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お嫁さん&魔物さんといっしょに、ムテキな異世界生活  作者: 法蓮奏
ゼリー帝国(カルシウム大陸)編
163/631

第163話 伝説のエリクサー


 

 「それじゃあ、ナニかい…」

 「そのじいさまのために、薬草を探しにきたのかい?」

 キツネっ子は、念をおすように尋ねた。


 「そうなのだ」

 「だが、みつからんのだ」

 ルネちゃんは、困り顔で答えている。

 

 「ちなみに、どんな薬草だい?」

 尋ねながら、オレに皿を差し出した。

 おかわりだろうか。

 きれいに盛って、福神漬けも山盛りえようとしたら、細い目でにらまれた。

 やはり、ちびっ子には、ハードルが高いのだろうか。

 

 「なにやら、金色の小さな花が、さきっちょに生えているらしいのだ」

 近くにあった薬草を手にとって、説明している。


 「ああ…、やっぱり、アレかい…」

 もごもごしながら、うなずいている。

 見当はついていたらしい。



 それは、

 

 「エリ(くさ)だね」


 聞いたことがあるような無いような名前だった。


 「アレでいいなら、いくらでもあげるよ」


 ただ、


 「ちょっとだけ、頼みをきいてくれないかい?」

 そう言いながら、もともと細い目をいっそう細めた。




 いま、オレたちは、ダンジョンの最下層に来ていた。

 結局、15階層から直接、転移してきた。

 5階層から15階層の魔物たちは、やはり、さらに下の階層に逃げ込んできているそうだ。


 「これ以上は、勘弁しとくれよ」


 じつは、さきほども、魔物が大挙して、下層に降りてきたので、困って様子を見に来ていたらしい。


 

 というわけで、



 オレは、いま、「エリ草」獲得のためのクエストに取り組んでいた。

 コレは、オレの苦手な分野だった。

 元聖女のイレーヌに来てもらえたら、楽なのだが…


 オレは、鼻歌を歌いながら、中腰になって、薬草を刈り取っている、キツネっ子のお尻に目をやった。

 あいかわらず、『パ○ツ』というものを装着していない。


 この状況下において、お嫁さんに来てもらうのは、非常にまずいものがあった。

 もちろん、こころに、やましいところはない。

 しかし、客観的な事実というものは、時として、言論を封殺する。

 

 『ノー○ン_キツネっ子』という現物を前にしては、オレの百万言の弁明も無意味に終わる可能性が、きわめて高かった。

 ことは、秘密裏に完遂する必要があった。


 

 …………



 「おーい、できたぞー」

 準備は、整った。

 オレは、ちびっ子ふたりを呼んだ。


 「ほう、これはまた…」

 キツネっ子は、テーブルに駆け寄るなり、うれしそうな顔で、皿を覗き込んでいる。

 

 いま、目の前には、


 ①『エリ草』の、『おひたし』

 ②『エリ草』の、『炒めもの』

 ③『エリ草』の、『天ぷら』

 ④『エリ草ごはん』


 …が並んでいる。


 一般的な男の料理としては、こんなものだろう。


 もちろん、キツネっ子が、毎日、食べている『エリ草サラダ』もある。

 これには、数種類のドレッシングと、マヨネーズと、ポン酢を用意してある。

 こっちは、クローゼットから品物を取り出しただけだ。


 まあ、ここまでは、いいのだが、


 「ううっ…」

 ルネちゃんが、目を細めてうなった。


 やはりな…


 『良薬、口に苦し』なのだ。

 オトナならば、苦味のきいた料理も、たまには美味しいと感じるかもしれない。

 ちびっ子では、とうてい無理だった。



 キツネっ子のほうは、

 

 「うまいうまい!」


 喜んでいるが、尻尾を見ると、低速でゆらゆらしている。

 オレの気を使っているのだろうが、尻尾は嘘をつけないらしい。


 たしかに、今までは、『エリ草サラダ』に『塩』をふりかけて食べていたのだろう。それと比べれば、天地の差だ。

 しかし、『カレーライス』を一度でも、食べてしまったのだ。


 もう、もとには戻れないだろう。


 思えば、罪作りなことをしてしまったものだ。

 野生動物に接するときには、先を見通した配慮が必要だった。

 知識としては、知っていたのだが……



 オレが考え込んでいると、


 「じゃあ、こんどは、アタシの番だね」

 そういって、『エリ草』を取り出した。



 ぐいーーーーーーん

 ぐいん

 ぐいいいいーーーん


 キツネっ子が、『エリ草』をジューサーにかけていた。


 どろどろどろ…


 それを、器用にも、ちいさな瓶に移している。


 それは、


 小瓶に入った緑のどろどろだった。

 まさか、コレが、伝説の『エリクサー』なのか?

 

 不審に思っていると、


 今度は、ハサミを取り出した。

 

 ぱちんっ


 きれいな金色の毛並みの尻尾から、一本だけ短く、切り取っている。


 「ま、まさかっ!」


 まさしく、奇跡だった。



 さきの、小瓶に、その毛を一本入れると、


 きらーーーーーーーーーーん


 小瓶が、あたり一面に、金色こんじきの光を放った。

 ゆっくりと、その激しい光が、おさまってゆく。


 あとには、金色に光輝く小瓶があった。

 さっきまで、緑色でどろどろしていた液体は、淡い金色の光を放つ透明の液体に変わっていた。


 「おおっ!」

 ルネちゃんが、目をこすりながら感動している。


 なるほど、


 この金色の光を放ち続ける液体ならば、『伝説のエリクサー』と言われても納得がいく。


 これならば、あらゆる怪我も病も、たちどころに治癒してしまうのかもしれない。

 そんな気さえした。


 しかし、オレは、思った。


 どんな怪我も病も治ったとしても、『エキノコックス』に感染しているのではないのだろうか。


 潜伏期間が、あまりにも長いので、バレないかもしれないが…



 キツネっ子は、そんなオレの思いもよそに、仕上げに、真っ赤なかわいいリボンを小瓶にきゅっと結んだ。


 『伝説のエリクサー』は、金色の光と、真っ赤なリボンで、クリスマスプレゼントぽくなっていた。





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