表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お嫁さん&魔物さんといっしょに、ムテキな異世界生活  作者: 法蓮奏
ミルフィーユ(シャーベット王国)編
44/631

第44話 一番安全な街

すこし、わざとらしい?説明になってしまいました。



 「な、なんという高さなのだ!」


 ケント兄妹のお父さまが、盛大に驚いていた。


 オレたちは、朝早くから、シフォン伯爵夫妻を連れて『第三城壁』前の原っぱに立っていた。もちろん、城壁の『外』である。


 『第三城壁』は、日本でいうと10階建てくらいの高さになる。

 王都の教会とかも、けっこう大きな建物だった気もするが、城壁としては異例の高さらしい。 

 

 ただ、オレは、魔法を使って、細かい作業ができない。

 だから、城壁の外観はつんつるてんで、超巨大な缶詰のような感じだった。

 いちおう称賛しょうさんしてくれているのだろうけど、じつは、ちょっと恥ずかしかった。





 昨夜は、帰り際に、シフォン伯爵家にも『転移ゲート』を設置させてもらった。


 「クレアのお部屋に、設置してもいいのよ」

 

 クレアさんのお母さまからは、そんな魅力的な提案もあったが、家長であるお父さまが、断固として反対したので断念した。

 さすが『派閥の領袖りょうしゅう』だけあって、迫力があった。

 怒ったお父さまは、ちょっとこわかった。


 家族会議があるとのことなので、ケントさん兄妹を残して、ミルフィーユに戻った。


 そして、今朝再び、ケントさん一家を迎えに行ったのである。


 ただ、今度は、ケンイチさんとアンナさんが教会に行きたいと言うので、王都に置いてきた。

 大司教のばあちゃんに、何か話があるらしかった。




 『第三城壁』には、すでに、両開きの重厚な扉が取り付けられ、『門』の体裁ていさいが整えられていた。

 一日で出来てしまうのが理解できないが、まあ、ファンタジーなのだろう。


 「あとは、ね橋を設置すれば、完成かのう。まあ、城壁の内部や、屋上の工事はこれからじゃが…」


 そんなふうに、ドワーフのレギンさんが、ガイドをしていた。


 「…いかがですか?これで、『魔石』と『上級ポーション』を、これからも着実に提供できることを、納得してもらえましたか?」


 歩きながら、アルベールさんが伯爵に尋ねた。



 もちろん、城壁が頑丈なだけでは、『これで、魔石とポーションも大丈夫』という話にはならない。

 城壁の『内側』がいくら安全であっても、城壁の『外側』に魔物があふれていれば、これまで同様、採掘にも採取にも行けないのだ。


 しかし、こうして城壁の外で、のんびり城壁を見上げている時点で、魔物の脅威きょういから解放されていることは、自ずと理解できるはず。

 比較的安全に採掘も採取もできていた昔でさえ、城壁の外に出ているのに魔物の姿すら見えない…などということはなかったと聞いている。


 

 「も、もちろんだよ。アルベール。わたしは、さいしょから疑ってなどいなかったろう」


 じつは、ふたりは、いわゆる『幼なじみ』らしい。

 おじさん同士なので、もちろん、ドキドキもワクワクもない。


 でも、アルベールさんは、シフォン伯爵に『魔石』などを提供することを決めたときに、『幼なじみ』であることはおくびにも出さなかった。


 「まあ、よく言えば『公私混同しない』と言ったところかのう」


 「いやいや…、ああいうのを『水くさい』って言うんだぜ」


 なにしろ、『第一城壁』や『領主の館』を建設する際には、アルベールさんの実家である『ガトー伯爵家』とともに、シフォン伯爵もすくなからず助力してくれたらしい。

 おそらくは、困ったときには助け合うほどの『友』なのだろう。

 たしかに、『ひとこと言ってくれればよかったのに』…とは思った。



 「実を言うとね。きのう、ケントたちが屋敷に戻ってきたとき、ミルフィーユが無事だったことに、気づいたのだよ」



 シフォン伯爵たちにも、とうぜん、『王国軍撤退』の情報は届いていた。

 ミルフィーユを維持するため…という名目で派遣された軍である。まさしく『寝耳に水』と驚いた。

  

 しかし、軍が撤退し、ミルフィーユが危機的状況に陥ったからには、聖女さまやケンイチ殿と共に、息子たちがミルフィーユ辺境領に向かうのは分かりきっていた。

 息子たちは、先代の勇者であるケンイチの従者として、ともに行動してきたのだ。これほどの大事に、同行しないはずはなかった。


 「教会から『走る鉄の箱』が飛び出してきて、とんでもない速さで街道を走って行った、という噂も聞いていたわ」


 『走る鉄の箱』は、魔道具だろう。

 こんな魔道具を持っているのは、異世界から召喚された勇者くらいしか考えられない。

 おそらくは、その『走る鉄の箱』で、息子たちもミルフィーユへと向かったに違いないと、シフォン夫妻は半ば確信した。 



 ()()息子たちが、三日とたたないうちに、何食わぬ顔をして戻ってきた。


 「それも、見たこともないすてきな服を着てね」


 お母さまが、いたずらっぽく言った。




 日本の某有名私立女子校の白セーラーなのだ。

 異世界の伯爵夫人が『見たこともない』のは、当然だろう。


 スカートのすそがなかなか短いので、目のやり場が固定されてしまって少し困った?が、ほんとうにクレアさんには似合っていた。

 まあ、素体そたいがハイレベル美少女なので、何を着ても似合うとは思うけど…


 お母さまは『すてきな服』と呼んでいたが、お父さまは気に食わなかったらしい。

 今も、『貴族の娘にしては、はしたないんじゃないか…』とお母さまに訴えている。


 正直いって、オレもお父さまに近い感想を持っている。

 あの、ミニスカートから伸びたすらりと美しい脚も、ときおり、ちらりと恥ずかしげに顔を出すあの純白の下着も、ひと目にさらしてよいものではあるまい。

 できることなら、見せるのはオレだけにしてほしい…と願っている。

 恋人でもないのに、こんなことを願うのは不遜ふそんだが、オレは、とっても独占欲が強いのだ。




 お父さまが、話しを続けていた。


 「ただ、息子たちにいくらたずねても、しらばくれるばかりでね。まあ…、これまで、きつく叱りつけてばかりきた、私のせいなのだろう。そこで、あとから心配して我が家に駆けつけてくれた、ケンイチ殿たちに、息子たちが出かけたあとも残ってもらって、ミルフィーユの復活を教えてもらってたのだよ」


 そこまで話すと、シフォン伯爵は、『魔物の森』に目をやった。


 「『ミルフィーユは、魔物の街になった』などと、うそぶいていたやからもいたが、まさかほんとうに、一匹たりと、魔物の姿が見えないとは…な」


 開拓当時のミルフィーユも知っているので、いっそう感慨深いのだろう。


 「一番危険な街が、いまは、一番安全な街に変わってしまったのね。ほんとうに、よかったわ…」


 伯爵夫妻は、心からミルフィーユの復活を喜んでくれているようだった。


 



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ