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お嫁さん&魔物さんといっしょに、ムテキな異世界生活  作者: 法蓮奏
ゼリー帝国(カルシウム大陸)編
156/631

第156話 お買い物がしたいらしい


 「新規登録の方ね」

 「この登録用紙に、必要事項を記入してね」

 ちょっとタメ口のお姉さんだった。


 いや、制服のせいで、お姉さんに見えるだけで、じつは、オレと同じくらいなのかもしれない。

 それで、フレンドリーなのだろうか…


 用紙をみると、ほんとうに、必須ひっすなのは、名前と年齢くらいだった。

 アバウトすぎないだろうか、コレ。  

 

 あとは、履歴書なんかでよくある、『特技』みたいな感じだ。書いてもしかたがないので、空欄のまま出した。



 女の子は、用紙をちらりとみると、

 「あんまり書いてないけど、ちょっとは書いた方が、仕事が見つかりやすいよ」

 そんな職安のようなアドバイスをしてくれた。


 オレは、衛兵さんのことばを思い出して、

 「ギルドカードを、身分証がわりに使いだけだから…」

 そんな言い訳をした。

 少なくとも、今のところは、ギルドの依頼を受けるつもりはないのだ。


 


 「これが、ギルドカードだよ」

 「無料なのは、初回だけで、再発行は、お金がかかるからね。なくさないようにね」

 そう言って、ウインクした顔は、なかなかかわいい。

 

 サバランの冒険者ギルドの職員くらいしか、知らないけど、やはり、容姿とかも採用基準に入っているのだろうか。

 まわりを見回しても、きれいな子が多かった。




 ちなみに、サバランのギルドの女の子たちは、本部からの連絡待ちとやらで、いまだに、第三城壁内の宿泊施設でくつろいでいる。

 ギルマスたちが、姉のイザベルさんといっしょに居たくて、適当なことを言ってるのかもしれないけど…。


 オレは、異世界に来て、初めて手にした『必須アイテム』に、思わずほおゆるんでしまった。

 やはり、異世界生活には、コレ持っていないと……


 「ほんとうに、説明は要らないの?」

 すこし残念そうな顔で、たずねてきた。

 すこし頭をかしげたせいか、肩で切りそろえた金髪が、さらりと流れた。


 「これ、読んだらわかるんですよね」

 オレは、念を押した。

 

 「もちろん、そうだけど…」

 何やら、心配そうにしている。


 「なら、大丈夫」

 たいがいのことは、ラノベで読んでるから大丈夫だろう。たぶん…

 

 オレは、ペコリと頭を下げて、カウンターの横一面に貼られている依頼を、眺めに行った。





 **********************



 いつものように、時間はさかのぼる。



 「お買い物がしたい?」

 オレは、思わず、聞き返した。


 「はい」

 千春が、答えた。


 目の前には、ダンジョン美少女が、五人、勢揃せいぞろいしていた。

 四人は、髪型が違うだけで、同じ顔をしている。

 とにかく、整った顔立ちは、人間離れした美しさがあって、つい、まじまじと見つめてしまう。


 そのうえ、オレへのサービスのつもりなのだろうか。

 かなり、すその短いワンピースを、おそろいで着ている。


 なので、ちょっと、体を動かすだけで、ふともものあたりに、淡い色彩の下着が、ちらちらと見えていた。


 将来のお嫁さんたちの、心優しい気配りだろうか。

 さりげない日常の幸福が、ここにはあった…… 

 

 「サイクロプスや、ケルベロスさんたちが、帝都で買い物したことを、話してたからだと思います」


 魔物さんたちが、みんな、うらやましがったようだ。

 まあ、気持ちはわからないでもない。ちっちゃい子なんか、そうだし…


 それにしても、サイクロプスさんが、入れるような巨大な店舗てんぽってあるのだろうか。

 まあ、じっさいに買い物をしているのだし、露天ろてんのような店なのかもしれない。


 

 話はわかった……



 魔物さんたちは、ミルフィーユの第三城門からはじまって、ほんとうによく働いてくれている。

 ここは、ひとつ、マスターとして、お小遣いくらいはあげたいところだ。


 しかし、うちの魔物さんは、千匹はいる。

 一匹に、金貨一枚配るとしても、千枚は必要だ。


 オレは、この世界のお金とは、無縁だ。

 そもそも、必要なものはクローゼットにあるのだ。

 だから、お金を使う場面がないのだ。


 それに、ケンイチさんからもらった例の『ポシェット』には、かなりのお金が入っている。


 当初は、暗部の人たちに、アイリス探しの報酬として、支払う予定だったが、ずっと、彼らは、ミルフィーユのために仕事をしている。

 だから、領主のアルベールさんが払ってくれているのだ。


 あの『ポシェット』をひっくり返せば、そのくらいの金貨は出てくると思う。



 それはそうなのだが…



 オレのために、いつも頑張ってくれている魔物さんたちに、他人ひとからもらったお金を配るのも不甲斐ふがいない。



 ……ということで、



 オレは、急遽きゅうきょ出稼でかせぎに出ることにしたのだ。


 できるだけ、自分の力で、お金を稼ぎたい。

 ライムにすら、同行はひかえてもらった。


 ただ、ライムもセーラも、いまは、カミーユちゃんに魔法を教えるのが楽しくてしかたがないらしい。

 あの子の身体は、『特別製』だからな。

 あのふたり?が夢中になって、教えたくなるのも無理はない。




 *********************




 オレには、掲示板に貼られた依頼から、仕事を探すつもりはなかった。


 金貨千枚である。

 ちまちまやっていても、まるとは思えない。


 それに、オレには、『冒険者としての致命的な欠陥』があった。


 『魔物の討伐ができない』のである。

 

 こればかりは、どうしようもない。

 魔物に遭遇しなければ、退治もできない。


 ドラゴンクラスなら、きっと、大丈夫だろうと思っていたが、結局、あの『古代龍』も逃げる気まんまんだった。


 正直言って、オレも、魔物が襲い掛かってくるなら、退治する気にもなる。


 しかし、必死で逃げる魔物を、オレが、後ろから襲いかかるのは、何か違う気がした。




 *******************





 「エリクサー?」

 オレは、聞き返した。


 「はい」

 「一攫千金いっかくせんきんを狙うなら、やはり、コレですわ」

 千夏が、自信満々に言った。


 この五人がそろっているのだ。

 市場調査は、すでに、完璧であるに違いなかった。


 なにしろ、いまは、『ステルスハッチ隊』がいるのだ。

 王族の浮気調査ですら、かんたんにできるだろう。



 「ミルフィーユの商売の邪魔にならない?」

 ミルフィーユは、魔石とポーションの産地だ。

 でも、まあ、とうぜん、確認済みだろう。

 聞くまでもないのだが、なんとなく、たずねた。


 「大丈夫だよ。そもそも、エリクサーなんて扱えるわけがないって…」

 千冬が、答えてくれた。

 この世界でも、いわゆる『伝説級』の代物しろものだった。

 商品にラインナップできるはずがないらしい。



 「……で、どこにいけばいいの?」

 いまさら、この完璧美少女たちに、『そんなものほんとうにあるの』なんて尋ねてもしかたがない。


 「…ここ、ですの」

 千秋が、モニターに映し出された地図を指差した。


 「……ゼリー帝国」


 あいかわらず、微妙な名前の国だった。





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