第137話 ソチラニマイリマス
《ハッ…、イマ…》
《デテコイ…ト、オッシャイマシタ?》
「えっ…!」
オレの、危険感知センサーが、激しく鳴った…気がした。
「い、いや…、それは…」
「もちろんです!」
「男に二言はありません!出てきてください!」
ジュリアン君が、代わりに、きっぱりと言った。
そうですよね、ジュンさま…
オレを信じ切った、まっすぐな瞳が、まぶしい…
「お、おうっ!」
「も、もちろん…、に、二言はない…」
《ワカリマシタ…デハ、ソチラニ、マイリマス》
『参ります』って、どこから来るんだ?
やっぱり、『ゴーレム』なんでしょうかね、
「どきどきしますね、ジュンさま!」
なにやら、わくわくしている。
そうか……、ジュリアン君、じつは……見たかったんだ…
《ナビ、AI、セイタイモデルニ、イコウ…》
《ノコリ100%……70%……30%……、カンリョウ》
《セイタイモデル、カイトウ…、ノコリ100%…》
《ヘイコウシテ…、ジョウリクセン、シャシュツ…》
《カウントダウン、10…9……5…3…1、シャシュツ…》
…………
…………
しーん…
…………
なにも起きなかった。
…………
…なんだ、コレも、冗談だったのか
ちょっと、ほっとした。
そのときだった。
ずっどおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーん
「こ、これは…!」
「すぐ近くの山だ!……ケロ」
カエルの魔物さんの両手が、タッチパネルを、滑るように操作した。まさに、エキスパートの技だった。
「いま…、画面に出る……ケロ」
びよーーん
巨大なモニターの中央に、山腹が映し出された。
すぐ下に、王城らしき建物が見える。
なんだ、コレは…
巨大モニターには、どこからどうみても、『小型宇宙艇』としか見えない物体が映っていた。
しかも、山腹に、突き刺さっている。
なんで、ふつうに、着陸できないのだろう。
もうすこし、ずれていたら、城に突き刺さっていたのだろうか。
冷たい汗が、背筋を伝った。
ふたたび、さっきの声が聞こえてきた。
《…ジ、ジョウリク…、カ、カクニン》
《…カイトウ、ジョウキョウ、ノコリ…………5%……、カンリョウ》
《ギルド、チカ、オペレーションルームニ……テンソウ…》
…………
「はっ!ジュンしゃま、来ますニャ!」
「ジュンくん、受け止めてあげてっ!」
ライムとセーラが叫んだ。
ぶよーーーーん
オレの目の前の空間が、歪んだ。
オレは、慌てて、両腕を差し出した。
くっ…
軽いけど、腕に重量がかかる。
落としてはまずい…
横抱きに、しっかりと抱きしめた。
ふぅ……、腕にかかる重さが安定した。
なんとか、受けとめられたようだ。
腕のなかには、オレと同い年くらいの女の子が、一糸まとわぬ姿で、抱きかかえられていた。
真っ白で、透き通るような肌をしている。
長い黒髪が、オレのあしもとに、ふわりと垂れた。
オレは、ねんのため、頭のてっぺんから、つま先まで、つぶさに観察して、脳内に記録した。
ま、まあ、このくらいは、役得ってことで…
ゆっくりとひらいた瞼から、瞳の朱がこぼれた。
その瞳には、小さな数字が、絶えず流れ落ちていた。
「あ、ありがとうございマス。ご主人サマ…」
セーラや、四姉妹たちに、近いといえばいいのか、
人とは、かけ離れた美しさをもつ少女だった。