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お嫁さん&魔物さんといっしょに、ムテキな異世界生活  作者: 法蓮奏
サバラン共和国(カルシウム大陸)編
126/631

第126話 ジレンマだったりした

申し訳ありません。

最後の部分は、ご存じない方には、まったく意味不明だと思います。

「どうせ、なんかのネタだろう」くらいに思ってください。


 「チビ」という言葉がある。


 これは、昔は、『蔑称べっしょう』だったらしい。

 『チビのくせに……なまいきだぞ』みたいな感じだ。


 つまり、


 『体格が小さいこと』は、よくないこと、マイナスの価値をもつことだった。


 しかし、いまは、違ってきた。


 『小柄な』イケメンアイドルなども存在できるようになった。

 『価値観の多様化』のお陰だ。


 なんでこんな話をしているかというと、


 『盲目の美少女魔導士』に遭遇したからだ。

 

 『目が見えない』ことは、よくないこと、マイナスの価値をもつことだと、ふつうは思う。

 しかし、世の中には、『生まれつき目の見えない人』もいる。


 もし、その人に向かって、『よくない』と言える奴がいたら、そいつの『頭』の方が、よほど『よくない』だろう。

 そもそも、他人を簡単に馬鹿にしたり、否定する人間ほど、『害になる』存在はない。


 

 また、話がそれそうになった。



 いま、オレの目の前には、『盲目の美少女魔導士』がいた。

 オレには、たぶん、この子の目を治すことができるだろう。


 しかし、


 眼が見えるようになったら、この子は、『盲目の美少女魔導士』ではなくなってしまう。

 『ふつうの美少女魔導士』になってしまう。

 まあ、美少女という点で、すでに、ふつうとは言えないかもしれないが…


 こういう考え方は、とても、よくないのだが、オレが彼女の目を治してしまったら、オレにとっての彼女『魅力』が、消えてしまうのだ。


 そういう、ジレンマに陥っていた。


 …………


 …………

 

 しかたがない…


 オレは、『(現状)盲目の美少女魔導士』に話しかけた。


 「目を治したいと思うかい?」


 「…えっ」

 彼女は、びくりとした。

 まだ、初対面なのだ。怯えるのは、無理もない。

 ふたりの付き添いの女性も、心配そうにしている。


 「その目は、生まれつきなの?」

 ぶしつけな質問で、もうしわけないけど…

 いちおう、そう、ことわって尋ねた。


 「い、いえ…、小さいころに、病にかかって…」

 それで、それきり…

 『盲目の美少女魔導士』が、しゅんとうなだれてしまった。

 何か思い出したのだろうか。すまないことをした。


 付き添いの女性が、何かを言おうとしたが、やめてしまった。

 彼女には、オレは、機嫌を損ねてはいけない『暗黒大魔王』に見えているのかもしれない。


 ふむ、『暗黒大魔王』、ちょっとカッコイイかも…


 「その目を治したいかい?」

 三度目の『暗黒大魔王』の質問だ。


 …………


 …………


 彼女は、しばらく、考えていた。

 

 それから、短く答えた。


 「…はい」


 「…で、でも」

 「わ、わたくしには、支払える対価が、ありません…」

 ちいさな声で、かろうじて言った。


 ふむ、なるほど、


 ここで、


 『わたくしの、このカラダのほかには…』とか言いだすのを期待するのは、下種げすというものだろう。

 

 「いまなら…」

 オレは、しずかに言った。


 「たったいまなら…」

 「大サービスで、無料だが…」

 どうする?と尋ねた。


 「えっ!」


 『(現状)盲目の美少女魔導士』が、驚いたのか、はっと顔を上げた。

 でも、もちろん、その目はうすく閉じられたままだった。

 ふたりの付き添いも、唖然あぜんとしている。


 『(現状)盲目の美少女魔導士』は、うつむきながら、消えそうな声で言った。


 「…お、お願いいたします」


 …………


 彼女は、『(元)盲目の美少女魔導士』となった。


 艦長をはじめ、50名ほどの船員たちが、泣いて喜んでいた。


 …………


 …………


 オレは、しばらく、感動の祝福シーンを眺めていた。



 それが、一段落したころ、オレは、『(元)盲目の美少女魔導士』に尋ねた。

 世の中には、万が一ということがあるものだ。


 

 「…い線が見えないかい」


 「…はい?」

 聞き返された。真摯な瞳に、光が揺れた。


 「…赤い線は、見えないかい?」


 「オレの体とか、まわりのモノに、たくさんの赤い線が、はいっていたりしないかい」


 オレは、彼女の両肩をつかんで、尋ねたくなる衝動をこらえた。

 ココ、とっても、大事なところなので…


 「い、いえ!そのようなものは!」

 ややたじろぎながらも、懸命に答えている。


 

 「…そ、そうか」


 オレは、彼女から、そっと視線をはずした。


 「…それなら、いいんだ」


 …………


 彼女の目は、けっこうふつうに治ったらしい。

 どうやら、今日から殺人鬼になったりはしないようだった。

 

  


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