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お嫁さん&魔物さんといっしょに、ムテキな異世界生活  作者: 法蓮奏
ゼリー帝国(カルシウム大陸)編
169/631

第169話 おひさしぶりね

短いですけど、ブックマークや評価をつけてくださった方が、また、ちょっとだけ増えたので、調子に乗って、書いてみました(笑)。ほんとうに、ありがとうございました。



 じいちゃんが、小瓶こびんの真っ赤なリボンを解いたとき、それは始まった。



 金色の液体は、金色の煙となって、じいちゃんの体をおおった。

 それから、じいちゃんから離れると、ニンゲンの形を取り始めた。


 「おお…、おまえは……」

 

 それは、うつくしい女の姿になった。

 じいちゃんの眼の前でふわふわと浮かんいる。


 「あなた、おひさしぶりね…」

 やさしい声だった。

 「お元気……そうには見えないわね。また、変なものでも食べたのかしら?」

 

 ジジイは、さり気なく目をそらした。


 ……ほんとに食ったのか、ジジイ。


 ルネちゃんは、その若い女の姿を見て、すぐに祖母と気づいたらしい。不思議なことだった。


 「ルネのせいなのだ。おばあさま…」

 おじいさまは、やめなさいと言ったのだ。

 「そういって、『毒味』と言って、先におじいさまが食べたら…」

 そこまで言うと、泣き出してしまった。思い出したのだろう。


 それにしても、


 『毒味役』などいくらでもいるだろうに。

 よほど、食い意地が張ってるんだろうか。



 …………



 ………… 



 じいちゃんと、その美しい女は、しばらく言葉をわしていた。

 

 「若い頃の、お前の姿を、もう一度見られるなんて……」

 じいちゃんの目に、涙が浮かんでいる。


 「わしは、もう、なんも、思い残すことはない…」

 「さあ、わしを天にしておくれ……」

 そういって、すがすがしい顔で、女に両手をのばした。



 「お、おじいさまっ!」

 ルネちゃんが、いっそう泣き出した。


 「宰相さいしょうさまっ!」

 イケメン中年まで、あわてて止めに入っていた。

 さっきまで、喉元のどもとに、剣をつきつけてたのに…



 「あなた…」

 うつくしい女が、すこしきつい口調で言った。

 「冗談はほどほどにしなさい…」

 ルネが泣いてるじゃないの。


 すると、


 ジジイが、笑いながら言った。

 「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ…、すまんのう、ルネ」

 「ちょっと、場を盛り上げようと思ってのう…」



 「「「「「「「「盛り上がるかぁーーーー!」」」」」」」」」」

 さすがに、みんな怒っていた。

 

 

 …………

 


 …………



 『エリクサー』の不思議な幻想も、そろそろ終わりを迎えるようだった。


 じいちゃんは、名残惜なごりおしそうに、女の頬に触れていた。

 「ああ、わかったよ……、待っていておくれ……」

 そして、手を離すと、声を振りしぼるように、そう言った。

 


 うつくしい女は、もう一度やさしく微笑むと、金色の光へと姿を変え、じいちゃんの胸のあたりに、すうっと入っていった。


 きゅうに、じいちゃんの全身から、どす黒いもやが立ち上る。

 しかし、その黒いもやは、つぎつぎと光の粒子に変わり、そして、消えていった。


 

 金の光が、すべて消えてしまったとき、さきほどまで、全身を覆っていた黄疸おうだんもすべて消えて、肌もつやつやになったじいちゃんが、そこにはいた。

 

 『エリクサー』の治癒ちゆ力は、本物だった。

 まあ、いろいろと、首をかしげたくなることもあったが…



 「お、おじいさま…」

 ルネちゃんがかけよって、じいちゃんに抱きついた。

 

 じいちゃんは、ルネちゃんの頭をやさしくでてはいたが、どこか物思いにふけっているようにも見えた。



 …………


 …………


 こうして、


 『皇帝ルネちゃんと薬草をさがそうクエスト』は、無事に終了した。



 …………



 ああ…



 もちろん、

 


 そのあと、まもなく、駆け込んできた大男によって、イケメン中年の娘が、すっかり元気になったことも、付け加えておかないといけないだろう。


 それから、


 ルネちゃんによって、罪を許された大男が、部屋の床を雑巾ぞうきんがけしていたことも……


 

  

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