第18話 神改造のワンボックスカー
前回が、大半、説明だったので、続けて投稿します。
ひとつのまとめたらよかったかもしれません。
「で、でも…、大司教さま…」
いくら馬車を飛ばしても、二日や三日で行ける距離ではない。
かりに間に合ったとしても…、
「わたしには、それほどの数の魔物を退ける力はありません…」
「ああ、さすがに、オレでもきつい。あそこじゃあ、『魔物の森』からいくらでも湧いてきやがるからな」
勇者ですら、ためらうとは…。
いや、本来は『数』で対抗する必要があるのかもしれない。
そもそも、派遣された王国軍が少なすぎるのだろう。
重苦しい沈黙が続いた。
「ナニ言ってんの。たかが魔物でしょ!ジュンくんが行ったら、魔物なんてみんなきっと逃げ出しちゃうよ!」
あっけらかんとしたちび女神の声が、大聖堂に響いた。
女神セーラが、新コスチュームでちいさな胸を張っている。
さすがに白レオタードでは連れて歩けないので、着替えさせたのだ。
「ライムも、そう思いますニャ。辺境の街に、ドラゴンみたいな強大な魔力が現れたら…と想像してもらえればわかるはずニャ」
「やっぱり…。きのうの、とんでもない魔力の波動は、使徒さまだったのかい」
あきれたような顔で、ばあちゃんが言った。
「老人には、なかなかきついものがあるさね。もうすこし自重してほしいもんだね」
「いや、あれは、おれでもけっこうきつかった…」
「おや、勇者さまでもかい…」
「ああ、年には関係ねえよ。たしかに、自重は必要だな…」
ほんとうに…と、皆でオレをちらちら見ながら、うなずきはじめた。
なんでココで、オレがディスられねばならんのか…
さすがに、申し訳ないと思ったのか。
「あれは、わたしが思わず抱きついてしまったせいなんです」
聖女セシリアが、オレをかばってくれた。
だが…
「聖女セシリアの、ちっちゃなおっ○いを押しつけられたくらいで昇天しちゃうなんて!ジュン君ってば、情けないにもほどがあるよ!」
さらにスモールなバストの持ち主が、爆弾発言してくれたお陰で台無しになった。
そもそも、こいつは、どこから見ていたのだろう。
オレは、女神の底知れない力をはじめて思い知った。
「でも、どうやってミルフィール領まで行けば…」
セーラには、馬車の手配すら禁じられている。
「馬車は、おれたちが用意してもいいが。…それよりも、お前の家の一階に車庫があったが、自動車もあるのか?」
ケンイチさんが、尋ねてきた。
「ああ、そうでしたニャ…」
ライムが手をぽんと叩いた。
「ジュンしゃまのお車は、大神さまたちがいろいろいじって遊ん…、け、研究してましたニャ!」
神さまたちは、オレが天界で特訓していた間。
オレんちの自動車を勝手に改造して遊んでいたのか。
「男神のロマン!とか言って、魔改…、か、神改造されてましたニャ」
そんな危険なモノに、乗れるのだろうか?
「でも、オレ、免許もってませんよ」
いちおう牽制してみた。
「免許はオレがもってるが、お前…。信号も標識も、そもそも道交法もない世界で免許が必要だと思ってんのか?」
言われてみれば、そのとおりだった。
それに…
「どうせ、オートマ車だろう。そんなら、セシリアでも運転できるんじゃねえか?」
「え、わたしもですか?」
聖女セシリアまで、うれしそうに話にのってしまった。
まあ、こんな経緯で、オレたちの異世界ドライブは始まった。
大司教のばあちゃんにも見せてやろう…ということで、教会前からわが家のワンボックスカーで出発した。
とうぜんのことながら。
見たこともない『走る鉄の箱』で、王都は騒然となった。
さっきは皆で、オレに自重を迫ったはずなのに…