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お嫁さん&魔物さんといっしょに、ムテキな異世界生活  作者: 法蓮奏
プーディン王国(カルシウム大陸)編
188/631

第188話 地図

いままでは、引っ張らないように、なるべく一気に書いていたのですけど、

こういう書き方?だと、引っ張るのが、お約束のような気がして、二話も引っ張ってしまいました(笑)。




 「なんだとっ!あの三人が行方ゆくえをくらましただと!」

 驕奢きょうしゃな室内に、甲高かんだ怒鳴どなり声が、響いた。


 栗毛のテンパーの若い男である。

 ちなみに、テンパーとは、脳の機能を言ったものではない。髪の毛の形状である。


 「は、はあ……、すこし目を離したすきに、居なくなっていたそうです」

 たしかに、気を失っていたはずなのにと、言い訳をしておりましたが…

 太った事務官のような男が、汗をふきふき言った。



 「それにしても、行方をくらますとは……」 

 若い騎士が、しきりに、首をかしげて言った。


 そもそも、


 「元Sクラス冒険者とはいえ、悪さがバレてギルドから除名になっています」

 「殿下のところから逃げ出しても、他に行くところがないと思うのですが……」


 これを聞いて、殿下と呼ばれた男が、また、声を張り上げた。

 「何が、元Sクラスだっ!」

 「少年ひとりに手もなくやられたそうではないか!」


 

 「そうなのですが……」

 騎士は、しばらく、言葉を選ぶように、黙り込んだ。


 「……折れた剣が、残されていたらしいのです」

 「それも、みごとにぽっきりと…」

 いいながら、騎士は、苦笑した。



 「……折れた剣だと」

 「どうせ、安物の剣でも、使っていたのだろう」

 けっこうな金をくれてやっていたのに……と憤慨ふんがいした。



 「いえ、たしかに『業物わざもの』ではありませんが、そう簡単に折れるような得物えものでは……」

 あれが、折られるなら、我々の剣だって……、危ういかもしれません。

 騎士の顔が、きゅうに、こわばった。


 殿下は、その顔を見て、思い直した。

 「では、それなりの『業物』を持った、腕の立つ剣士ということか?」

 魔道士と聞いていたはずだ。話が違うのではないか。



 「…それが」

 騎士がことばを濁した。


 「少年のもちものは、ちいさなリュックだけで…」

 「剣などもっていなかったそうなのです…」


 たしかに、剣を斜めに置いて、腹を打てば、曲がりもするし、折れもするだろう。

 しかし、元Sクラス冒険者あいてに、そんな悠長ゆうちょうなことができるはずがないのだ。



 ここで、さすがに、血圧の高そうな殿下も、言葉につまった。

 「それでは、いったい……」

 「どうやって、折ったというのだ……」







 『くっちゅん!……クマ』

 『どうした?風邪でもひいたか……クマ』

 まわりのクマさんたちが、心配そうに声をかけた。


 『いや、なんでもない……クマ』


 『ちーんっ!……クマ』

 くしゃみをしたクマさんは、念のため、しっかり鼻をかんだ。


 それから、ふたたび、足ぶみの轆轤ろくろを、ゆっくりと回しはじめた。

 しゅん……、しゅんしゅん……、しゅんしゅんしゅん……

 降り積もる雪のように、轆轤の回転音が、静かな作業場に満ちてゆく。

 さきの高血圧殿下を、名状しがたい不安へとおとしいれた『茶器』が、ここに、またひとつ誕生しようとしていた。






 

 ギルドからやや離れた場所に出たジュンは、さきのメモを広げてみた。

 あの、ふわミニ美少女から渡させたメモだ。



 …くっ



 ジュンは、思わずうめいた。


 その地図は、およそ、地図という範疇はんちゅうに入るものではなかった。なにか、奇妙にゆがんだ物体が、点在するものを『地図』とは呼べない。

 また、文字に至っては、ジュンの脳内の自動翻訳機能が、中断して、文字化けさえ発生させる始末しまつであった。


 人類に属するものが、どうやってこれを成し遂げたというのか。

 ジュンは、戦慄せんりつした。

 異世界には、まだまだ、自分の知らない神秘が隠されていたのだと思った。


 あんなに、かわいい女の子だったのに…

 

 『天は二物にぶつを与えず』と、ひとはいう。

 美少女という属性の代償だいしょうにしては、おもすぎる罰であった。



 自力ではどうしようもない。

 彼は、いったん、ギルド地下に戻った。



 「こ、これは……、ケロ」

 「あ、あるいみ、ニンゲンの可能性すら感じる……、ケロ」

 カエルさんたちでも、この神秘には対抗できなかった。


 『古代文明の地上絵』に匹敵すると評価したのであろうか。

 「ちょっと、写真に撮って、デスクトップの壁紙にする……、ケロ」

 これが、カエルさんたちの間に拡散しないことを、ジュンはひそかに祈った。

 

 

 みよーーーーーん



 専門家エキスパートが、転移してきた。


 「ふーむ、なるほど……、クマ」

 暗号解読一般を担当するクマさんであった。


 いずれにしても、

 「サンプルが少なすぎる……、クマ」

 「…っていうか、根本的にサンプルにならないとは…、すさまじい…クマ」



 もう、こうなったら、


 「本人に、直接、たずねるしかない……ケロ」


 あまりといえば、あまりの事態に、誰もが言葉を失った。

 これは、文字と絵という、機能そのものの崩壊であった。



 「…来た、……ケロ」

 「『ステルスハッチ_Mark2』の映像を共有させてもらった……ケロ」

 


 エッグのウサギさんたちによって、全ての関係者は、『ハッチ_Mark2部隊』の監視対象になっている。

 さっきの美少女も例外ではなかった。

 もちろん、統括とうかつしているのは、真白たちだ。

 


 『Mark2』とは、どういうことだと思われる方もいるかもしれない。


 『ハッチ部隊』は、当初、ウサギさんたちの『遠隔操作』で、動いていた。しかし、今後の活用の拡大を考慮したクマさんたちは、『ハッチ部隊』に『高性能AI』を搭載した。

 これで、自律行動が可能となり、ウサギさんたちの仕事も軽減されたのであった。『操作』の必要はなくなり、『命令』を発信し、『報告』を受信すればよくなったのである。


 

 「神秘地図の女の子が見つかった……ケロ」


 「中央モニターに出す……ケロ」



 みよーーーーーーーん



 「ああ……、たしかに、さっきの子だね」

 

 「こ、この少女が……、ケロ」

 「この女の子なのね……、ケロ」

 「この子がそうなのか……、クマ」

 みんな、初めて遭遇そうぐうした宇宙人のように、美少女を見ていた。



 『ステルスハッチ』は、その業務上、必然的に、やや上空から監視している。

 ローアングルではないことを、ジュンは残念に思った。

 頼んだら、下からも撮ってくれるのかもしれない。

 

 しかし、


 自分は、彼らの『マスター』だ。企業で言えば、『CEO』だろうか。

 その自分が、『パ○ツが見たいから下から撮って』とは、言えないと思った。

 さらに、魔物さんたちは、そろって、『人格者』である。もし、例外がいるとすれば、『メカドラゴン』くらいのものだ。


 たしかに、『人格者』であれば、寛容な心で、受け止めてくれるかもしれない。しかし、『人格者』であればこそ、面と向かって言えないことであった。


 誰でも、尊敬し信頼できる相手に向かって『パ○ツ見たいねー』などと、気安く言えるはずはないのだ。



 そんなわけで、

 

 内心、忸怩じくじとしながら、美少女の後頭部を見ていたときだった。



 「これは……」


 

 そこには、意外な映像が、画面に映されたのであった。

 

 


 

 

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