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お嫁さん&魔物さんといっしょに、ムテキな異世界生活  作者: 法蓮奏
サバラン共和国(カルシウム大陸)編
125/631

第125話 逃げるしか能がないにしては

肩こりなのか、首の後ろがとても痛いです。

横になると、痛みがおさまるので、なんとかなってます。

痛いのは、ほんとうにいやだと思います。



 巨大エッグに近づき、外壁が開くなかを、格納庫へと進んだ。


 格納庫(ドッグ)には、すでに、さきほどの帆船が、停泊していた。

 とうぜんのことながら、混乱の真っ最中だった。

 なにやら、叫び声のようなものまで聞こえてくる。


 オレたちが、揚陸艇から降りても、その混乱は続いていた。

 船の甲板でうろたえる船員たちを見上げながら、オレたちは、帆船の間近に到着した。


 「な、なぜ、こんなところにいるんだ!」

 「ついさっきまでは、海のど真ん中にいたはずだぞ!」

 

 「うわー、もうだめだぁ!」

 

 「こ、ここは、どこなんだ!」

 「まるで、建物のなかのようだぞ」


 「うおおおーーっ、もう終わりだぁ!」


 そういえば、

 「さっきのすさまじい砲撃を食らったのか!」

 

 「ひいいいいーーーーっ、もう終わってたんだぁ!」


 ひとり、とても、うるさいやつがいるようだ。


 「ま、まさかっ!こ、ここは『天国』なのか!」



 ………



 ココで、みはらからったように、セーラが、さらっと、返事をした。


 「…そうだよ」 

 

 「だめニャ!」

 「セーラちゃんが、ソレ言ったら、シャレにならないのニャ…」


 ライムが、マジで怒っている。

 


 「「「「「「「「おおおおおおおおーーーーーーっ」」」」」」


 船員が、セーラを発見してしまったらしい。

 「め、女神さまが、いらっしゃるぞーーー」


 「精霊さままで……」

 子猫もみつけたようだ。


 船員たちは、みるみるうちに、ひざまずいていった。


 「ああ、オレたちは『天国』に来られたんだ…」

 「よかった、よかった…」

 涙にむせぶ船員もいた。気の毒に…


 しかし、


 なかには、冷静な船員もいた。

 オレたちを、じっと睨みつながら、アンティークな銃を構えてはじめている。

 

 『へぇー、銃なんてもってるんだ』

 オレは、ちょっと感心した。

 でも、大砲があるんだから、銃があってもおかしくないのだろう。


 「お前たちは、何者だ」

 体格のよいおっさんだった。

 品の良い上着も来ている。いわゆる艦長だろうか。

 

 「答えろ!」

 艦長らしきおっさんの周りの船員は、いっせいに、こちらに銃口を向けた。


 逃げるしか能のない船の艦長にしては、

 「ずいぶん、威勢がいいのですね」

 髪をショートにしたメイドが、ぽつりと言った。

 かわいいけど、けっこうキツイ性格のようだ。覚えておこう…


 「「「「「なんだとっ!」」」」」

 船員たちは、いきり立った。


 オレは、まあ、しかたがない。

 いちおう、男の子だからな。怪しむのは無理もない。


 だが、大半が、少女のような子だ。ばあちゃんもいる。

 さらに、この銃口は、セーラやライムにも向けられていた。


 オレは、すこし、イラっとした。

 

 「ジュンしゃま…」

 「ジュンくん…」

 「だんなさま…」

 みんな心配そうにオレをみている。

 魔力の制御が、いっしゅんゆるんだらしい。



 そのせいだろうか。



 「おやめなさいっ!」

 叫ぶような声が聞こえてきた。

 少女の声だった。


 「いますぐ、武器を捨てて降伏するのです!」

 叫び声と、ともに、ふたりの女性に支えられた少女が、前に進み出てきた。



 …そうか、この子は、



 「何をしているです。早く武器を捨てなさい!」

 ふたりに支えられながらも、りんとした声だった。


 「…し、しかし」

 こちらに銃口を向けている船員たちが、うろたえ始めた。


 「…姫さん」

 艦長らしきおっさんも、動揺している。

 

 「なぜ、わからなのです!」

 「二十日前の、二度の、大波動を忘れたのですか!」



 ……目が、

 


 「な、なんだって…」

 艦長の顔色が、一瞬で、青ざめた。


 「間違いありません。あの時と同じ波長です!」

 「早く、武器をすてて、跪くのです!早く早く!」

 必死で叫んでいる。

 船員たちが、殺されてしまうと、焦っているのだろう。



 …みえないんだな



 「「「「「「「「ひいいいいいい…っ」」」」」」」

 船員たちは、いっせいに銃を捨てて、跪いた。

 おっさん艦長も跪くと、船の上には、立っているものがだれもいなくなった。


 「おやおや…、なかなか大した魔導士が、乗っていたのね」

 ばあちゃんが、くすくす笑いながら言った。


 そして、


 ちらりと、オレを見ながら、

 「これは、十一人目かしらね」


 九人の未来のお嫁さんが、いっせいにオレをにらんだ。


 「「「「「「ひいいいいいいーーーーーっ」」」」」」


 未来のお嫁さん九人の、怒りの魔力に気圧けおされたのだろうか。

 艦長たちが、今にも死にそうな声を上げた。


 オレは、さっきまで叫んでいた少女に見とれていた。


 『盲目の美少女魔導士』キターっ!

 

 オレは、こころのなかで(かっ)さいをあげた。

 もちろん、声には出さない。

 

 

 

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