第82話 お茶なんか飲んでいかないぞ
ちょっと、文を短くしてみました。
すこしぶっきらぼうに感じるかもしれません。
でも、いろいろやってみるのは、楽しいです。
そこは、真っ白な部屋だった。
中央にも、真っ白な『ガーデンテーブルセット』が置かれている。
テーブルの天板が、板ではなく、網目状のヤツだ。
椅子の座面も、同様だ。
網目のすきまから、雨水を落として、天板や座面をびしょ濡れにしないための、工夫なのだろうか。
そもそも、元ダンジョンなんだから、雨なんか入ってこないだろうに…
「いえいえ…」
そういって、ドラゴンは、天井を指さした。
巨大な穴が、上層の床をいくつも貫いて、澄み切った青空をのぞかせている。
「なぜか、ダンジョンの『自己修復』が利かないのです」
ジュンさまの、『バビルの塔』から、凶悪なウイルスにでも、感染したのでしょうか。
なにか、失礼なことを言っている。
「それにしても…」
オレは、紅茶を、すすりながら言った。
やはり、真っ白な『ティーセット』だった。
「なんか、見覚えがあるな…」
「さすがは、ジュンさま!」
よく、おわかりになりました!
ドラゴンが、『我が意を得たり』と、しきりにうなずいている。
「あちこちから、転移してきて、集まる場所と云えば、コレでしょう!」
真っ白な部屋
真っ白な『ガーデンテーブルセット』
真っ白な『ティーセット』
「わたくし、ココで、皆さまを、心から、お迎えしたいと思っております」
嬉しそうに、胸をはった。
たしかに、立地条件の悪さから、結局、オレたち以外には、誰も入ってこなかった。
そして、訪問者が「とうとう来たか!」と思えば、「逃げるか土下座するか」のどちらか、であった。
さらに、ダンジョンマスターは、龍の装飾として、壁を飾る寸前だったのだ。
お客さんが、定期的に訪れるだけで、うれしくなるのは、よくわかる。
だが、
「みんな、さっさと転移したいから、ココで、お茶なんか飲んで行かないぞ」
「ジュンくん、そ、それは…」
「じゅんしゃま、それを言っては…」
セーラもライムも、オレを、咎めた。
いやいや…、君たち、ちがうのだよ…
こういうことは、さんざん期待したすえに、残念な現実に直面すると、深く傷つくものだ。
だから、オレは、あえて、心を鬼にして、ドラゴンに告げたのだ。
けっして、『バビルの塔』の悪口への、はらいせではない。
彼も、いつかきっと、オレの思いやりに気づいてくれるだろう。
ショックのせいか、彼が、(メンタル的に?)真っ白になってフリーズしてしまったので、オレたちは、帝城に向かうことにした。
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「『帝国魔法学院』ですか…?」
「そうなのよ…、いっしょに通ってあげてくれないかしら…」
シャルのお母さんも、困っているようだ。
オレに、こんなことを頼んでいいのか、迷っているのだろう。
ダンジョンを経由することで、いつでも自由に、帝城と、オレの家は、行き来できる。
これで、シャルのお泊まりも、延長してもらえた。
だが、賢帝さまが、もうひとつ、条件をだした。
それが、「三日に一度は、『帝国魔法学院』に通うこと」だった。
シャルは、不登校?だという。
日本の学校と、この世界の『帝国魔法学院』は、違うだろう。
また、いろんな学校があるのだ。決めつけはいけないだろう。すばらしい学校もあるかもしれない。
それでも、オレは、思うのだ。
そもそも、学校にいく必要があるのだろうか、と。
「勉強」なら、自宅でできる。先生だから、教えることがうまいとは限らないのだ。
「集団行動を学ぶため」などと言う人もいる。しかし、学校という場に、どんな集団ができているのか。テレビのニュースで知るまでもない。
いじめが横行し、教師まで見て見ぬふりをする集団の中で、何を学ぶのかと思うと、ぞっとするだろう。
いろんな学校があるし、決めつけはいけない。
日本の、オレの知る学校と、『帝国魔法学院』は違う。
それは、わかっている。
でも、あの、シャルちゃんが、行きたがらないのだ。
もちろん、シャルとは、まだ、知り合ったばかりだ。
それでも、オレは、シャルを信じた。
だから、『帝国魔法学院』のほうに、問題があるに違いない。
もちろん、その問題は、『学院』には、責任のない類いのことかもしれない。日本の義務教育と同じレベルで判断はできない。
その問題は、もしかすると、オレが、蹴散らしてやれるかもしれない。
しかし、その上で、オレは、思うのだ。
それでも、学校へいく必要があるのか…と。
…………
そんな、身も蓋もない結論を、腹蔵しながら、それでも、オレは、こう、答えた。
「わかりました。シャルといっしょに通ってみます」
シャルのために、できることがあるなら、やらないという選択肢はない。それはそれ、これはこれだ。
「ありがとう!シャルがどんなによろこぶことか…」
シャルのお母さんが、涙ながらに喜んでいる。
「そうそう、そういえば…」
シャル似の、超美人人妻が、付け加えた。
「大半が、貴族なのもあって、きれいな娘が多いのよ」
それに、
「さいきん、異世界風のとっても、すてきな制服になったのよ」
たしか、少し前の勇者さまが、異世界から着てきた制服を参考にしたらしいわ。
スカートが、とっても短くて、かわいいのよ。
…………
な、なんですと…
…………
話を聞いて、愕然としているオレに、お后さまは、いたずらっぽく言った。
だからって、
「あんまり、目移りしてると、シャルが怒るわよ…」




