表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お嫁さん&魔物さんといっしょに、ムテキな異世界生活  作者: 法蓮奏
プーディン王国(カルシウム大陸)編
194/631

第194話 最高にして最大の釣果

最近、はなしを引っ張るのが、お約束なのだろうなと思い直しています。

無理にひっぱると、すこし不自然ですけど(笑)



 ベニートは、数日後に、サバランの港で捕縛ほばくされた。


 城に連れ戻されたベニートを見て、ディエゴ殿下は癇癪かんしゃくを起こして、すぐに殺そうとした。


 しかし、彼を殺しては、元も子もない。

 鍵の行方ゆくえもわからなくなるし、何かの拍子ひょうしでうまくいって、扉が開けられても、そのあと『魔神』を動かすには、彼のちからが不可欠だ。『学者』たちは、自分たちの『実力』をよく知っていたのである。

 ベニートを失うわけにはいかなかった。



 学者も、騎士も、兵士も、ディエゴ殿下を、はがいじめにして、彼をなだめた。ついでに、殴ったり蹴ったりした者もいたが、すでに、一蓮托生いちれんたくしょうである。皆で、素知そしらぬ顔をしていた。

 ディエゴ殿下以外のひとびとは、すでに、結束していたのである。

 悪事というのは、この異世界においても、たやすく、人を結びつけた。



 鍵の行方ゆくえを聞き出すのに、拷問ごうもんの必要すらなかった。

 ベニートがあっさり白状したからである。

 あっさりすぎると疑う者も居たが、殿下に殺さそうになったせいで、しゃべる気になったのだろうと思い直した。



 「子どもを船に乗せて、スフレの『帝国魔法学院』の学院長に、鍵を届けさせた」

 ベニートは、そう自白した。

 たしかに、彼は、サバランの港で捕まったし、彼の自宅にも、子どもの姿はなかった。子どもの顔など誰も知らなかったが、いないことはわかる。

 鍵を、殿下たちの手に渡さないためには、もっとも有効な方法には違いない。

 彼の自白を、疑う理由は見つからなかった。



 ディエゴ殿下は、すぐに部下を船に乗せて、後を追わせた。

 内陸の国である。持ち船などあるわけもない。サバラン王国の定期便を使うしかなかった。

 もちろん、サバラン王国に、特別に船を用意してもらうわけにもいかなかった。そこから、『魔神』をぎつけられるかもしれないからである。



 彼らは、じっと待つしかなかった。

 そして、ベニートの重要性も増していた。

 鍵と交換するための人質としても、確保して置かなければならない。


 調べると、彼と親しいものは、彼の妹しかいなかった。

 王の主治医となってからは、いくぶん軟化したとはいえ、父は、治癒魔道士などになって戻ってきた息子にいきどおっていた。

 投資にしくじったようなものだったからである。


 殿下は、冒険者ギルドに勤める妹を、彼の、とりまきのひとりであるギルマスを使って監視した。


 


 そして、数カ月後、一枚の依頼書が、『帝国魔法学院』の学生によって貼り出された。そこには、たしかに『預かりもの』とあった。

 スフレ帝国までの往復時間を考えると短すぎるような気もしたが、旅の途中で、子どもが保護されたのかもしれない。深く考えても意味のないことであった。

 彼らのなかには、これを『人質との交換を示唆しさしたもの』と読んだものもいた。

 しかし、気の短い殿下は、さっそく、例の三人組を送り込んで、たちまち失敗したのであった。







 もちろん、作務衣さむえの王も、ジュンの日々の糧となった娘も、ベニートが、白状した中身など、知るよしもなかった。



 しかし、娘のリオナは、ギルドに掲示された、ジュンの依頼を見て、すぐに、ぴんときた。

 彼の『預かりもの』とは、瀕死の父が語っていた『鍵』ではないかと。

 では、主治医は、どこに…


 彼女は、ひそかに、地下の遺跡へと行ってみた。その入り口も父から聞いていた。父は、まちがって娘が近づかないようにと、教えていたのだが…


 見つかれば、ただではすまない。彼女は、不安でたまらなかった。

 ちょうど、幽閉しているベニートに食事を届ける時間だったのか、リオナは兵士とかちあいそうになった。リオナは、すきを見て、すぐに逃げ出した。


 それでも、兵士たちの会話から、主治医が地下に閉じ込められていることは確認することができた。主治医をなんとかしなければ、父は助からない、彼女は、そう思い詰めていた。

 リオナは、冒険者ギルドに走った。

 あの、神秘のメモ書きを握りしめて…





 「はい…」

 リオナは手をあげた。


 「…それで、『鍵』は、あなたが学院長から預かってるのよね」

 ジュンのほうを見ながら、たしかめるように言った。

 王たちも、いっせいに、ジュンのほうを見た。



 ところが、


  

 「…なんじゃろ?」

 先に、学院長が、不思議そうに声をあげた。

 「わしは、『鍵』など預けてはおらんがの…」

 「そもそも、ベニート君から預かってるものは、何もないしのう…」

 言いながら、頭のなかで確かめているようなふうであった。



 「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」」」


 

 …………


 

 「口からでまかせだったのか……ケロ」

 見もふたもない言い方だった。



 「ああ……」

 「でも、言うだけ言ってみるもんだな……」

 まあ、今回は、依頼書なので、『書くだけ書いてみる…』だろうか。

 

 「あの三人も釣れたんだから、いいんじゃないか…」

 たいして、役にもたたなかったけど……


 そう、うそぶくジュンをみて、リオナは唖然あぜんとするしかなかった。

 自分も、半分、釣られたようなものだった。あんな格好かっこうまでして会いにいったのに。

 でも、ジュンは、父は救ってくれた。結果的には、その甲斐かいがあったのか、と思いなおした。


 

 ジュンは、親しみをこめた眼差しを、リオナに向けた。

 彼女こそは、彼の依頼書が釣り上げた、最高にして最大の『釣果ちょうか』であった。

 彼は、映像を、何度も何度も堪能たんのうしているうちに、彼女がとても身近に感じるようになっていた。よくあることである。

 


 リオナは、長年の友人のように自分を見つめる少年に、首をかしげるしかなかった。

 まさか、目の前の少年が、自分の『パ○ツ映像』を、しずかに、脳内で反芻(リピート)しているとは、思いもよらなかった。




 そのときだった。



 

 「その『鍵』というのは、たぶん、これのことだと思うわ…」

 

 会議室の入り口から、声が聞こえてきた。

 入り口の向こうには、ふたりの人影が見えていた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ