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お嫁さん&魔物さんといっしょに、ムテキな異世界生活  作者: 法蓮奏
プーディン王国(カルシウム大陸)編
185/631

第185話 不憫でねぇ

ようやく書けました。

なんとか、おはなしが、つながっていきそうな感じです(笑)


 「はあ、はあ、はあ、はあ……」

 カトレアは、腕を押さえながら走っていた。


 傷はうずき、体はふらついた。

 それほどの出血ではない。

 何か、毒でも塗られていたのだろうか。


 路地裏まで逃げ込んだとき、足がもつれて、倒れた。

 目がかすんで、意識がもうろうとしてきた。


 

 「おや、そろそろ、限界のようですね」

 「あんなに、走ったんだ。いい具合に、まわってきてるだろうよ」

 いやらしい笑い声が聞こえてきた。

 男の声だった。ふたりはいるだろうか。


 

 「ギルドを出たと聞いたときは、すこしあせりましたが…」

 「あんな目立つ服を着てりゃ、すぐに見つかるわな」

 へらへらと笑っている。

 おおかた、あの小僧にでも見つけてほしかったんだろうが、残念だったな。

 そんなことを言いながら、男たちは、近づいてきた。

 

 かすんだ目をかろうじて、あけても、ぼんやりとしか姿はみえなかった。

 男たちの手が、自分の体に触れようとしたとき、カトレアは、意識を手放した。


 

 ぷすっ、ぷすっ、



 意識をやみへと手放す間際まぎわ、なにか、かすかな音が聞こえた気がした。


 

 



 「おばちゃん…、串焼き、50本ください」

 「おや、そんなにかい。ありがとうよ」

 いかにも、性格円満そうな感じのおばちゃんだった。

 なぜか、ジュンは、古代の『はにわ』を、なつかしく思い出していた。


 

 「…ちょっと、たりないようだねぇ」

 「いま、焼くから、ちょっと待っておくれよ」

 そういいながら、てきぱきと、串に刺した肉を火にかけた。

 待っていると、しだいに、肉の焼ける香ばしい匂いが、ただよってくる。

 ジュンは、現地の食料は、口にしたことがない。

 これなら、食べられるだろうかと、ふと、思った。



 そういえば、



 ジュンは、屋台の近くにあるベンチに目を向けた。

 

 串焼きを頼むときに、カトレアの残りを追って、未練みれんがましく、そのあたりを探していたのだ。

 カトレアの姿は、やはり、なかった。……がっかりした。



 しかし、と彼は思った。



 たしかに、『いっしゅんしか、見られなかった』。

 もちろん、カトレアの純白の下着のことである。



 これを、どう受け止めるか。

 ここに、人生の分かれ道がある。



 なぜ、『パン〇ラ』から、人生論議に入らねばならないか、いささか、疑問ではあった。しかし、かのソクラテスも、ちょっとした日常会話から、深い人生への思索に沈潜ちんせんしていったと、アイリスから教えられた気もする。

 ならば、オレも、『パン〇ラ』から、なんらかの悟達ごたつを得たとしても、おかしくはあるまい。



 『いっしゅん()()見られなかった』と落胆らくたんすることは簡単だ。


 しかし、


 あの、純白でありながら、その柔らな曲線ゆえに、エロテックさも秘められた、アンビバレントな彼女の『パン〇ィ』を、自分は、しかと、目撃したのだ。

 それは僥倖ぎょうこうに違いなかった。



 ならば、オレは、こう、思う()()ではないのか…



 『いっしゅん、見ちゃった、ラッキー!』と。

 だって、それは、まぎれもない幸運なのだから。



 『前向き生きる』とひとはいう。

 それは、つまり、こういうことだった、のではないのかと。


 ジュンは、こころに、希望の光が、燦然さんぜんと輝き出すのを、しかと感じた。



 …………



 「待たせたねぇ。五本サービスしといたよ」

 おばちゃんの、声が聞こえてきた。


 その円満さを象徴するような声音こわねにつられたのか、あるいは、自分のなかに湧き上がる新たな希望が、彼の口を軽くしたのかもしれない。


 ジュンは、つい、カトレアのことを、たずねてしまった。


 「さっき、あそこに、女の子が……」

 もちろん、いまは、誰もいない。


 「ああ、あの子かい…」

 おばちゃんの声が曇った。

 「もう、半年ほどにもなるかねぇ。いつもあそこに座って、じっと、待ってるのさ…」

 「あんな小さな子が……と思うと、不憫ふびんでねぇ…」


 小さな子……? ジュンは、不思議に思った。


 たしかに、このおばちゃんの体側たいそくと比べれば、たいがいの人類は、相対的に、『小さい』と認識可能かもしれないが……


 「…聞けば、『おとうさんを待ってるの』っていうんだけどね」

 「父親は、いったい、どうしちまったんだろうねぇ…」

 「ああ……、お代は、ちょうど銀貨一枚だよ」


 やはり、カトレア受付嬢のことではないらしい。

 彼女が、ここで、父親を半年も待つのは、不自然すぎる。

 ジュンは、収納から取り出した銀貨を渡しながら、おばちゃんとの会話の齟齬そごに気づいた。


 「…なんでも、たいそうな魔道士だったらしいんだけど…」

 

 「えっ?」

 

 ジュンは、代金の銀貨を渡す手が、思わず止まった。

 

 「ありがとうよ。おかげさまで、きょうは、もう帰れるよ…」

 やや、戸惑とまどいながらも、銀貨を受け取ると、うれしそうに言った。



 「お、おばちゃんっ!いまのはなし、もう少しくわしく!」



 もしかすると、カトレア嬢の『白パン○ィ』が、幸運をまねき寄せてくれたのかもしれない。

 ジュンは、そんな思いに胸を踊らせながら、帰り支度じたくをはじめたおばちゃんから、父を待つ小さな女の子の話を、じっくりと聞いたのだった。





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