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お嫁さん&魔物さんといっしょに、ムテキな異世界生活  作者: 法蓮奏
サバラン共和国(カルシウム大陸)編
134/631

第134話 もう、このまま行っちゃおう


 【ここからまた、ジュンの視点にもどります】


 大勢の人たちが、オレたちを、見上げていた。


 ほとんどの人たちは、あんぐりと口を開けている。

 叫ぶことも忘れているようだ。



 いま、オレたちは、サバラン共和国の港の上空から、ゆっくりと降下していた。


 眼下に集まった人たちには、まるで、天使のたぐいが、空から舞い降りているように見えるだろう。

 ただ、降下しているのは、オレたちだ。見えたとしても、せいぜい、天使のお友達くらい、だろうか。


 まあ、空を覆う巨大エッグ宇宙船から、降りてくる天使がいたら、まさしくSFの世界だけれど…



 *******************



 すこし時間はさかのぼる。



 サバラン共和国の冒険者ギルドのギルマスたちは、エルフのイザベルさんの妹弟だった。

 

 彼らは、軍部に和平交渉を依頼されてやってきた。


 しかし、彼らの船には、偽装が施され、暗殺部隊が潜んでいた。オレたちを殺して、この巨大エッグを乗っ取るつもりだったらしい。

 そうなったら、とうぜん、ギルマスたちも殺されていたはずだ。まあ、彼らは、まんまとハメられたわけだ。



 彼らから頼まれたことは、ふたつあった。

 

 依頼のひとつは、暗殺部隊の捕縛だった。

 いちおう罠を張って待っていたが、通りかかった魔物さんが、いつのまにか、終わらせていた。


 もうひとつは、冒険者ギルド職員の保護だった。

 ギルマスさえ殺そうとしたのだ。職員を皆殺しにしようとしても、何の不思議もない。

 殺してから、オレたちを犯人に仕立て上げれば、すむことなのだから。



 イザベルさんの肉親なのだ。断るわけにはいかない。


 問題は、どうやって、現地に入るかということだった。

 

 「偽装船を、さらに偽装して港から入っては…?」

 ミノタウロスさんが言った。


 じつは、ミノタウロスさんたちは、あのドワーフの『名工レギンさん』も一目置くほどの、たくみ集団だった。


 皆で釣りに来ていたのか。まわりには、魔物さんたちが大勢いて、話に加わってきたのだ。


 「…それにしても、信じられん」

 エルフのギルマスお姉さん一行は、いまだに、青い顔をしている。

 「魔物が、人間と話すなんて…」


 「ここは、やはり、わたくしの出番でしょう……」

 いつの間にか、ドラゴンも盗撮から帰ってきていた。

 格納庫は、天井が高いので、ドラゴンでも余裕なのだ。

 「まず、荷電粒子砲で、街全体を焼き払って……」


 「却下」


 ギルド職員を保護しに行くのに、街全体を更地さらちにして、どうするのだ。こいつは、ただ撃ちたいだけだろう。


 それでは、


 「『揚陸艇』のステルスモードなど、いかがでしょう…」

 ツインテメイドが、堅実な意見を出した。たしかに、そのあたりが一番よさそうだった。


 しかし、


 オレは、焦っていた。

 はやく、決着をつけたかった。


 理由は、あの、空に浮かんでいる帆船だった。


 「帆船って、トイレついてるんですか?」

 誰にともなく、尋ねた。


 「ふつうは、ないね」 

 まあ、ぶっちゃけ、れ流しだろう。

 エルフのお兄さんが教えてくれた。


 やっぱり…


 いま、上空に積み上げてある帆船は、結界でくるんである。海に浮かんでいないと、自壊するかと思ったからだ。ホントに壊れるのかどうかは、わからない。

 

 つまり、

 

 結界内、あるいは、船内に、垂れ流しにされしまうのだ。

 食料はなくても我慢ができるだろう。

 しかし、排せつだけは、絶対に無理なのだ。

 いわば、人類の限界?


 あの帆船は、ぜんぶ貰うつもりだ。

 ウ〇チまみれにされては、困るのだ。

 

 あとで、捕まえた船員に、掃除させてもいいかもしれない。

 しかし、21世紀の日本人としては、いったん、ウ〇チまみれになったと想像しただけで、なんとなく不快なのだ。


 そんなふうに、オレが焦っているのを見て、セーラがさらっと言った。


 「ジュンくん、ジュンくん…」

 「もう、このまんま、行っちゃえばいいんじゃない」

 きっと、みんなびびって、すぐに降参するよ。


 ………


 …ということで、巨大エッグで乗り込んできたわけだった。


 ただ、コレって、デカすぎるから、かなり遠くからでも気づかれてしまう。

 気づかれないほうがいいに決まっているから、ステルスモードで来た。もちろん、重力制御で浮いているので、エンジン音はない。


 つまり、


 港の上空に、突如、巨大タマゴ宇宙船が、びよーんと出現して、そこから、オレたちが、ひらひらっと舞い降りてきたのだ。

 

 港には、かなりの人が集まっていた。

 しかし、あまりの光景に、みな声を出すのも忘れて、見入っていた。


 「下から、狙い撃ちされるかもしれないぞ」

 降下が、ゆっくりすぎるんじゃないのか…

 エルフのギルマス姉さんが、不安そうに言った。


 「大丈夫です」

 「そのへんにいる、ドラゴンのブレスくらいなら、はじき返せますから…」

 オレは、自信満々に言った。

 まあ、ウチのドラゴンの荷電粒子砲だと、ちょっとやばいかもしれない。


 正直にいえば、オレは、体質なのか。下りのエレベータでも、背筋がひやっして怖いのだ。

 緊急時は、急速降下も、やぶさかではないが、いまは、ゆっくり降りたかった。



 「いやいや、ジュン殿…」

 エルフのお兄さんが言った。

 そのへんに、ドラゴンがいたら、みんな生きていけないよ。


 …なるほど、そういうものか。


 …………


 ふわり…、すたんっ!

 

 そんな他愛もない話をしているうちに、地上に到着した。

 

 着地点も、とうぜん、人で埋まっていたが、蜘蛛くもの子を散らすように、ささっといなくなっていた。


 オレたちは、ゆっくりと冒険者ギルドを目指して歩き始めた。ギルドは目の前だ。



 ささささささーーーーーーっ



 こんども、波をかき分けるように、人々が、ギルドまでの道を開けてくれる。ギルマスがいるから、行先もわかっているのだ。



 おおっ!



 オレは、ちょっと感動していた。


 そもそも、オレは、人混みが苦手なのだ。

 こういう登場のしかたをすれば、人混みを避けられるのか…。まあ、すこし目立ってしまうかもしれないけど…



 こんなふうに、ギャラリーの皆さんが、広く開けてくれた道の真ん中を闊歩かっぽしていると、

 高台の城から、騎士やら兵士やらが、ごちゃごちゃと駆け下りてきた。


 どうやら、間に合ったらしい。


 ただ、また、ドンパチやられて、邪魔されても困る。


 オレは、指を、パチリっと鳴らした。

 もちろん、オレは、ちゃんと鳴らせるので、口で言ったりはしない。


  

 

 

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