第189話 ダブルアクション可能だけど
まず、カトレアの続きを書きました。
きょうも、めずらしく早く書けたので、すこし早く投稿します。
また、これから、続きを考えます(笑)
できるだけ、12時と、20時に投稿したいと思っています。
でも、自転車操業なので、リアル雑務に追われたり、思いつかなかったり、いくら書いてもボツにするしかなかったりすると、ようやくその日のうちに、ひとつ書けるかどうかといった感じになってしまいます。
安定して書けるようにがんばろうと思いますが、ご容赦いただけると幸いです。
カトレアは、ちいさな女の子との間を、騎士に塞がれたうえに、周りを二十名にもおよぶ兵士たちに、囲まれていた。
「なぜ、お前だけがいて、あの二人がいない?」
若い騎士は、重ねて問い詰めた。
そのうち、
「…うん?」
カトレアが、自分の背後ばかり見ていることに気がついた。
「おいおい…、まさか、こいつがあの魔道士の娘か…」
ちいさな女の子を、うれしそうに、見ながら言った。
もちろん、ロリコンという意味でない。
「こりゃあ、運がいいぜ…」
「ふたり同時に、捕まえられるとはな」
そういって、へらへらと、笑った。
それから、
周りを囲んでいる兵士に、命じた。
「おい、お前たち。その女を縛り上げておきな」
「オレは、こっちのガキを…」
そこまで、いいかけたときだった。
「まあ、まあ、まあ、なーんてかわいい子かしら…」
とつぜん、場違いな声が聞こえてきた。
振り向くと、そこには、同じ制服を来た少女が数人、小さな女の子を囲んでいる。
しかも、とびきり美しい少女ばかりだった。
「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」」」」
通常、お約束として、こうした場面では、
「うっひょー、いい女ばっかりじゃねえか」とか、
「こいつぁ、オレさまが、女の喜びってやつをじっくり教えてやらねえとな」とか、
「おかしらぁー、あっしたちにも、何人かまわしてくだせえよぉ」とか、
この場合は、盗賊じゃないから、『お頭』は、おかしいが…
悪党どもが、腰をくねくねして歓喜するところであるが、
あまりにも、とうとつに、姿を現した上に、彼女たちの魔力が、けた違いであることに、まず、戦慄した。
「な、何なんだ、こいつらは……」
「こ、この魔力……、ば、ばけも……」
…と、そこまで、いいかけたときだった。
『ハッチ_Mark2部隊』に搭載された『高性能Ai』が、この禁句を感知した。
マスターであるジュンのお嫁さんを『バケモノ』呼ばわりするなど、万死に値する。
ここで、『ハッチ_Mark2部隊』が、ステルスを解除した。
もちろん、解除する必要は、まったくないのだが、クマ開発陣の『AI』は、様式美を重視する設計であった。
すでに、兵士たちは、大きなハチの群れに囲まれていた。
もちろん、ハッチたちの外見は、きわめてラブリーではあったが、箱ティッシュサイズのハチである。
そのサイズのハチに囲まれて、『ラブリー』と感じるには、それなりの胆力を必要とするだろう。
まして、いまは、怒りを表現しているのか。目が赤く輝いていた。
前回は、やや遠距離であったので、スコープ付きのライフルを用いていたが、今回は、至近距離である。
みな、ハンドガンを取り出すと、いっせいにマガジンを押し込んだ。
そして、
「「「「「「「「「「「「「「「かちんっ」」」」」」」」」」」」」」」
初めて、拳銃を目の当たりして、うろたえる兵士たちの耳に、撃鉄を起こす音が聞こえた。もちろん、ダブルアクションも可能な銃であったが…
ぷす、ぷす、ぷす、ぷす、ぷす、ぷす、ぷす、ぷす……
たちまち、問答無用とばかりに、かすかな発射音が、兵士らを襲った。
もちろん、消音器は、装着ずみであった。
ばた、ばた、ばた、ばた、ばた、ばた、ばた、ばた……
騎士も兵士も、ろくな戦闘さえ許されぬうちに、次々と倒れていった。
まさしく、死屍累々(ししるいるい)。
盆の窪には、細い針が突き刺さっていた…
ちいさな女の子は、戸惑っていた。
とつぜん、きれいでやさしそうなお姉ちゃんが、たくさん現れた。
みんな、しゃがんで、親しげに、自分を見つめてくれている。
なかでも、さっき、『まあ、まあ』言っていたお姉ちゃんは、身体的に、やさしさのかたまりに見えた。抱っこされるなら、弾力性に富んだ胸のほうがいいに決まっているのだ。
ちいさな女の子は、イレーヌに抱きついて、そのやわらかい胸に、きゅと顔を埋めた。
カトレアは、ハッチたちが、兵士を仕留めるようすを見て、昨日、自分を救ってくれたのも、このハッチたちだったと悟った。
すると、全身から、緊張が抜けたのか、その場に座り込んでしまった。
囮とはいえ、『あの子』も巻き込んでしまうところだった。
いま振り返ってみれば、『ぜったいに安全だから』と説得された意味もよくわかる。まるで、相手にならなかったのだから。
さらに、いまは、クマの魔物が現れて、黒いゴミ袋に、つぎつぎと熟睡する兵士たちを放り込んでいる。たしょう、大きなゴミ袋ではあるが、なぜ、あんなにニンゲンがたくさん入るのか。理解に苦しんだ。
昨日、カトレアは、豪華なホテルのベッドで目を覚ました。
いっしゅん、なぜ、自分がこんなところにいるのかと、訝った。
男たちに襲われたことを、とっさに思い出した時、全身に冷や汗が流れた。
しかし、衣服には乱れがなかった。カトレアは、ほっと息をついた。
なぜか、ジュンの顔が、ふと思い浮かんだ。
そういえば、なにか毒のようなもので、自分は意識を失ったはず。
ふたたび、あわてて、腕を確かめたが、傷跡すらなかった。
そのとき、何かが、コツンと手にぶつかった。
ちいさな瓶が、ころころと転がってゆく。手元には、赤いリボンが落ちていた。
「まあ、まあ、まあ…、目が覚めたのね。お腹はすいてないかしら…」
明るい声が、聞こえてきた。
とても、うつくしい女性だった。自分と同い年くらいだろうか。
聖女というのは、こういう人のことを言うのかもしれないと、カトレアは思った。
彼女は、イレーヌといって、元聖女だと自己紹介された。
そのあとは、驚きの連続だった。転移、城壁、温泉、ヘアドライヤーなどなど。
しかし、
カトレアは、驚いてばかりもいられなかった。
『あの子』を、『アリアンナ』を、一刻も早く救わねばならない。
カトレアは、手をついて、イレーヌに救出をお願いした。
そのときだった。
イレーヌにまさるとも劣らない、美しい少女が現れて、こう言った。
「ぜったいに助けてあげるから…」
「何人か、敵をつかまえるのを、手伝って」と。
彼女には、いろいろと調べたいことがあったようだ。
『アリアンナ』は、いま、うれしそうに、イレーヌの胸に抱かれていた。
カトレアは、なんとか、立ち上がった。
ふらつく足で、なんとか『アリアンナ』のそばまで行った。
『感動の対面』に違いなかった。
アリアンナは、ふと何かに気がついて、イレーヌの豊かな胸から、顔を上げた。そこには、自分をやさしく見つめる、カトレアがいた。
「あっ……」
「カトレア……」
まだ、ちいさな子どもである。すっかり、イレーヌの胸に懐いていたので、ややそっけなく聞こえた。
「……おばちゃん」
……………
……………
はっ、
気がつくと、イレーヌは、アリアンナのほっぺたを、ぎゅうーーーと引っ張っていた。
「ご、ごめんなさーーーい」
「カトレアおねえちゃーーーん」
アリアンナは、泣きながら、カトレアから、めいれいされていた呼称をもちいた。