第123話 講義中に
いま、書き終わりました。
何度か、変更を加えたので、最後は、説明的になってしまいました。
翌朝、オレたちは、ふつうに、登校していた。
朝ご飯を食べた後、海上の船から、学院に『転移』したのだ。
タマゴの宇宙船とはいえ、せっかく『船』で異世界を旅しているのだ。
ちょっと、残念な気がするが、学院を休学すると、あとあと面倒なことになる。
とくに、シャルは、やっとクラスメートと仲良くなれたのだ。いまは、通学しながら旅を続けるしかなかった。
「…であるからして」
いつもの講師の声が、階段教室に響いている時だった。
がたんっ!
オレとセーラが、危険を察知して、立ち上がった。
ライムも、何かを感じているようだ。
「ジュンくん、ジュンくん…、何か来るっ!」
セーラは、すでに身構えている。
「『転移空間』が展開されるニャ!」
ライムも叫んだ。
「「「「「「「ど、どうしたっ!」」」」」」」
講師も、クラスのみんなも、オレたちを見て、狼狽していた。
講義の最中に、とつぜん、騒ぎ出したのだ。無理もない
「ち、近いニャっ!」
その瞬間、オレの、頭上の空間が、大きく歪んだ。
「実体化するニャっ!」
歪みは、次第に、ひとつの塊と化した。
そして、
その姿を露わにするなり、落下してきた。
「あっ!」
オレは、あわてて、その落下してきた個体を、受け止めた。
……何とか間に合ったようだ。
「ありがとうございます。だんなさまっ♡」
オレの腕の中では、ポニテのメイドが、ウインクしている。
転移してきたのは、ダンジョンの四姉妹のひとりだった。
「とつぜんの転移で、失礼いたしました」
フランシーヌさまが、
「至急、船に来てほしいとのことです」
「そうか…」
オレは、ゆっくりと、彼女を床に下した。
ミニスカートの裾が大きく持ち上がり、ふたたび元に戻ってゆく。
それは、いわゆる『一幅の絵画』のような美しさであった。まあ、特定の本の絵画だが…
いずれにしても、『緊急事態』のようだった。
オレは、講師に事情を説明した。
………
講師に、説明している間、
クラスのみんなの、ひそひそ話が聞こえてきた。
「だんなさま…だって」
「シャルちゃんや、セーラさまもいるのに…」
「隣に座ってるクレアちゃんも、そうよ」
「このうえ、またひとり増えたのか?」
軍事演習のときには、
「五人とか六人とか言ってたわね…」
「じゃあ、七人目なのかしら…」
そんなに、オレのお嫁さんが気になるのだろうか…
まあ、そのうち収まるだろう。
高をくくっていると、
セーラの声も聞こえてきた。
「…違うよ」
「増えたのは『四人』で、しかも『四姉妹』なんだよ」
つまり!
ジュンくんのお嫁さんも
「いよいよ、二桁の大台にのったんだよ!」
いったい、どこまで、増えるんだろうね…
他人事のように、解説していた。
…くっ
お前だって、その一人だろうに…
「「「「「「「えーっ!」」」」」」」」」
「「「「「「「四姉妹ですって!」」」」」」」
「「「「「「「二桁に突入したの!」」」」」」
クラスのみんなの『輪唱』をあとに、教室から出ようとすると、講師がおっさんが、声をかけてきた。
「フランシーヌさまのこと、よろしく頼みます」
あの方は、民のためにご自分を犠牲にされた。
「今度こそ、ご自分のために生きていただきたい」
君に頼ってばかりで、申し訳ないが…
そんなことを言いながら、深々と頭を下げていた。
「任せてください」
オレは、シャルや、セシリアたちと合流するために、急ぎ足で教室を出た。
ポニテメイドの知らせを受けたオレたちは、すでに、我が家に戻っていた。
ようするに、海の上だ。
いま、我が家は、巨大なタマゴに乗って、海上を移動している。
なんとも、落ち着かない感じだけど、これはこれで楽しい気もした。
…………
「ああ、来てくれたのね」
『格納庫』に直行すると、すでに、ばあちゃんが待っていた。
「講義中だったのでしょう…、ごめんなさいね…」
そういって、深々と頭をさげた。
「あまり、時間がありません」
くわしいお話は、こちらの船に乗ってからということで…
そう言って、ポニテメイドが、目の前の船を指さした。
これから、『現場』に向かうのだが、さすがに、この巨大なタマゴで向かうわけに行かない。
その船は、ちょっと、『ホバークラフト』に似た形をしていた。
でも、『エアークッション』ではないので、下部は、角ばった形をしている。
もちろん、プロベラもついてはいない。そのかわり、双発の大きなエンジンが、屋根に埋め込まれていた。
格納庫も、ドッグとして改造されていた。
船は、すでに、海水に浮かんでいる。
オレたちは、桟橋を渡って、船に乗り込んだ。
船のなかは、広いリビングのようになっていた。
『揚陸艇』のような使い方はしないと伝えてあったので、改造してくれたようだ。もちろん、格納スペースも十分に残っているはずだ。
前方には、両端に階段があって、そこを上ると『艦橋』に出るような設計だった。
オレたちが、思い思いに、ソファに座ると、船の前方の外壁が開いた。ほとんど揺れることもなく、船は海に滑り出た。
「こちらをご覧ください」
ポニテメイドが、正面の大きなモニターを差し示した。
そこには、四隻の帆船が写っていた。
一隻を、三隻が追いかけているような感じだ。
かなり上空からの撮影だ。
まさかと思ったが、いちおう尋ねてみた。
「これは?」
「はい、ドラゴンさんが、ステルス飛行で、撮影されています」
もちろん、リアルタイムの映像です。
淡々と、ポニテメイドが教えてくれた。
なるほど、
ドラゴンのくせに、こそこそ『盗撮』してるのか。
姿を見せると、四隻とも逃げてしまうからだろう。
面白がって撮っているに違いなかった。
そのとき、ばあちゃんが、ぽつりと言った。
この、逃げている船なのだけど…、
「知り合いがいる国の船かもしれないのよ…」
逃げる船を見つめる、ばあちゃんの顔は、真剣だった。
いまは、第218話まで、進めているのですが、行間を詰める作業をするために読み返していると、不都合な部分がありましたので、削除しました。
でも、第123話のお話にはまったく支障はありません。