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お嫁さん&魔物さんといっしょに、ムテキな異世界生活  作者: 法蓮奏
ゼリー帝国(カルシウム大陸)編
180/631

第180話 やめたほうがいいかのう

ポイントが、200ちょっとになりました。ありがとうございます。

とても励みになります。なにより、うれしいです(笑)


 「いよいよ、来やがったぜ兄弟(ブラザー)

 「じゃあ、いっちょうやろうぜ兄弟(ブラザー)

 

 「気をつけて行くんじゃぞ」


 ワイバーンたちが、『塔』から飛び立った。



 ここは、まもなく、①元海賊の民、②ミルフィーユ、③スフレ賢帝親子、④ランパーク国王親子、ついでに、⑤ゼリー帝国皇帝とじいちゃんたちの『総合リゾート』となる『クレープ湾』である。

 まあ、実際には、漁場であり、釣り場なので『リゾート』と呼ぶのは、おこがましいけれど、たまには、海水浴くらいするだろう……


 もともと隠れ家として使われていたので、入り組んだ海路をくねくねと通過して、ようやく湾にたどりつく。しかし、湾には、とうぜん『入り口』がある。

 すこし、見分けにくくはなっているが、サバラン王国の連中が知らないはずはない。彼らは、あきらめが悪いらしく、いまでも、この湾に入って来ようとしていた。湾内にずらりと並んでいる軍船を取り戻そうとしているのだ。



 

 「な、なんだアレは…」

 「ま、まさか、ワイバーンか!」

 軍船から、驚愕の声が聞こえる。



 きょうは、彼ら『ワイバーン海上警備隊』のデビューの日なのであった。


 ミルフィーユの戦力は、あまりにも『過剰』である。

 しかし、いくらサイクロプスさんでも、海の上を走り回ったりはできない。クマ開発陣がいれば、そのうちできそうな気もするが、おそらく、無駄な機能だろう。


 そこで、


 鳥さんならばっちりだよね、ということになった。

 『適材適所』の配属であった。ワイバーンたちも、ひろびろとした海上を飛び回れるので、まさに、願ったりかなったりだった。


 いちおう、ワイバーンである。

 ミルフィーユでは、炭火焼きのネタのひとつ、という位置づけであったが、そもそも、カテゴリー上は『竜』のなかま。サバランの軍船にとっては、たいへんな脅威きょういであった。



 「撃て、撃て、撃て、撃て、撃て、撃て、撃て……」

 軍船では、かるく、パニックが起きていた。



 ぱーん、ぱーん、ぱーん…

 どっかーん、どっかーん、どっかーん…



 弾の無駄遣いが、始まった。

 しかし、宝くじですら、『当たる人には当たる』のである。おかしなことである。ゆえに、まぐれで、当たることがないともいえない。

 それに、ワイバーンたちには、つい最近、矢をたくさん刺されて、疑似『はりねずみ』化した経験もあった。



 かきん、かきん…

 こーん、こーん…



 「ばかやろう!自分から弾に当たりに行くやつがあるか!兄弟(ブラザー)

 一匹のワイバーンが、急降下しながら、アクロバット飛行で、弾に当たりに行ったのだ。


 「だってよぉ兄弟(ブラザー)…、コレ、すげえ楽しいんだぜ…」

 そういって、海面に落下寸前の砲弾に、体当たりしていた。


 「そ、そうなのか…、兄弟ブラザー…」



 かきん、かきん…

 こーん、こーん…



 「うっひょー!こりゃいいぜ!兄弟ブラザー


 トーリィほどの『たくみ』が育てても、しょせんは、『トリあたま』である。『ワイバーン海上警備隊』の限界であった。

 おわかりかとは思うが、彼らの首には、クマさん新開発の『シールド発生装置』が装備されていたのである。砲弾など、パチンコ玉以下であった。



 しかし、


 

 クレープ湾には…、

 『自分から必死で弾に当たりにいく、気の狂ったワイバーンがいる』

 

 理解不能なものほど、人間にとって恐ろしいものはない。

 クレープ湾の『ワイバーン海上警備隊』は、その奇行きこうによって、船乗りたちから、おおいに恐れられることとなった。




 

 「こまったもんじゃのう…」

 「育て方を間違ったかのう…」

 

 トーリィじいさんが、煎茶せんちゃをすすりながら、つぶやいた。

 

 眼下には、奇声きせいをあげながら、砲弾に体当りする『子どもたち(ワイバーン)』が見える。




 ジュンたちが、急遽きゅうきょ、建造してくれた『塔』の畳敷たたみじきのへやからは、広い海を一望いちぼうすることができた。


 「なにか、新しい趣味でも始めるかのう……」

 トーリィじいさんは、ジュンからもらった日本茶に、舌鼓したつづみをうちながら、『子どもたち(ワイバーン)』とともに、第二の人生を歩み始めようとしていた。



 「再婚は……」



 じいさんは、かすかな痛みを感じて、頭に手をやった。

 そこには、ジュンの治癒魔法をもってしても、治せなかった『ヒール跡』が残っている。




 「…やめたほうがいいかのう」




 空は、晴れ渡り、雲ひとつ見当たらなかった。

 デビューの日にふさわしい、晴天であった。 





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