっ!…そうきたか。
ステータス画面の文字化けのことは、ライムの名誉のためにも、こちらの世界の混乱を防ぐためにも、秘密にしておいたほうがいいんじゃないかな。
ライムも、同じことを考えたのだろう。
言い訳を始めた。
「ジ、ジュンしゃまは、たしかに、明確な使命を帯びているわけではニャイのですが、大神さまに『送還』されたのニャから、『使徒』と呼んでも間違いとも言えニャイのですニャ…」
なんともアバウトな『使徒』だった。
「…ふうん。なるほどねぇ…」
そういってしばらく考え込んでいたが、ばあさんシスターは、急に目をギラリと光らせて言い出した。
「ここから先はね。まあ、アタシの独り言なんだがね。じつは、この国ではここ一週間ほどで二度も『勇者召還』が行われてねぇ」
聞こえないふりしてもいいだろうか。