表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お嫁さん&魔物さんといっしょに、ムテキな異世界生活  作者: 法蓮奏
プーディン王国(カルシウム大陸)編
182/631

第182話 ひとつめのおしごと

いろいろ、考え直したり、書き直したりしたので、いままでかかってしまいました(笑)



 いま、ジュンは、冒険者ギルドに来ていた。


 もちろん、ゼリー帝国内のギルドではない。ゼリー帝国より、さらに内陸に位置するプーディン王国だった。

 


 ゼリー帝国のギルドでは、ひやりとした場面を二度ほど体験していた。

 ジュンは、学習できる少年である。

 ゆえに、同じてつを踏まないように、彼は、待っていた。

 そして、ようやく、その『時』が来たのであった。



 『ニンショウ、カクニン。マスター…トウロク、カンリョウシマシタ』

 例の機械的な音声が聞こえてきた。

 


 「おい、いま、なんか聞こえなかったか?」

 「ああ、マスターがどうとか、聞こえたな」

 「おれには、登録が、どうとかって聞こえたぜ」



 まわりにいる冒険者たちは、キョロキョロと、あたりを見回している。

 ジュンは、平然としていた。

 別にあせる必要もなかった。


 なぜなら、いま、ギルド内には、百名近い冒険者がいるのだ。

 たとえ、この音声が全て聞こえて、意味を理解したとしても、ここにいる誰が、『マスター』なのかわかるはずもない。


 ジュンは、悠然ゆうぜんとして、ギルド内に足を踏み入れた。



 次の関門は、地下へのエレベーターの扉であった。

 ゼリー帝国では、いきなり開いたために、つい飛び退いてしまった。


 しかし、幸いなことに、ここには、エレベーターがなかった。

 そのかわりに、転移用の装置が設置されていた。


 そもそも、ジュンとカミーユ以外に、転移魔法をつかえるものはいない。そのため、その装置も、転移装置としての扱いは受けていなかった。ジュンですら、『スター○レック』を見ていなかったら、気づかなかったかもしれない。


 現在、転送用テーブルは、ややゴージャスな掃除用具置き場になっている。


 ジュンは、ふたたび、『時』を待った。

 


 がらがらがらがら…



 シャッターのようなものが上がり、受付カウンターと、なかなか美人ぞろいの受付嬢が、燦然さんぜんと姿を現した。

 


 「おっ、開いたぜ!」

 「開いた、開いた」

 ひねりも何もない声と共に、冒険者たちは、いっせいに、カウンターの方を向いた。



 『来た!』

 ジュンは、こころで、叫んだ。とくに、叫ぶ必要はなかったが、まあ、雰囲気的に…


 ジュンは、堂々と、掃除用具を箱ごと持ち上げて、転送テーブルの外に移した。こういうときは、こそこそしていはいけない。それに、 

 ジュンが、転送で消えても、誰も困らないが、掃除用具が消えると、掃除のおばちゃんが困るのだ。おばちゃんに迷惑はかけられない。おじちゃんかもしれないが…



 掃除用具をけるときに、すでに装置には、スイッチが入っていた。

 転送テーブルが、淡い光を帯びはじめている。ジュンは、その光の上に乗った。

 もしかすると、誰かが気づいて、ジュンを見ているかもしれなかった。

 しかし、ローブを着た後ろ姿を見られても、何も困ることはない。



 …………



 いっしゅんで、地下のオペレーション・ルームに到着した。


 この部屋のレイアウトは、サバランなどと同じだ。

 巨大な中央モニターも、五つのコンソールも、変わらない。


 「ヨウコソ、マスター。ゴヨウメイヲ…」


 「『転送ゲート』を開放して」

 これが、ジュンが、ここに足を踏み入れた理由だった。

 もちろん、地上と地下をつなぐ転送ゲートのことではない。


 「……カシコマリマシタ」


 …………


 「ゲート、カイホウシマシタ…」

 ナビのAIが、言ったとたん、



 みよーーーーーーーーーーーーーーん



 カエルさんたちが、転移してきた。

 


 「「「「「「マスタージュン、ありがとうございます」」」」」」

 みんなで、ジュンに、ぺこりと頭を下げた。



 それから、いそいそと、コンソールの座席に座ると、


 「ここが、新しい『職場』か…ケロ」 

 「ようやく来られたのね…ケロ」 

 「ああ、ようやく『使命』を果たせる…ケロ」


 感慨かんがい無量といった面持ちで、コンソールのテーブルを、いとおしそうにでていた。


 「みんな、準備は、完璧か?…ケロ」

 「ええ、もちろんよ…ケロ」


 ジュンは、感心した。

 さすが、エキスパート。この日のために、万全の準備をしていたのだろう。


 「見てちょうだい、私は、壁紙を『ゲロゲロゲロッペー』にしたのよ…ケロ」

 「おお、なかなか、かわいいデスクトップだ…ケロ」


 「ぼくは、常駐アプリの『うがうが』をインストールしたよ…ケロ」

 「ま、まさか…これは、自作のキャラなのか!…ケロ」

 「わかる?この日のために、頑張って作ったんだ…ケロ」


 「私、ジュンさまのところから、JPOPをたくさんもらってあるの、みんなも要る?…ケロ」

 「いいねえ、ちょうだい…ケロ」

 「ぼくも、欲しい…ケロ」


 カスタマイズの準備だった。

 きっと、エキスパートな人って、こういうことにも、こだわるのかもしれない。ジュンは、そう思うことにした。




 そのときだった。




 「ご主人サマーーーーーーーーーーーーっ」


 真白が、後ろから、抱き着いてきた。

 いま、到着したようだ。


 もちろん、あの日、小型宇宙艇を山腹に突き刺して、やってきた子だ。


 ダンジョン四姉妹と違って、ずっとひとりぼっちだったせいだろうか。

 セーラなみのスキンシップだった。

 もちろん、ほかの子がいるときは、遠慮している。そこがセーラとの違いだろう。



 「真白ちゃん、お願い…ケロ」

 「はーいっ」



 真白が、中央のイスに腰を下ろすと、目の前に、ホログラム状の画面が開いた。


 ぴっぴっぴっぴっぽっ、ぴっぷっぽっ……


 真白が、何かを打ち込みはじめた。目にも止まらぬ速さだ。


 ぴっ…ぽっ………、


 …………


 ちーん!

 

 「おお、開いた…ケロ」

 「開いた開いた…ケロ」


 ぱちぱちぱちぱち…


 五匹のカエルさんが、そろって、拍手している。

 なごやかな雰囲気だった。



 すると、


 

 『こちら、スフレ帝国ギルド…、開通おめでとう…ケロ』

 『こちら、サバラン王国…、おめでとう…ケロ』

 『こちら、エッグ艦橋…、音声はクリアか…ウサ』

 あちこちから、接続のお祝いの言葉が、送られてきた。



 ほかの冒険者ギルドの地下でも、カエルさんたちは、すでに常駐している。

 何かすることでも、あるのだろうか……、ジュンは首をかしげていたが、彼のネットワーク通信網は、異世界を包囲しようとしていた。


 別に、ジュンには『せかいせいふく』など、興味も関心もないが、ただ、いろいろ便利になるのは確かだった。


 

 それに、なにより、



 カエルさんたちが、楽しそうにしている。

 楽しいのは、なによりだ。ジュンは、そう思った。

 オレたちは、楽しむために、生きているのだから…




 こうして、プーディン王国での、ジュンのお仕事のひとつがおわった。


 次のお仕事は、学院長に頼まれたものだった。

 まず、ひとを探さなければならない。

 写真の一枚すらないのだ。難航なんこうするのは、目に見えていた。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ