第19話 暗部登場
街道をひたすら走っていると、ちいさな森が見えてきた。
街道は、森のなかに続いている。
森を切りひらいて、街道を通したらしい。
「そろそろだな…」
「そうっすね…」
すでに運転は、ケンイチさんに代わってもらっている。
助手席も、いまはケントさんだ。
後部座席に移っても、オレの隣はあいかわらずセーラだった。
食べ比べでもしているのか。
三袋目のポテチに手をつけると、首をかしげてはぶつぶつ何か言っている。
「ほんとうに、ひとりで大丈夫か?」
「はい、たぶん…」
「なんだ、頼りねえな」
「なんとかなると思いますニャ。それに、ジュンしゃまには魔法の訓練が必要ですニャ」
「うーん、…訓練に使う相手じゃねえんだが」
「…ですよね」
オレも、そう思うんだけど…
「多少の手ごたえがないと、訓練になりませんのニャ」
自信満々のライムに、うなずくしかなった。
森に入っても、街道は道幅も路肩もそれなりに広かった。
だが、用心ためにスピードは落としていた。
「…あったっすね」
「ああ…、大司教のばあさんの言うとおりになったぜ」
教会の前で、オレたちを見送りに来た大司教は、最後にこう言っていた。
「アタシは、今回のミルフィーユ領の件も宰相のしわざだと思ってるのさ」
そもそも、こうしてセシリアが王都から追放される。ちょうどその日に、ミルフィーユ領の情報が流れてきたわけだ。
「あわててミルフィーユに向かうあんたたちには、ちょっとした『待ち人』がいるかもしれないねえ」
「ああ、ちげえねえな」
ケンイチさんも気づいていたようだ。
大司教の忠告どおり。
目の前の街道は、横倒しにされた数本の太い木で塞がれている。
じつは、大神さまたちの魔改造のお陰で、このまま突っ切っても問題ないらしい。
やたらと強固な結界がワンボックスカーに張られているのだ。
大木ていどなら、軽く跳ね飛ばしてしまうという。
だが…
「とにかく、訓練あるのみですニャ!」
ライムの掛け声とともに、道を塞ぐ木の手前で停車した。
オレは、ゆっくり車から降りた。
頭の上には、ライムが鎮座している。
「なかなか強固な結界が張られておりますゆえ、攻めあぐねるかと思っていたでゴザルが…」
「…助かったでゴザるよ」
大木のそばまでやってきたオレたちは、いつの間にか。黒ずくめの頑強な体格をした男たちに囲まれていた。