第198話 やったのか…ケロ
こんどは、わりと楽に書けたので、早めに投稿しました。
これから、続きを考えます(笑)
それは、巨大なタコだった。
地下遺跡に、タコとは、あまりの組み合わせだが、そもそも、これは、『怪物』というよりも、『メカ』であった。
『メカドラゴン』とおなじ、『メカタコ』だ。
ただ、プーディング王が言っていたように、たしかに、『城』にも匹敵する大きさだった。
ジュンの感覚では、ドーム球場がいちばんイメージとして近かった。ただ。ドーム球場だと平べったい感じになってしまう。なので、あれを、きゅっと丸くすぼめて、盛り上げた感じかなと思った。
「まず、ぼくから、行く……ケロ」
そういって、カエルさんが、跳躍した。
数十メートルは、飛びあがったかと思うと、背中のリュックから、大きな金属球が6つほど射出された。
いつものように、舌でそれをつかみ取ったカエルさんは、そのまま自分も一回転した。体の回転で遠心力をつけた舌が、しなやかなムチのように、ひゅんっと振るわれる。
ずっどーーーーーーーーーーーーーーん!
すさまじい速度で、金属球が、巨大タコに撃ちつけられた。
「ちぇ!……ケロ」
思わず、カエルさんは舌打ちした。
攻撃ではなく、ふつうに、不満を表す方の舌打ちである。
見ると、
巨大タコは、数本の脚を組み合わせて、金属球をブロックしている。
しかも、
その脚のまわりの空間が、ぐにゃりと歪んでいた。
「みんな!避けて!……ケロ」
あっというまに、跳ね返された金属球をかわしながら、カエルさんが叫んだ。
タコが、脚でシールドを張ったうえに、金属球をはじき返したのだ。
そのうちのひとつが、ジュンのお嫁さんたちのところに飛んでいった。
みるみるうちに、金属球は、彼女たちとの距離を縮めた。
「空間魔法、結界!」
カミーユの声が響く。
ぐおおーーーーーーーーん!
間一髪、結界が、金属球を受け止めた。
しかし、それは、結界を大きく歪ませて、食い込んできた。
いっしゅん、破られるかと思った時、カミーユのハートのロッドが、強く光を発した。ジュンからの魔力の供給が一気に加速したのだ。
カミーユは、すぐ目の前で、ギュルギュルと回転している、金属球を睨みつけると、
「反射!」
それを、結界空間の歪みを使って、押し出した。
ハートのロッドが、さらに、激しい光を放つ。
ずっどーーーーーーーーーーーーーーーん!
金属球を弾き返した直後だったせいか、メカタコは、まともに、それを喰らった。
「やったのか……ケロ」
カミーユのすぐそばに着地したカエルさんが、つぶやいた。
メカタコのボディが、わずかに、へこんだだけだった。
「……………」
カミーユは、無言のうちに舌打ちした。もちろん、音はしない。
メカタコの、頭上では、ホログラムぽく表示された、カウントダウンの数字が、目まぐるしく、その数を減らしていた。
巨大な扉の横には、大きなシートが敷かれていた。
そして、その上には、看板のようなものが置かれている。
すでに、劣化がひどく、虫食いのようになっていた。
もともと、間に合せに、造られたものなのかもしれない。
『まもの○○せんとう○○○○ましん』
『○だい○、めん○な○す○○う』
*ひらがな表記なのは、脳内自動翻訳機能のせいだと、無理にでも、納得していただきたい。
ベニートが、みっつの文字しか読み取れなかったのは、無理もなかった。
いま、みんなで見ても、わかるのは、
①まもの
②せんとう
③ましん(『魔神』と読んでいたが)
この3つだった。
しかし、
千春たちも、魔物さんたちも、この看板を感慨深げに、じっと見ている。
『何か、知ってるんだろうか?』
ジュンは、ふと、そう思った。
しかし、必要と判断すれば、必ず、自分にも教えてくれるだろう。
ジュンは、あえて、彼女たちに、問いただすことはしなかった。
『鍵』は、学院長が差し込むことになった。
遺跡に興味しんしんで、さらに、老い先が短い…といえば、学院長に決まっている。暗黙の了解であった。
学院長は、まさしく『破顔一笑』といった顔で、鍵を差し込んだ。
すると、
巨大な扉が、すーっと、色彩を失い、ガラスのような透明の扉にかわっていった。扉の向こうの部屋が、透けて見える。
「あれが『怪物』…?」
もちろん、まだ、頭の一部しか見えていない。
しかし、ジュンは、首をかしげた。
『怪物』というと、なんとなく、『生き物』を連想しがちだ。
でも、アレは、『機械』だろう。だから、『ロボット』と呼んだほうが正しいのかも知れない。
『鍵』をひねると、扉が、左右に開き始めた。
ごごごごごごごごごごごごごご…………
やはり、イメージ的には、『ガラス製の自動ドア』だった。
巨大な扉があいて、そこをくぐり抜けると、『うぃーーーん』という音と共に、手すりのような枠が、床から突き出てきた。
学校の教室くらいの大きさだろうか。
手すりによって、囲まれた空間ができたかと思うと、『がっしゃん』。下にさがりはじめた。
おおきなエレベーターだった。
エレベータが下がるにつれて、『怪物』の全貌が現れた。
感性というのは、母語の影響を強く受けるものである。
しかし、ジュンのお嫁さんたちは、セーラの影響もあって、日本のサブカルに馴染んでいた。
さらに、クローゼットに収めてあった『たこやき』も、幾度となく食していた。そのせいだろうか……
「「「「「「「「かわいいーーっ!」」」」」」」」」
いっせいに、きいろい声が上がった。
「…………!」
カミーユも、つぶらなひとみを、きゅぴーんしている。
それは、超巨大な、デフォルメ_タコであった。
たこやき屋さんの看板にでも使われそうなキュート?な肢体で、なぜか、『ねじりはちまき』状の物体も、頭部に装着している。
もし、この場に、たこ焼きの研究家が同乗していたなら、『ねじりはちまきのタコさん』こそは、宇宙に偏在する元型だったと、感涙に、むせんでいたかもしれない。
いま、このキューティー_タコは、深い眠りついていた。
うつむくように、頭をかしげて、そのつぶらな瞳を閉じていた。
しかし、彼?は、その深いまどろみのなかで、感じていた。
長い長い眠りについていた自分を、揺り起こそうとした、あの『波動』と同じ魔力が、すぐ目と鼻の先にまで、近づいて来ていることを……
彼の覚醒の瞬間は、もうすぐそこまできていた。