第64話 三人でもたいへん…
「空はいい…」
どこからともなく、メカドラゴンの声が聞こえてくる。
「空は、いいぞ…」
よほど、うれしいらしい。
まんまとうまくいったのだから、喜びもひとしおだろう。
かく言うオレも、空の旅を楽しんでいた。
なぜなら、きょうは窓にはり付いている、ミニスカ美少女が三人になったからだ。
賢帝さまもはりついていたが、それは数には入らない。
『三人になった』ことは、『三倍になる』こととは違う。
主観には、単純計算など通用しないのだ。
オレの脳は、『百倍以上』と算出していた。
三人とは、
①「女神セーラ」
②「聖女セシリア」
③「シャルロット姫」
である。
残念ながら、クレア妹さんは、ミルフィーユ警護のために残留組となった。
また、もし参加していれば、まさに別次元のパースペクティブを展開してくれたであろう。元聖女イレーヌさん二十歳も、『ポーション』作りのために残留した。
しかし、オレは『これでよかったのだ』と自分に言い聞かせていた。
『過ぎたるは猶及ばざるが如し』とも言う。
そもそも、『五人』は多過ぎるのだ。
それは、『認識できる数』ではあっても、『堪能できる数』ではないのだ。
ニンゲンの脳には、限界というものがあるからだ。
きわめて暑い地方へ出掛けるということで、三人ともに白いミニワンピースを着て麦わら帽子をかぶっている。
セーラが『夏は、絶対にコレだよ!』と選んだらしい。
もちろん、いまは窓にぶつかって外が見づらいだけなので、麦わら帽子はかたわらに置かれている。
「シャルちゃんシャルちゃん……、この格好で迷子になると、『ネ○バス』が迎えに来てくれるっていう伝承があるんだよ!」
「なんじゃと!ほんとうか!」
『ネ○バス』の意味を全く知らないはずのシャルロット姫が、歓喜していた。けっこう、ノリのいい子らしい。
「セーラちゃん、そんな適当にゃことを言って…」
ライムが小言をいうと……
「……なんじゃ、こどもだましだったのかや?」
リアル子どもが、がっかりしていた。
すぐそばで聞き耳を立てていた聖女セーラも、落胆している様子だ。
もしかして、彼女も期待したのだろうか……
こうした、ちょっとした会話の端々(はしばし)に、彼女たちのワンピの短い裾から、薄いブルーの下着がちらりちらりと顔を覗かせていた。
それは……、
あるときは、『背面ビュー』として、
また、あるときは、『側面ビュー』として、
そして、ときには、『正面ビュー』としても……
立ちひざで窓をのぞきながら、きゃっきゃっと交わされる笑い声とともに、オレの瞳には三人の美少女のかわいらしい下着が、鮮やかに映っては消えていった。
先ほどオレは、『五人は多過ぎる』と言った。
しかし、実際には、三人でも戦いは苛烈をきわめた。
一瞬たりと、ワンカットたりと見落とすまい!
すでにぎりぎりまで精神を集中させていたオレに、彼女たちのパ○ンティは、容赦なく襲いかかったのである。
ちなみに、一例を挙げるならば……
①勢いよく振り返ったセーラの裾がおおきく翻り、ふんわりとした少女っぽいパ○ツの全貌が白日のもとに晒された…
まさに、その瞬間に…
②(都合よく)何かを落としてしまったのか。四つん這いになった聖女セシリアのお尻とややくぼんだ『秘境』が、オレの目の前にゆっくりと突き出される…
……これと、時をおなじうして、
③(何を思ったのか)立ち膝のまま麦わら帽子をかぶろうとしたシャルロットが、両手をあげるとともに裾も持ち上がり、かすかなくぼみを帯びた三角地帯がちらりと姿を現す…
……といった具合である。
まあ、姫さまのソレに関しては、あくまでも『かわいいもの』として、きわめてキレイな心で鑑賞していたが……。
いすれにしても……
ひとりずつ、順番を守ってゆっくりと披露してくれるわけはない。
オレは、その『同時多発的パン○ラ』と、熾烈な戦いを繰り広げていた。
つまり、オレには、高度な『並列処理』が要求されていたのだ。
「……くっ、……なんだろう」
「こ、この……、まるで胃から上がってくるような焦燥感は!」
そのとき、オレには、ふとよみがえってくる記憶があった。
「これでは、ま、まるで……」
「『もぐらたたき』のようですニャ…」
ライムが、悟り澄ましたように、ぴたりと言い当てた。
ちなみに、オレは『もぐらたたき』がきらいだ。
「それにしても……」
「ジュンしゃまは、そんなにゃに、パ○ツが見たいのですかニャ…」
子猫が、あきれたようにため息をついている。
……が、
急に、何かに気づいたように、恥ずかしげにつぶやいた。
「ま、まさか……、ライムのも見たいの…ですか…ニャ…」
………
………
「ライム…」
「お前の何を見ろというんだ……」
オレとっての至福の空の旅は、しばらく続いていた。
オレが、三人の愛らしい姿というか部位というか……を幾度となく瞼に焼き付けていたときだった。
「おおっ!」
連綿と続く砂漠の光景に食傷ぎみだった。幼い姫さまがはずんだ声を上げた。
「街が見えてきたぞ!」
「え…?」
「ホントだ…」
セーラたちも、がぜん、元気が出てきたようだ。
「あっ!それに…」
姫さまが、何か見つけたようだった。
「おっきなイモムシも、たくさんいるのじゃ!」
イモムシ好きなのだろうか。喜んでいる。
それを聞いたセーラは、立てた指を小さく振って『ちがうちがう…』してから、ちょっとお姉ちゃんぽく教えた。
「シャルちゃん、シャルちゃん……、あれはね……」
……………
「サンドワームっていうんだよ」
「まあ、『イモムシ』みたいなモンだけどね……」
どうやら、サンドワームが、大挙して砂漠の街に向かっているようだった。




