第28話 その頃、ミルフィーユ領で
なかなか話が進まないので、また、投稿しました。
「なんとも、閑散としたもんじゃのう」
ドワーフらしき壮年の男が、城壁の上からあたりを見回してしみじみ呟いていた。
まだ、空は明るいが、陽が傾いたせいか。やや赤みがかってきていた。
高台にある城壁は、『第一城壁』と呼ばれている。
もともと、ミルフィーユの街は、この城壁の内側だけのこじんまりした街であった。
ただ、鉱山から産出される『魔石』と、隣接する『魔物の森』から採取された『上級ポーション用の薬草』は、この街を切り開いた人々の思惑を遙かに越えて飛躍的に街を発展させていった。
『魔石』と『上級ポーション』の価値は、計り知れない。
それゆえ、権力をもった貴族たちがこの利権に群がったからである。
人口は自ずと増え、第一城壁の外側にも街が作られていった。
とうぜん、新たな「住人」を守るために、第二の堅固な城壁が作られた。
ミルフィーユは、二重の城壁に守られた城郭都市となったのであった。
ちなみに、いま、周囲を取り囲んでいる無数の魔物からこの街を守っているのは、この『第二城壁』であった。
「こういう言い方は、不謹慎かもしれませんが、わたしはむしろ、せいせいした気分ですよ」
第一城壁の外に広がる街を見下ろしながら、別の男がため息をついた。
王国軍の撤退とともに、眼下の街は、無人となっている。
「領主にあるまじき、物言いじゃのう…」
口調こそ咎めるようだが、ドワーフは笑っていた。
まあ、たしかに…
「下の街ができてからというもの、ろくでもない貴族ばかりが幅をきかせておったからのう」
ドアーフの男はレギンといい、「領主」と呼ばれていた人物はアルベールといった。
「それにしても、これから、どうするつもりじゃ?」
「…ええ。あれだけ大勢の人々が出て行ってくれたお陰で、食糧はしばらくもちそうです。昔のように、畑仕事でもしながらのんびり暮らしましょうかね…」
まあ、あの頃みたいに、魔物狩りには行けそうもありませんけど…
この高台からも、第二城門の外にびっしりと密集した魔物のようすは、伺うことができた。
「残念だけど、そう、のんびりはさせてくれないみたいよ」
「ああ、この距離じゃ、もう間に合わねえ…」
『第二城壁』を見すえながら、こちらに歩いてくる二人の姿があった。
やや長くとがった耳から、ふたりともエルフであるとわかる。
男性の方が『第二城壁』を指さすと、いつのまにか城壁の上には飛龍と騎士らしい人影がうごめいている。
それなりの距離があったが、夕陽を背にしているせいか。はっきりと見えた。
「わざわざ、龍騎士さまが、第二城門を開けにきてくれたようだぜ」
「もちろん、魔物のために…ね」




