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お嫁さん&魔物さんといっしょに、ムテキな異世界生活  作者: 法蓮奏
サバラン共和国(カルシウム大陸)編
133/631

第133話 縁起でもないケロ

わかりにくくなりそうだったので、続けて投稿しました。


 【ここからは、第三者視点になります】



 相談事を終えると、ジュンたちは、ぜんいん、格納庫から出て行った。


 ジュンは、ふだんは、けっぱなしの灯りを、わざわざ落とした。外壁も閉じたので、格納庫は、闇に包まれた。



 どのくらいの時間がたったろうか…



 エルフのギルマスたちが、乗ってきた船の、船底の板が、しずかに持ち上がった。一枚ずつ、ちょうど、ひと一人が出入りできるくらいまで、持ち上がると、そのまま取り外された。

 

 偽装した船底から、黒装束の武装した男たちが、次々とい出てきた。

 

 「外には、誰もおりません」

 偵察の男だろうか。

 小柄な男に、小さな声で伝えた。


 「…では、作戦どおりだ」

 「艦橋を制圧する」

 途中、われらに気づいたものは、女子供だろう、一人残らず始末しろ。


 二十人ほどもいるだろうか。

 男たちは、みな、しずかにうなずいた。




 偵察の男に続いて、船から降りた黒装束の一団は、音もなく壁際に沿って走りだすと、

 さきほど、ジュンたちが出ていった扉の前で止まった。


 「奴らは、この扉から出ていきました」

 再び、偵察の男が、小柄な男に伝えた。

 この男が『かしら』のようだった。


 『かしら』が、手で合図をすると、ひとりの男が、扉に、魔道具を押し当てて、それに耳をつけた。


 「ひとの気配はありません」


 男たちは、さっと左右に分かれた。

 ひとりの男が、ゆっくりと、扉をあける。

  

 通路のようだった。

 左手に、階段がみえる。

 

 「こっちだ」 

 すたすたすたすた………

 黒装束の男たちは、気配を殺して、走り出した。



 そのときだった。



 「なんで、今日に限って、灯りが消えてるんだケロ」

 のんきな声が聞こえてきた。


 念のため、ことわっておくと、この声の主は、ぬいぐるみではない。カエルの魔物さんの声である。


 彼の手には、釣り竿が握られていた。

 格納庫に、釣りをしに来たのだろう。


 「えーと、たしかこのあたりケロ…」

 闇の中で、なにやら、さわさわと壁をさする音がする。


 「おっ、スイッチ発見!…ケロ」

 パチン、という音とともに、通路が明るくなった。



 「ケロ…?」


 「「「「「「「「あ…」」」」」」」」」」



 …………


 

 「やれっ!」

 『かしら』が低い声で、すかさず命令した。


 男たちは、アンティークな銃を構えた。


 ぷすっ!

 ぷすっ!

 ぷすっ!

 ぷすっ!

 ぷすっ!

 

 いってみれば、海軍の特殊部隊である。

 とうぜん、消音器サイレンサー付きだった。


 しょせん、ファンタジーである。

 消音魔道具なんだよ……といえば、誰も文句はいえまい。


 ぱしっ!

 ぱしっ!

 ぱしっ! 

 ぱしっ! 

 ぱしっ!


 …………

 

 硝煙しょうえんの臭いの漂うなかに、肉の焼けるような臭いがまじった。


 …………


 しかし、カエルの魔物さんは、その場に、すっくと立っていた。

 のばした舌には、五発の銃弾が、握られて?いる。


 肉の焼けた臭いは、弾丸をからめとったときに、舌にやけどをしたのだろう。


 びゅんっ!


 カエルの魔物さんが、無造作むぞうさに、その舌を振った。


 ぐさっ!

 ぐさっ!

 ぐさっ!

 ぐさっ!

 ぐさっ!

 

 「「「「「うぐぅっ!」」」」」

 

 銃を撃った男たち五人が、腕を押さえてうずくまった。


 カエルの魔物さんは、得意の舌で、弾丸を超高速で、撃ちだしたようだ。


 右腕を押さえている者もいれば、左腕のものもいる。

 どうやら、引き金を引くのをつぶさに見て、利き腕を撃ちぬいたらしい。見事な舌技?であった。


 「ふっ…」

 カエルの魔物さんが、男たちから、つまらなそうに、目をそらした。


 「雑魚ざこすぎるケロ…」

 「せっかく釣りにきたのに、縁起えんぎでもないケロ…」


 わりと、縁起をかつぐカエルさんだった。



 そこに、



 「なに、楽しそうなことをしてるウサ…」

 ウサギの魔物さんが、ぴょんぴょんやってきた。

 やはり、釣り竿を手にしている。


 「な、なにをしておる。撃てっ!」

 『かしら』が、ほうけている男たちにかつを入れた。


 ぷすっ!

 ぷすっ!

 ぷすっ!

 ぷすっ!

 ぷすっ!

 ぷすっ!

 ぷすっ!

 ぷすっ!

 ぷすっ!

 ぷすっ!


 十発の弾丸が、釣り竿片手の、二匹の魔物に襲い掛かった。


 けっして、むやみに行数を稼ごうとしているわけではない。十人で撃ったので、しかたがないのだ。


 ばしっ!

 ばしっ!

 ばしっ!

 ばしっ!

 ばしっ!

 ばしっ!

 ばしっ!

 ばしっ!

 ばしっ!

 ばしっ!


 …………


 いつの間にか…


 ウサギの魔物さんは、男たちの『背後』に立っていた。

 

 十人ほどの男たちが、つぎつぎと倒れていく。

 悲鳴を上げることすら許さぬ、神速だった。


 「壁を使った『三角飛び』で、銃弾を避けながら…」

 「ワンパンで沈めるとは…さすがだ…ケロ」

 カエルの魔物さんの解説が入った。


 「ふんっ」

 ウサギの魔物さんが、つぶやいた。

 「そっちこそ、よくやるウサ…」

 

 倒れた十人のほかに、さらに五人が腕を押さえてうずくまっている。


 解説しつつも、彼は、舌でキャッチした十発の弾丸で、さらに残りの男たちを、射撃していたのだ。


 「な、なんじゃと…」

 立っているのは、『かしら』ひとりとなった。



 そのとき、また、のんきな声が聞こえてきた。



 「いつまでも、襲って来ねえとおもってたら…」

 こんなところで、油を売ってやがったのか…


 相変わらず、釣り竿を片手にしたエミールが、歩いてきた。後ろには、ジュンたちもいる。


 「おお…、エミールさんも来てたのか、ケロ…」

 「じゃあ、先に行ってるウサ…」


 二匹の魔物は、何事もなかったかのように、鼻歌をうたいながら、格納庫へと入って行った。


 ジュンたちは、この暗殺部隊に気づいて、いちおう、罠を張っていた。


 しかし、たまたま、釣りに来ていた二匹の魔物に、すでに倒されたあとだった。


 

 「こ、降参する…」


 『かしら』の震える声が、通路に響いていた。






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