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お嫁さん&魔物さんといっしょに、ムテキな異世界生活  作者: 法蓮奏
サバラン共和国(カルシウム大陸)編
124/631

第124話 すれ違いってよくあるから

小さいほうの「船」ですが、ただ「船」と書いてもわかりにくいので、最初の呼び名だった「揚陸艇」に戻しました。


 

 『知り合いのいる国の船』

 ばあちゃんは、そう言った。


 それなら、助けないわけには、いかない。


 モニターには、逃げている船に向けて、後ろの三隻が大砲を打ちまくっている映像が映し出されている。



 それにしても、



 「なんで、こんなに当たらないんだ…」

 いや、当たったら困るんだけど…


 いくらなんでも、コレは、ひどい。

 砲弾だって、タダじゃないんだろうに…


 「…もったいない」


 生来の貧乏性のためか、無駄に海中に沈められていく砲弾に同情していると、


 「あ、コレあたるよ!」

 セーラが嬉しそうな声をあげた。


 ががーんっ!

 ばりばりばりーんっ!

 

 …と聞こえた気がした。

 けっこう上空から撮ってるから、音は聞こえないけど…


 「おおっ!」

 当たるじゃないか、がんばったな砲弾くん!


 …って、喜んでいる場合じゃない。

 助ける前に、沈められたら、元も子もない。


 「急いでくれ!」

 緊迫感を装って言うと、


 『かしこまりました』

 どこかに、マイク&スピーカーでもあるのだろう。

 艦橋で操縦しているメイドの返事が聞こえた。


 『離水します』


 そんな声がしたかと思うと、機体がやや傾き、窓の景色がみるみる変わっていく。

 海面の少し上を、飛んでいくようだ。


 『加速します』


 軽いGを感じた瞬間だった。


 窓に、いっしゅん、マストと帆が見えた気がした。


 ……………


 『………ちっ』 

 舌打ちが聞こえた。声はかわいいが…


 ……………


 『旋回します』

 …通り過ぎたようだ。


 「あらっ、きゅうに帆船の動きが鈍くなったわ」

 モニターを凝視していたばあちゃんが、不思議そうに言う。


 くっ…


 オレは、いつぞやのドラゴンを思い出した。

 ああ……、あのときは、翌日、ドラゴンと土下座して謝罪したっけ…

 

 いまごろ、帆船の乗組員たちは、砲撃ぽい音と、空中の大きな水しぶきに、びびっているはずだ。

 いわゆる、ソニック・ブームだ。


 …………


 …………


 オレたちの『揚陸艇』は、『加速』と『旋回』を繰り返していた。


 『ちっ!』

 いらだちのこもった舌打ちが、聞こえてくる。

 もう、何度目だろうか。


 たぶん、


 ①『帆船の速度が遅すぎ』て

 ②『揚陸艇の速度が速すぎる』のだろう。


 こうした『すれ違い』というのは、世の中には、とくに、男女の間には、よくあることだ。

 まあ、操縦しているメイドは、すでに、オレのお嫁さんにノミネートされているが…



 それにしても、



 もう、目の前に帆船がいるのに、なぜ、加速を続けるのか。

 やり遂げるまでは、何度でも挑戦するタイプなのだろうか。



 「まあっ、とうとう、船が停まったわ」

 さきに、帆船のほうが、しびれを切らしたらしい。

 追跡劇が、中断されてしまった。結果オーライか。


 「…さすがね」


 賞賛してくれた、ばあちゃんの笑顔が、……痛い。


 『あ、ありがとう…、ご、ございます…』

 皮肉ではないとわかっているだけに、かえって動揺したのだろう。

 正直な子だなと感心した。

 いいお嫁さんになるに違いない。もちろんオレの嫁だが…

 

 さて、どうしたものだろうか。


 さぞかし、帆船のひとたちも、困惑しているだろう。


 見たこともない機体が、


 ①まわりをびゅんびゅん、高速で飛び回って、

 ②どかーん、どかーんと大音響を発生させて、

 ③空中に水しぶきをまきちらしている

 

 …のだから。


 気の毒なことだ…。


 オレは、モニターの映像を確認した。

 逃げている帆船は、敵をうまく引き離すことができたようだ。

 

 「武器は?」

 メイドに、尋ねた。


 「レーザー砲が数門あり、360度どこにでも撃てます」

 ちなみに、

 「主砲もありますが、このあたりの地形がかわってしまうかと…」

 なるほど……、コレ、ホントに揚陸艇なのだろうか。


 それじゃあ、



 「このあたりから、こう撃って…」

 オレは、モニターの上に、指で線を引いた。


 『了解しました』

 艦橋のメイドからの返答だ。

 マイク&スピーカー&カメラがあるようだ。


 それから、


 「窓から肉眼で見たいから、『揚陸艇』はここに停めて」

 追われている帆船と、追っている帆船の中間地点で、帆船からけっこう離れた場所を指さした。


 指示している間に、『揚陸艇』は所定の位置に来ていた。


 「効果範囲設定」

 「可視化、赤」


 逃げている船の周囲の空間が赤く染まる。


 「じゃあ…、頼む」

 

 『ファイヤ!』

 やっぱり、レーザーでも、ファイヤなのか?


 いっしゅん、光の線が高速で、海上を通過した。


 …………


 ずどどどどどどどーーーーーーーーーーーーーーん


 すさまじい水しぶきが、上がる。

 帆の高さすら超えてしまうような巨大な水しぶきだ。


 帆船が木の葉のように揺れている。

 ちょっと、やりすぎたろうか。転覆しないといいんだけど…


 「空間魔法、転移」


 …………


 激しい水しぶきが、収まったころ、海上に逃げていた帆船の姿は、なかった。

 転移させたんだから、当たり前だけど…

 追跡していた帆船から見れば、俺たちが、木っ端みじんにしたように見えたろう。


 オレたちは、いまだに、波に翻弄される三隻の帆船をしり目に、帰投した。


  

 


 

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