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お嫁さん&魔物さんといっしょに、ムテキな異世界生活  作者: 法蓮奏
プーディン王国(カルシウム大陸)編
191/631

第191話 土がついているわ

みません。いま、第192話が、どうしても投稿できなくて、びびっていたのですが、この第191話を、明日の12時にしていました。


いま、コピペしたので、これから、間違った方を削除します。

申し訳ありません。 


 

 翌朝、プーディング王国の皇族専用の食堂で、ひとりの少女が、食後のお茶を飲んでいた。



 すると、



 ばったーーーーーーーん!



 食堂の扉を、ちからまかせに、開ける者がいた。

 テンパ殿下だった。もちろん、本名ではない。

 怒り狂ったような形相ぎょうそうをしているから、扉に八つ当たりでもしたのだろう。

 気の毒な扉だった。



 「リオナっ!」



 テンパ殿下は、怒鳴りつけるように、少女の名を呼んだ。


 もちろん、昨日、足首から背中の内側まで、ジュンに、詳細に撮影されていた美少女である。

 彼女の珠玉の映像は、ジュンの宝ものとして、大切に保存され、リアル結婚生活に入るまでの、『かて』となる予定だった。




 「きさまぁ…、きのう、冒険者ギルドに行ったそうだなぁ…」

 『ネタはあがってるんだ』風に、ねちっこく言った。

 本性というものは、ことばの端々(はしばし)に、つい、露見(ろけん)してしまうものである。


 きょうは、昨日の騎士と、汗かきの事務官のほかに、もうひとり、男を連れていた。


 「ずいぶん、おしゃべりな、ギルドマスターですのね」

 リオナは、もうひとりの男を、じろりと見て言った。

 たしかに、あの親切なおっさんギルマスだった。


 リオナは、自分から白状することにした。

 黙っていると、暴力をふるわれるからだ。まあ、きょうは、何もできないだろうが……

 「先生の情報を、伝えるために……」

 「あとで、城にくるようにメモ書きを渡しましたわ」


 すかさず、


 ギルマスが、テンパ殿下に、耳打ちした。

 会議室の隠し窓から、のぞいていたのである。




 ギルマスは、あの三人組がしくじるとはおもっていなかった。魔力が強いと言っても、しょせん少年である。それも、おとなしそうな少年だ。

 だから、隠し窓から、わざわざのぞく必要がないと、たかをくくっていた。

 ところが、その三人組が、なぜか窓から外に落下して、気を失っていた。それどころか、そのあと、いつの間にか、姿をくらましてしまった。


 ギルマスは、焦った。

 あの癇癪かんしゃくもちの殿下に、何をされるかわかったものではないからだ。


 ちょうどそのとき、リオナ姫が、とても皇族とは思えないような格好で、こそこそと情報提供にやってきた。彼は、リオナ姫のことをチクることで、三人組を見失った失態を挽回ばんかいできるに違いないと安堵あんどした。

 そして、いま、まさに、その機会がやってきたのであった。




 ギルマスから、嘘でないことを、聞いたのだろう。

 テンパ殿下は、「ふんっ」とせせら笑った。


 「それで、その少年とやらは、城にやって()()()のか?」

 小馬鹿にしたような言い方だった。


 「……………」

 少女は、何も言わなかった。だから、嘘は言っていない。


 ひゃっ、ひゃっ、ひゃっ、ひゃっ…

 テンパは、腹を抱えて笑いだした。


 「そうであろうなぁ…」

 「きさまのメモが読めるようなやつがいたら、すでに人間をやめているだろうよ」

 彼は、以前、ついうっかり、リオナの落書きを見てしまい、失神しかけたことがあったのだ。


 「……そうですわね」

 少女は、小さな声で言った。

 たしかに、鉄格子てつごうしの扉を、かぎごと引きちぎって開けるような少年だ。

 人間をやめているには、ちがいないと彼女も思った。




 ひとりしきり、笑うと満足したのだろう。

 テンパ殿下は、とりまきの三人を連れて、食堂をあとにした。


 すると、


 廊下に出るなり、おっさんギルマスが、み手をしながら、テンパ殿下にたずねた。


 「陛下が姿を消されたことは、問いたださなくてもよろしいので…」


 テンパ殿下は、軽蔑するような目で、中腰で揉み手をしているギルマスを見下ろした。

 ギルマスは、中腰ポジションをとっていた自分をひそかに、ほめた。ギルマスのほうが背が高いのだ。


 「鉄格子てうごうしが引きちぎられた上に、死にぞこないの父上と、兵士四人が、姿を消したのだぞ」


 ここで、


 汗かきの事務官が、めずらしく、したり顔で言った。

 「四人の兵士が、陛下をこっそり、運び出したと考えるべきでしょうな」

 それならば、つじつまが合う。

 汗かきは、自分が、ちょっと、めいたんていになった気がしていた。



 『それなら、鍵を使えばいいはず。そもそも、兵士に、鉄格子は引きちぎれないだろうに…』

 後ろを歩いていた騎士は、とうぜん、そう思った。

 しかし、それを口に出せば、今度は、自分が、謎解きを迫られるだろう。

 騎士は、余計なことは言わないことに決めていた。


 


 

 リオナは、食堂の扉の陰から、彼らをじっとみていた。

 そして、まちがいなく出ていったことを確認すると、あたりを見回した。

 ちかくにも、ひとの気配はない。


 ふと、母上が、生きていた頃には、ここも、もう少し賑やかだったなぁと、懐かしんだ。


 しかし、いまは、回想にふけっている場合ではない。

 

 「ハッチさん…」

 彼女は、小さな声で、ステルスハッチを呼んだ。


 みよーーーーん。


 すぐ目の前に、あのハチが姿を現した。


 

 「たしか、リュックに手を触れるんだったわね…」

 そう、ひとりごちて、ハッチの背中のリュックに触れようとした。


 「…あら?」

 何かに、きづいたのだろう。ごそごそと、ハンカチを取り出した。


 「このリュック、なんだか土がついているわ。地面にでも落としたのかしら」

 そういって、リュックに付着していた土を、ハンカチで払い落とした。



 彼女は、このとき、このハッチが、こめかみのあたりに、冷や汗とも見えるオイルを、いってき流していたことには、気が付かなかった。


 なぜか、すこしびくびくしているような、ハッチを不思議に思いながらも、彼女は、リュックに手をふれた。


 

 

 そのときだった。




 「お嬢様、お茶のおかわりは、いかかでしょうか?」

 若いメイドが、食堂に、紅茶のポットをタオルにくるんで、入ってきた。


 食堂に、お嬢様の姿はなかった。

 

 「お部屋に、戻られたのかしら…」 


 ふと、テーブルの上に残されたティーカップを見ると、まだかすかに、湯気が、たちのぼっていた。





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