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お嫁さん&魔物さんといっしょに、ムテキな異世界生活  作者: 法蓮奏
ゼリー帝国(カルシウム大陸)編
171/631

第171話 戦闘開始…クマ

ブクマークが60ちょっとになりました。とてもうれしいです。ほんとうにありがとうございます。

すこし、長めなので、きょうの投稿は、この一回だけになると思います。


 オレは、いま、ゼリー帝国を出て、やたらとだだっ広い平原を、てくてく歩いていた。


 ときおり、さわやかな風が、吹き抜ける。

 じつに気持ちのいい朝だった。


 平原には、街道が伸びている。

 ふだんは、ここを帝国商人たちの馬車が行き交うそうだ。


 今朝は、商人たちの馬車の姿は見えない。



 …………



 それはそうだろう。


 いま、オレのまわりには、自称『盗賊』とやらが、ぞくぞくと集まってきているのだから。




 ********************




 ひさしぶりに、時間はさかのぼる。


 ゼリー帝国は、じつは、サバラン王国の隣の国だ。

 隣と聞くと、まるで、近くにあるような気がするが、そうとは限らない。険しい山岳地帯を挟んでいるからだ。

 だから、サバラン王国から、ゼリー帝国へと移動するには、この山々を迂回うかいしなければならなかった。


 オレたちが、サバラン王国に、殴り込みをかけてから、すでに、一週間ほど経過していた。一週間という時間が、長いのか短いのかは別としても、かの国で起きた事件の『情報』が伝わるだけならば、十分な時間だった。




 「どれも、これも、信じがたい話ばかりなのだがね…」

 イケメンおっさんのアイロス伯爵が、話し始めた。

 まず、ジュン殿は、サバラン王国と……

 「『一戦交いっせんまじえた』ということで、よろしいか?」



 ………



 サバラン王国とは、山を挟んでいるとはいえ、隣国だ。

 ごまかしきれるものでもないだろう。


 「あのときは、ちょっと、()()()()をする必要があって…」

 まあ、じっさいに、話したのは、別の人たちだったんですけどね。

 そんなふうに、言葉をにごした。嘘は言っていない。



 すると、



 ルネちゃんが、きゅうに抱きついてきた。

 「あれは、怖かった」


 「怖かった?」

 オレは、聞き返した。

 誰が、この子を怖がらせたのだろうか。許せないやつだ。

 

 「君の声が、聞こえたのだよ」

 「『責任者出てこい』だったか?」

 あの美人のギルマスが、笑って教えてくれた。



 ……くっ



 オレだったとは。


 オレは、リュックから取り出したチョコで、ルネちゃんの機嫌をとった。


 

 …………



 伯爵は、話を続けた。

 「空を覆うほどの卵型の船、ドラゴンのゴーレム、サイクロプスの軍団、巨大なケルベロス……」

 どれも、馬鹿げた話ばかりなのだが…

 「昨夜話していた『魔物の家族』とは、この『災害級の魔物』たちのことかね?」



 たしかに、聞いただけで、めまいがするような話だった。

 「まあ……、大きい順だと、そうですかね……」

 「でも、そんなに大きいのは、半分くらいですよ」

 あとは、ウサギさんとか、カエルさんとかだからな。


 「半分って…、それだけで五百体になってしまうだろう!」

 伯爵が、コーフン気味に言った。

 大型の魔物が好きなのだろうか。


 「……まあ、そうなりますね」

 そういえば、ゼリー帝国のダンジョンも、オレたちの『仲間』というなら、また、増えるんじゃないだろうか。お小遣こづかいを、かせいであげないと…



 ………… 



 「…サバランのギルドの連中は」

 ここで、ふたたび、美人ギルマスがたずねてきた。

 「…みんな、無事なのだろうか」

 さっきとは、うってかわって、不安そうな表情だった。きっと、心配しているのだろう。色っぽいお姉さんが、少女のように見えた。

 

 「ええ、みなさん、元気ですよ」

 「ぜんいん、ミルフィーユでのんびりされますよ」

 ご案内しますよ。温泉もありますから。

 

 「…そ、そうか。ぜひ頼む」

 美人ギルマスは、心底ほっとしたような顔をした。

 あとで聞いた話では、サバランのギルマスとは、魔法学院からの親友だそうだ。サバランのギルマスは、エルフのイザベルさんの妹さんだ。



 ギルマスとの話も一段落すると、いよいよ本題に入った。


 「これは、帝国とギルドの共同の依頼となるのだが……」



 

 ************************



 

 「ジュンとかいうのは、お前か?」

 馬上から、偉そうにたずねてきた。


 たしかに、薄汚い格好はしている。しかし、服装だけだ。

 馬も、武装も、どうみても兵士のものだった。


 そのうえ、どいつもこいつも、おそろいの装備だ。

 偽装も、まともにできない連中(アホ)らしい。


 オレが何も言わないでいると、また、勝手にしゃべりだした。



 「『エリクサー』を出せ!」

 「ああ、ほかにも、『鉄の走る箱』とやらもあるのだろう。すべて出せ!」

 まあ、おとなしく出しても、命はもらうがな。

 そういって、ニヤニヤし始めた。



 数百人はいるだろうか。

 広い平原いっぱいに、自称『盗賊』が群がっていた。

 オレのことを『ダンジョン攻略者』とだけ知って、頭数あたまかずそろえてきたのだろう。



 『まもなく、最後尾の位置把握が終わります…ウサ』

 耳につけたイヤホンから、連絡が入った。



 じゃらり…

 


 オレは、ローブのポケットから、金色の光を放つ小瓶こびんを取り出した。


 一本、二本、三本、四本、五本……


 金色の光が、地面に、ゆっくりと並べられてゆく。

 

 「「「「「「「「「おおおーーーーっ!これが!」」」」」」」」」」」

 まわりの自称『盗賊』たちが、どよめいた。



 『…最後尾、把握完了…』

 『囲い込み開始します…ウサ』



 そのしゅんかん、



 どっかーーーーーーーーーーーーーーーーん!

 

 

 ステルスを解除したドラゴンが、急降下してきた。



 「「「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」」」」

 数百人の『盗賊』が、空を見上げて、言葉を失った。



 高速で旋回するドラゴンの周りの空間がゆがむ。

 その歪みの中から、巨大な盾を握ったサイクロプスたちが落下してきた。


 

 どすーーーーーーーーーーーーーーーーん!

 どすーーーーーーーーーーーーーーーーん!

 どすーーーーーーーーーーーーーーーーん!

 


 弧を描いて旋回するドラゴンに後には、つぎつぎと、サイクロプスたちの盾によるバリケードが築かれていく。



 『囲い込み完了…ウサ』


 すると、真白の声が聞こえてきた。


 『さらに後ろに、指揮官がいるかもしれない。調べてちょうだい』

 『らじゃー…ウサ』



 こんどは、後ろから、



 セーラたちの声が聞こえてきた。

 「いよいよ、カミーユちゃんのデビュー戦だね!」

 「練習したとおりにやれば、大丈夫ニャ」


 「……イエッサー」

 カミーユちゃんがうなずいた。

 妙な返事を教え込んだらしい。あとで、直してやらないと…


 

 魔女っ子スタイルのカミーユが、先端に大きなハートのついた杖を構えた。

 ちいさな体に、急速に、魔力が集まる。

 いくらか、金色の光が混じっているのは、『エリクサー』からの魔力だろうか。

 特別製の身体(ボディー)は、桁違けたちがいの魔力で満たされてゆく。


 それは、素人しろうとにも、はっきりと感知できるレベルだ。

 

 「なんだ、この魔力は!」

 「何が、起きている!」

 「まさか、魔王なのか!」

 

 いや、魔王はちょっと、大げさだと思う。


 カミーユちゃんが魔法を発動する。

 オレ以外では、カミーユにしか使えない魔法だ。


 『空間魔法…』


 『転移ゲート、展開』


 オレたちの周りに、いくつも魔法陣が、つぎつぎと描かれていく。

 

 そして、


 八つの魔法陣が、オレたちを囲み終わった時、それぞれのゲートから魔物さんたちが、次々と飛び出してきた。



 「ああ、これでやっと、肩こりから解放される…クマ」

 「やっぱり、デスクワークは、腰にくる…ケロ」

 「ずっと、座りっぱなしだったからね…ウサ」


 

 そうなのだ。

 彼らは、主に、研究職であり、オペレータだ。

 それで、さいきん、けっこう、肩こりや腰痛など、とにかく、ストレスがたまっていたのだ。

 

 

 「ひとり、10人まで…ウサ」

 「ズルは、だめ…ケロ」

 「わかってる…クマ」



 「「「じゃあ、戦闘開始…クマ、ケロ、ウサ」」」

 



 

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