表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お嫁さん&魔物さんといっしょに、ムテキな異世界生活  作者: 法蓮奏
帝国魔法学院(スフレ帝国)編
119/631

第119話 お前のせい

ブックマークをしてくださっているかたが、20人になりました。

ありがとうございます。とても、励みになります。


 「おおっ、ここにおったか!」

 「探したわ…」


 学院長と、お后さまが、テラスにいるオレたちに声をかけてきた。

 

 「テレーズと一緒ということは、もう、クロードの件は聞いたのね」


 オレは、うなずいた。


 「じゃあ、クロード抜きでも『決闘』することも…?」

 「はい、オレも、そのつもりでしたから…」


 「そうだったのね…」


 お后さまは、なにやら納得しているようだった。


 すると、

 

 「ここでは、話しにくいこともある。場所を替えんか?」


 学院長が、あたりを見回して言った。

 学院長や、王妃まで合流したのだ。いっそうギャラリーが集まってきていた。




 結局、みんなで我が家に転移してくることになった。


 人目ひとめを気にしなくてもいいし、何より、セーラが『ソフトクリームが食べたい』と言い出したのだ。

 

 

 もちろん、お后さまは、人妻で母親なので、圏外だ。

 しかし、テレーズさんや、ララちゃんに、オレの『将来のお嫁さん五名』も全員そろっている。

 美女と美少女が、いっせいに、ソフトクリームをぺろぺろする姿は、まさしく壮観であった。

 黒の魔導士のララちゃんも、ソフトクリームに集中していたおかげで、オレの邪念に気づくものはいなかった。



 「セザールも、行方をくらましたわ」

 アイスを食べ終わって、すっかり、涼しくなったところで、お后さまが、話を切り出した。


 「スターチ侯爵自身も、今朝からあわてて、領地へ引き上げたのよ」

 「まあ、セザール君は、その馬車のなかにでも、隠れておったのじゃろうな」


 おおかたそんなところだろう。

 それにしても、逃げ足の速い連中だ。

 あれだけ、オレを罵倒していたのに、プライドの欠片もないのだろうか。


 昨日の軍事演習で、スターチ侯爵といっしょになって、オレをけなしていた貴族たちも、すでに、大半は、帝都を出て領地へと向かったらしい。

 さきほど、食堂から逃げ出した連中も、今日には、帝都を出るだろうと、学院長は予想していた。


 

 「クロードは、ジュンくんが、シャルを助けたり、魔法実験を成功に導いたのを、嫉妬しただけだったのよ」


 お妃さまが、腹立たしそうに言った。


 「それを、貴族の名誉にすり替えたのじゃ」

 「まともな貴族は、みな怒っておる。リーズ王妃ばかりではないのじゃ」


 そう語る学院長もけっこう腹に据えかねていたようだ。


 「自分たちまで、平民にちからを発揮されては困るような『無能な貴族』の一員にされかかったのじゃからな」

 

 そのうえ、


 「そのジュン殿は、実は使徒さまであることが、ライムさまや女神セーラさまで、証明された」


 魔導士長のテレーズさんだ。


 「演習開始前に、ジュン殿をさんざんののしっていた連中は、とにかく、ほとぼりが冷めるまで、人前には出られないわね」



 あとは、明日、『決闘』の会場である闘技場で、ぼんやり待っているだけとなった。

 面倒だが、どうしようもない。




 「シャルが、船を…?」


 『決闘』の話が、一段落したので、シャルのおねだりの話になった。


 もちろん、毒薬だの爆弾なのを、ねだったわけではない。

 なんの心配もないのだ。

 まあ、せっかく、保護者が目の前にいるのだ。

 ちょっと、話題にのせてみることにした。


 「……そう」

 「シャルは、お義母さまのために頼んでくれたのね…」


 そういって、隣のシャルの頭をやさしくでていた。


 「船を欲しがっているのは、お義母さまなのよ」


 意外な人物がでてきた。


 「あの、…ばあちゃんが?」


 思わず聞き返した。


 「…そうね。正確には、亡くなった前皇帝、シャルのおじいさまかしらね」



 ①『前皇帝』

 ②『フランシーヌ皇后ばあちゃん』

 ③『アヒルシップ』

 なかなか、すさまじい組み合わせだ。



 「おじいさまは、戦場で亡くなる間際まで、口癖のようにおっしゃっていたそうなのじゃ」

 『あの大海原を、船で渡ってみたかった』と。


 ほんものの船だったのか…


 まさか、『富豪セレブの愛人』なみの、おねだりだったとは…

 オレは、うれしそうに、母親に撫でられているシャルを、まじまじと見つめた。


 「わたしも、聞いた」


 きゅうに、ララが口をひらいた。


 「前皇帝の夢だった」と。


 そういえば、こいつも、さっき、シャルといっしょになって頼んでいたな。

 

 「まさか、ララまで、ジュン殿に頼んだの?」


 ララは、さっと目をそらした。

 

 「……まったく」


 テレーゼさんが、ため息をつきつながら、教えてくれた。


 「『黒の魔導士』は、もともと、フランシーヌさまが率いていた宮廷魔術師団の名前なの」

 今でも、最強の魔導士団だったと、言われているわ。

 その後継者たる私たちが、ジュン殿に手も足もでなかったと、小耳にはさんだらしくて…


 「すさまじい訓練だった」

 「このままでは、死ぬ…」


 ララが、思いつめたような顔で、ぽつりとつぶやいた。

 

 いくらなんでも、昨日まで、死にかけていた高齢者だ。

 それに、まだ、一回しか稽古をつけてもらっていないのだ。

 話を盛りすぎじゃないんだろうか。

 オレは、半信半疑で聞いていた。


 

 「ワシも見たが…」

 あれは、全盛期にも勝るとも劣らぬ魔力じゃった…

 いやいや…、全盛期以上じゃな…

 学院長まで、呆然ぼうせんとして、語っている。



 「精神も肉体もボロボロになっていたのを、ジュンしゃまの魔力で回復しましたからニャ…」


 なんか、聞いたことがあるような話だった。


 「あのシルバーウルフみたいなもんですニャ」

 「むしろ、パワーアップしても、何の不思議もないですニャ」


 ライムが、さらっと解説した。

 死にかけの高齢者が、パワーアップって何の冗談だろう。

 

 「やっぱり、お前のせい」

 「なんとかして…」


 ララが、すごい目でにらんでいた。


 オレが悪いのか…?


 帝都の民が、こぞって慕っているばあちゃんを救ったのに、なんで、ココで、恨まれてんだろう…




 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ