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第148話 ドラゴンにも効くとは…

ふたつ目の投稿です。


 オレは、いまにも、飛び立とうとしている古代龍の……足を踏みつけた。


 ぐぎゃおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーっ!


 古代龍の、耳をつんざくような咆哮ほうこうが、城内を駆け巡る。

 それは、壁をくだくほどに、空気を揺らした。

 

 「は、離せぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーー!」


 そのまま踏んでも、ただ、穴が開くだけだ。

 足の裏に、大きめの結界を張って、踏みつけたのだ。


 まさか、ドラゴンにもくとは……。


 この技を教えてくれた、あのジジイに、感謝………しかけたが、やめた。

 まかりまちがって、引導いんどうを渡すことはあっても、感謝することはないだろう。

  

 「効果範囲、設定」

 

 転がって、ひとかたまりになっていた、ぬいぐるみたちが、青い光で包まれた。


 「空間魔法、転移」


 ぬいぐるみ五匹の姿が、いっしゅんで消える。


 そして、痛さで動けなくなっている古代龍の、首のあたりに、出現した。


 ぬいぐるみたちは、あわてて、『水晶玉』に、しがみついた。

 アクセサリーのつもりなのだろうか。

 くさりにつないで、古代龍の首に下げられていたものだった。

 


 その『水晶玉』のなかには、人間の小さな女の子が、封じこまれていた。

 仮死状態なのだろうか、遠目にも、肌が土色になっているのが見える。

 すでに、死んでいるのかもしれない。


 「ひどい……」

 セシリアの頬に、涙がつたった。

 ほかのお嫁さんたちも、似たようなものだった。

 それでも、

 目をそむける子は、ひとりもいなかった。

 

 ぬいぐるみたちが、必死になっても、なかなか『水晶玉』は外れなかった。



「ブレスで、焼き切るのニャ!」

 ライムが、叫んだ。


 「そ、そうか!……クマ」

 「み、みんな、こっちにかたまれ!…クマ」

 

 ぬいぐるみたちが、クマのほうに、するすると移動した。

 

 クマは、『水晶玉』のすぐ上のくさりに、噛み付いた。


 そして、そのまま、


 ごおおおーーーーーーーーーーっ!


 ブレスをいた。もちろん、加減している。


 みるみるうちに、鎖が溶けてゆく。



 ぷつり!


 鎖がちぎれた。


 『水晶玉』と、『ぬいぐるみ』たちが、ばらばらと落下してくる。



 オレは、最後に、もうひと踏みしてから、ジャンプした。

 

 ぐぎゃあああああああーーーーーーーーーーーー!

 古代龍のくせに、うるさいやつだな。



 「効果範囲、再設定」


 『水晶玉』と『ぬいぐるみ』が、青い光で包まれる。


 「重力魔法、軽減」


 がくんっ


 落下速度が、急激に遅くなった。

 木の葉が舞い落ちるような速度だった。



 オレは、飛び上がりざま、途中で、すれ違った『ぬいぐるみ』たちに声をかけた。

 

 「よく、がんばったな」


 『ぬいぐるみ』たちは、親指?を立てて、ニヤリと笑いながら、ひらひらと落下していった。



 ………………



 「空間魔法、結界」


 オレは、自分の拳に、結界を張った。

 このままだと、ただ小さな穴が開くだけなのだ。

 

 結界は、オレの右手を、巨大な拳と化した。

 まあ、大きなボクシンググローブみたいな感じだろうか。



 ………………



 踏まれていた痛みから、ようやく解放された古代龍は、

 いっしゅん飛び立つかのように見えたが、


 自分の顔に向かって、ぐんぐん飛び上がってくるオレを見るなり、


 ブレスに切り替えた。


 炎の古代龍だ。


 口の前に、巨大な炎が、渦巻く。


 それでも、

 

 オレは、いっしゅん早く、古代龍の顔前に到着した。


 目の前が、巨大な炎の渦で、埋め尽くされる。



 オレは、


 大きく結界を張った右手を、


 思い切り、


 たたき込んだ。



 ばきぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーーーーーー!

 

 

 骨がくだける音だろうか。

 もちろん、古代龍のほうのだけど……


 「「「「「「「「「「「あっ」」」」」」」」」」」」」

 

 みんなの声が唱和した。


 古代龍が、ものすごいスピードで、吹き飛んでいった。



 がらがら、ぐわっしゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!



 まず、城壁をぶち破った。



 ばきばきばきばきばきーーーーーーーーーーーーーーっ!



 城壁の向こうの、森の木々をなぎ倒していく。


 くっ…、


 大規模な自然破壊だった。

 胸が、痛んだ。

 オレは、こう見えても、エコロジストなのだ。



 ずっどおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーん



 ようやく、止まったようだ。

 山腹に、めり込んだらしい。

 


 オレは、ほっとため息をついた。

 あのまま、自然破壊が続いていたら……と思うとぞっとした。

 オレは、こう見えても、とても気が小さいのだ。

 

 「ジュンくん、ジュンくん」

 「まるで、ドラゴン○ールみたいだったね!」

 セーラが大喜びしていた。

 

 そこで、ライムが、ドヤ顔で言った。

 「()()()()()()()……ですかニャ」



 ……………


 ……………


 ………ふニャ?

 

 「だ、誰か何か言ってほしいニャ!」

 みんなの沈黙に耐えかねて、ライムが泣きそうになっていた。



 ……………



 オレは、右腕を高くかかげた。

 

 「召喚_メカドラゴン」


 空間がゆがむ。


 「メカドラゴン、さんっ、じょうっ!」

 巨体が、空中で、ポーズをとっていた。


 すぐに、帰還させたくなったが、がまんした。


 「ジュンさま、参りました」

 み手をして、近寄ってきた。


 「アレ…」

 オレは、遠くの山腹に、張り付いている古代龍を指差した。


 「しばらく、押さえておいて…」

 逃がすつもりはないのだ。



 

 …………




 「うううう……む」 

 古代龍は、いっしゅん、意識をなくしていたのか、

 目を覚ましたように、頭を左右にふって、うなっていた。


 それから、


 「はっ!」

 なぐり飛ばされたことを思い出したらしい。

 あわてて、山腹から起き上がって、翼を広げた。


 

 がしぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーん



 その瞬間、頭を地面に沈められた。


 メカドラゴンが、腕組みしながら、古代龍を踏みつけたのだ。


 「すこし、お話しませんかぁ、………古代龍さぁーん」

 メカドラゴンが、ほの暗い笑みを浮かべている。

 やはり、本物に対するコンプレックスがあったのだろうか。


 オレは、さっき、『バチモンのドラゴン』と、心に思ったことを反省した。





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