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お嫁さん&魔物さんといっしょに、ムテキな異世界生活  作者: 法蓮奏
サバラン共和国(カルシウム大陸)編
132/631

第132話 知ってて積んできたのか


 微妙な沈黙の時間を破ったのは、賢帝だった。


 「肉親のことらしいから…」

 「気になるのは、よくわかる」


 しかし、


 「今は、先にやるべきことがあるのではないか?」

 

 「そ、そうだったな……」

 エルフの女性が、苦笑しながら、再び腰を下ろした。


 言ってはみたものの、気持ちの切り替えが利かないのだろう。黙り込んでしまった。

 


 こんどは、オレが、口火をきった。

 「こちらの方たちは……?」


 ああ、そうだな…

 賢帝は、そう言いながら紹介してくれた。


 「サバラン王国の、冒険者ギルドのマスターだ」 

 ああ、いまは、『共和国』と呼ぶんだったか…


 「ギルドマスター?」

 そんなひとが、いったい何の要件で来たのだろう。


 不思議に思っていると、事務官のような人が教えてくれた。よくみると、この人たちもエルフだった。


 「代理だよ…」

 「軍部の連中は、この船と、あの積み上げた軍船をみて、腰をぬかしてしまってね」

 そういって、皮肉な笑みを浮かべている。


 軍船で、意気揚々と出港したまではよかったが、こちらに到着するなり、怖気づいて、中には入れなかったという。

 嘘をついているようには見えない。


 では、やはり、知らないだけだろうか。


 「向こうも、代理。こっちも代理だ」

 「…で、ジュン殿は、どうしたい?」

 賢帝が、オレに尋ねた。

 

 いま、辺境領から、住民のみなさんを連れてきたのですが…

 「街は、文字通り、瓦礫がれきの山になってました」

 そこまで話すと、賢帝ばかりか、エルフの人たちも、表情をけわしくした。


 「幸い、みなさん、軽いけがで済んでいました。治療もおわっています」

 そう、付け足した。


 もちろん、今頃は、ミルフィーユ領で、くつろいでいるだろうが、そんなことは言えない。


 みな、ほっとしたような顔になった。

 まあ、いいひとたちなのだろう。


 「あの瓦礫の山をみて思ったんですけど…」


 オレは、きっぱりと言った。

 「もし、まだ少しでも、戦うつもりがあるなら…」 

 「オレも、徹底的にやるつもりです」


 三人のエルフに、緊張が走った。


 「…まあ、そんな感じで脅しておいてください」

 もちろん、脅しじゃなくて、本気ですけど…


 今のところ、このエルフの人に対して、敵意はないのだ。

 そんなかんじで、すこし、おどけて話した。



 そのとき、のんきな声が聞こえてきた。



 「まあ、そっちは、そのくらいにして、お茶にでもしないかい…」


 三人のエルフが、驚きのあまり、立ちあがった。

 振り向いた先には、お茶のセットをトレーに載せたイザベルさんがいた。


 


 *****************


 

 三人のエルフに、イザベルさんのことを話してよいのか…。

 たしかに、生存の有無を心配しているのなら、教えてあげたい。しかし、うかつなことは言えない。

 そこで、本人に来てもらうことにしたのだ。


 自ら、こうして姿を現したということは、信頼できる肉親なのだろう。


 さきほどの『お耳に、ふーっ』は、イレーヌさんに、この件を頼むためだった。ちょっと、増長してしまったが…



 「安心してくれ。この三人は、まちがいなく、イサベルの肉親だ」

 「もちろん、秘密は守れる連中だ」

 まさか、こんなところで再会するとは、思わなかったがな…


 そんなことを言いながらも、エミールさんの手には、釣り竿が握られていた。格納庫は、ドッグになっていて、海とつながっている。

 けっこう魚が迷い込んでくるので、釣りにはもってこいなのだ。


 

 まあ、それはそうとしてもよ…



 「おめえら、知ってて、アレを積んできたのか?」

 一転して、エルフの三人に、鋭い視線を向けた。


 三人は、最初、何を言っているのか、わからないようだった。おそらく、芝居ではないのだろう。



 冒険者ギルドは、国家とは、一線を画した組織だ。

 むしろ、最近は、国家とさえ対立できる国際的な組織へと進化しつつあるらしい。


 王国の冒険者ギルドは、宰相の言われるままに、セシリアの護衛すら拒絶したが、これは異例のことだという。ほかにも、ケントさんやクレアにまで、嫌がらせをしている。

 ケンイチさんなどは、王都のギルマスたち幹部が腐ってやがるとさえ言っていた。


 だから、いま、目の前にいるギルマス一行が、軍部の片棒を担ぐとは、とうてい思えなかった。


 

 最初は、ただ怪訝けげんな顔をしていたが、エルフお姉さんたちも気がついたらしい。

 

 「なめたまねを…」

 悔しそうな顔をしている。軍部にハメられたのだろう。

 彼女は、しばらく、考え事をしているようだった。

 

 それから、意を決したのか、弟エルフに行った。

 「サバランのギルドを閉めるよ」

 

 弟エルフにも異論はないようだった。

 彼らも、このやり方だけは、許せなかったのだろう。


 それから、三人で、なにか相談をしているようだった。


 相談事が、終わると、

 「すまないが、ちょっと手を貸してもらえるかい?」

 オレたちに、そう言って、頭を下げた。




 

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