第76話 さすがに、ふびんでのう
個人的には、某潜水艦のアニメの影響なのか、クマが一番すきです。
「ふむ、おろしポン酢で、ハンバーグもいいものじゃのう」
大神さまにも、和風のハンバーグは好評だった。
せっかく、来てくれたので、いっしょに、ご飯を食べてから、説明をきくことになったのだ。
まだ、天界を出てから、8日間しか、たっていないけれど、ずいぶん懐かしい気がした。
剣神さまよりは、ずっと神さまらしいからだろうか。
「『神がかってる』のですか?」
怪訝そうに尋ねると、
「おぬし、『神剣』に、けっこうな魔力を込めて、こやつらを斬ったじゃろう」
ぬいぐるみに目をやりながら、大神さまが言った。
「あの大波動は、天界でも、大騒ぎになっての…」
それで、剣神さまが、神さまたちから、槍玉に挙がったそうだ。
ふっ……、『自業自得』の面も、少なからずあるだろう。
オレは、『神剣』のお陰で助かったが…
「剣神のやつは、困り果てての…」
「大神たちに、なにやら四角い箱を配って、なだめておったようじゃ」
なんだか、とても、いやな予感がする。
「まあ、剣神のことは、おいておくとしての…」
「『神剣で斬る』ということは、『神霊力で斬る』ということじゃ。それは、込めた力が『魔力』でも、もちろん、同じことになる」
たしかに、じっさいに、刀の『刃』で斬ったわけじゃない。
それはそうだ…と、オレは思った。
つまり、
「そやつらの魂魄は、おぬしの込めた、とてつもなく巨大な『神霊力で斬られた』わけじゃ」
魂魄に、『神霊力が宿って』も、なんの不思議もない。
それが、
「『神がかって』しまった、ということですか」
なるほど、そういうことか…と思った。
もちろん、神や女神、精霊には、ほど遠いらしい。
こうなると、
「『輪廻の円環』から、すこし遠ざかってしまってのう」
生まれ変わるまでに、気の遠くなるような時間がかかってしまう。
「聞けば、生まれてまもなく、ゴーレムに取り込まれたそうじゃ」
この世に生を受けて、たちまち、苦悩の毎日に突き落とされたというのに…
「そこから、救われたと思ったら、たいくつな天界で、転生まで、しずかに暮らさねばならん」
「さすがに、不憫でのう…」
そこで、
「おぬしらは、どうしたい…?」
「わしに、できることなら、なんとかしてやらんでもない」
そう、こいつらに尋ねたそうだ。
すると、
「あの、お兄ちゃんのところに行きたい」
口をそろえて、そう言ったらしい。
地上に戻るには、窮屈な『形代』に入らなければならないと、教えても、
それでも、どうしても、
「あのお兄ちゃんのところが、いい」
そう言って、きかなかったらしい。
でも、
「ジュンくんには、ライムちゃんがいるでしょ」
「それで、セーラちゃんが…」
「みんなで一体ずつ、お世話しようって、言い出したのですニャ」
…………
なるほど、そういうことだったのか…
ふと、オレに向けられた視線に気づいて、そちらを向くと、
ぬいぐるみたちが、デフォルトの『つぶらな瞳』で、おれをじっと見ていた。
くっ…
みんなも、なんだか、真剣な顔で、オレを見ている。
シャルなんかは、いっそう、クマをきつく抱きしめていた。
けっこう、苦しがってるようにも見えるが、あのクマ、大丈夫なんだろうか…
まあ、しかたがあるまい…
朝、オレの部屋に、ぬいぐるみを取りにきた時も、五人ぜんいん、大事そうに、抱えていたし…
いまさら、シャルから、クマをとりあげるわけにもいかないだろう。
オレは、大神さまに、向き直って言った。
「わかりました。オレたちが、あずかります」
「「「「「「やたーっ!」」」」」
部屋のなかの空気が、ぱっと明るくなった気がした。
ぬいぐるみたちは、小躍りしてよろこんでいる。
シャルに抱かれているクマは、なんだか、ぐったりしているような気もするが…
まあ、オレも、かわいいものは、きらいではないのだ。
大神さまが、天界に戻るとき、
「おおっ、そうじゃった。わすれるところじゃった」
とつぜん、そんなことを言い出した。
「その、ぬいぐるみたちじゃがの…」
「おぬしから、魂魄に『神霊力』を刻まれただけあって…」
「ブレスも撃てるから、気をつけたほうが、いいかもしれんのう」
爆弾発言を残して、消えていった。
ブレスも撃てるって、とんでもない『危険物』じゃないのか?
「まさか…」
疑いたくはないが、ちらりとセーラを見た。
セーラの姿は、いつのまにか、消えていた。
逃げたらしい…
あいつ、知ってたなっ!




