第144話 見守っているよ
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「みんな!こっち注目だよ!」
千冬が、手をぶんぶん振っている。
「まず、正面の大きなモニターを見て!」
千冬が指差すと、映像が浮かび上がった。
「あれって、クレアちゃんじゃない?」
女の子のひとりが、気づいたようだ。
視点が上にあるらしく、クレアの頭のてっぺんが映っている。
「いま、クレアちゃんの頭の上には、目に見えないけど、魔道具が浮いてるんだ」
クマさんが、今回のために開発した『ステルスドローン』だ。
「「「「「「「「「えええーーー!」」」」」」」」」」」
まあ、驚くのも無理はないだろう。
『光学迷彩』なんて概念はないだろうし、姿を『隠蔽』できる魔法は、かなり上級の魔法のはずだ。
こうやって、魔道具で見張っていて、
「クレアちゃんに、何か起きたときに、すぐにわかるようにしているんだ」
「「「「「「「「「「へーーーーっ!」」」」」」」」」」」
ぶっちゃけ、ストーカーだけど。
この国にいる間は、いわゆる『非常時』だ。
ちょっと、我慢してもらうしかない。
トイレの個室は、上から撮ってもぜんぜん『見えない』って話だけど、ドアの外で待機していてもいいだろう。
もちろん、これは、
「ここにいる女の子、ぜんいんに、配置するからね」
千冬の説明は、続いた。
「そしてね」
こんどは、巨大モニターの下の、ブースを指差した。
たくさんのブースがあり、ウサギの魔物さんが手を振っている。
ウサギの魔物さんたちが、
「みんなを、ひとりずつ、見守ってるからね」
ちなみに、
「みんなを見守ってるウサギさんも、ぜんいん、女の子だから、安心して」
女の子は、生徒会長を入れても、18名だ。
ウサギさんは、数十匹を超えていた。
ウサギさんの前には、ホログラムっぽい、モニターと、タッチパネルがあった。
あれで、常時、監視しているのだろう。もちろん、エッグや『揚陸艇』の中にいるとき以外だろうけど……
ここで、生徒会長が手を挙げた。
「もし、わたしたちに、何かあったら、どうなるのだ?」
いい質問だった。
千冬は、ちょっと考えてから、答えた。
正直言って……、
「狼さんたちで、十分対応できると思う」
ブレスだって撃てるんだし…
でも、ねんのため
「サイクロプスさんと、ケルベロスさんたちが、待機してるの」
いつでも、みんなのところに、『転送』できるようにね。
『転移魔法』は、軍事演習で見せてある。
たぶん、イメージできるだろう。
「すこし、戦力が過剰じゃないのか?」
生徒会長が苦笑していた。
「うん、だから、みんなのこと、絶対守れるから安心して!」
千冬が、自信満々に言った。
女のたちの顔が、ぱっと明るくなった。
「「「「「「「「「ありがとーー!」」」」」」」」
もう、大丈夫なようだ。
エッグ内の改造も、進んでいた。
すでに、『艦橋』や『格納庫』なんかは、別として、
①『我が家が設置されているユニット』
②『魔物さんが、くつろげる居住ユニット』があった。
これに、今回、
③『大人数が宿泊できるホテルユニット』を加えた。
ちょっとした、豪華客船なみにできている。
これなら、貴族の子女でも、じゅうぶん満足できるだろう。
みんな、『人質』にされる危険性は、知っていたのに、オレたちを信じて、来てくれたのだ。
できるだけのことはしないと……。
昼は、新設のレストランで、軽く、サンドイッチとお茶で済ませた。
『交流交歓会』は、もちろん、明日からだ。
なので、午後は、王都見物となった。
いよいよ、監視・護衛体制の本領が発揮される。
王都は、湖から、少し離れていた。
人数だけを言えば、ワンボックカーのお部屋に入りきる。
でも、せっかくなので、景色を眺めながら移動したいだろう。
オレたちは、ふたたび、『揚陸艇』に乗り込んだ。
……………
「楽しみなのじゃ」
「そうですわね」
『揚陸艇』には、すでに、シャルと縦ローズちゃんが、乗り込んでいた。
制服の裾を、なびかせながら、窓から外を覗き込んでいる。
午後からは、お嫁さんたちと合流することになっていた。
縦ローズちゃんは、シャルや、姉のリリアーヌがいるから、来たかったのだろう。
「おお、ジュンくんなのじゃ!」
シャルは、オレに気がつくと、さっそく飛びついてきた。
「お邪魔しておりますわ」
縦ローズちゃんは、ていねいにお辞儀をしている。
抱きついて来てもいいのに……
セシリアたちも、みんな来ていた。
敵対している『軍事国家』とはいえ、まだ見ぬ異国の地だ。ちょっと、観光してみたいとおもうのも無理はない。
『揚陸艇』は、オレのお嫁さんたちと、クラスメートを乗せて、王都に向けて、飛び立った。
空から行くのだ。
もちろん、道なき道をまっすぐに、飛んだ。
それでも、ときおり、街道上を通過することがある。
通過する街道をゆく人々は、『空を飛ぶ鉄の船』を見上げて、立ちすくんでいた。
それでも、シャルや、縦ローズちゃんが、街道のひとたちに、手を振ると、振り返してくれる人もいた。
とくに、子どもは、ぴょんぴょん跳ねて、手を振ってくれた。
オレは、ほっと息をついた。
なにしろ、『揚陸艇』なのだ。
王都を攻撃に来た『新兵器』と思われても、しかたがない。
オレが、力を示したいのは、戦争をしたがるような『偉い連中』だ。
ふつうの庶民を脅したいわけではない。
次からは、外装にも、美少女パ〇チライラストとか描いて、むしろ、目が釘付けになる感じにしたほうがいいのかもしれないと、ふと思った。