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お嫁さん&魔物さんといっしょに、ムテキな異世界生活  作者: 法蓮奏
帝国魔法学院(スフレ帝国)編
116/631

第116話 それを言っちゃあ…


 白ローブじじいは、帝都教会の大司教だった。

 それだけに、セーラの言葉を聞き流すわけにはいかなかったらしい。


 「そ、それでは、ジュン殿は、シャル姫ばかりでなく、女神さまとも親しくされて…」

 芸能人記者なみに追及するつもりらしい。

 手帳を片手に、ペンをなめている。


 「違うよ」


 セーラは、きっぱりと否定した。


 「そ、そうでしたか。さきほどの話は、やはり、聞き間違いで…」

 なにやら、ほっとしたらしい。


 ところが、セーラが、どや顔で言った。


 「ボクはね、こういう面は、フェアでありたい思ってるんだよ」


 「はい…?」

 じじいには、何を言ってるのかわからないようだ。

 とうぜんだろう。オレにもわからないのだから…


 セーラは、ちっちっ…と指をふってみせた。


 「ボクと、シャルちゃんだけじゃないってことだよ」

 「は、はあ…」


 じじいの頭は、いっそう、混乱しはじめたようだ。


 「ほら、あそこに、いるでしょ」

 そういって、聖女セシリアたちを指さすと、


 「ジュンくんの、お嫁さんになるのはね…」


 ①『ボク』

 ②『シャルちゃん』

 ③『聖女セシリア』

 ④『元聖女イレーヌ』

 ⑤『クレアちゃん』


 「いまのところ、五人だよ」

 ほんとは、六人なんだけど、まだナイショなんだよ…


 ご丁寧に、解説していた。


 セシリアたちに目をやると、みな、頬を染めて、うつむいている。

 こ、これは、ハーレムエンディングへと着実に進んでいるのだろうか…



 しかし、ひそかに、喜んでいる状況ではなかった…


 「「「「「「「「「……じーっ」」」」」」」」」」」


 オレは、ふと思った。


 いったい、いま、この演習場には、どれだけのひとがいるのだろう…

 いま、オレは、その人数分の冷たい視線を、いっせいに浴びている気がした。

 

 ちなみに、賢帝は、母親の命を救ってもらったことも忘れたのか。皆に、にらまれるオレをみて、ほくそえんでいた。 



 「まあ、うらやましいわね」

 ばあちゃんが、楽しそうに言った。


 おじいちゃんは、もう死んじゃったのだから、

 「あと、すこし若かったら、わたしも加わったのにね…」

 そういって、からからと笑っていた。

 

 静まり返った演習場内には、ばあちゃんの明るい笑い声がさわやかに響き渡っていた。




 「演習が終わったばかりなのに、すまないね」

 ローラン騎士団長が、申し訳なさそうに、言った。


 「ローランさんこそ、お疲れさまです…」

 オレも、彼をねぎらった。

 彼にばかり、気を遣わせるわけにもいかない。ほんとうに、お互いさまなのだ。



 「それにしても…、あからさまに、逃げだしてますニャ」

 頭の上で、ライムがしゃべっている。


 演習場で、『お披露目』は終わったのだ。

 少なくとも、もう帝都では、こそこそする必要はなくなっていた。


 もちろん、それは、セーラも同じだった。


 セーラは、オレの腕に抱き着いて、ずっとくっついて歩いている。

 これは、かたちとしては、『胸が当たってる』イベントではあった。ただ、残念なことに、セーラでは、オレの腕に接触中の胸部の体積に、やや不足があった。

 

 「ジュンくん、ジュンくん、なんだか、いま、とっても、不愉快な想念を感じたよ…」


 「そ、そうか…」

 「なにしろ…、ガラの悪い連中で、いっぱいだからな…」

 オレは、周りの連中のせいにした。



 じっさいに、いま、目の前には、ガラの悪そうな傭兵や冒険者があふれていた。


 もちろん、『決闘』に加わるはずだった連中だ。

 オレを殺して、それなりの金を稼ぐつもりでいたらしいが、『決闘』で死ぬのは、まちがいなく、自分たちであることがわかったのだ。

 連中は、帝都から逃げ出そうと、大慌おおあわてで城門に向かっていた。


 こういうとき、逃げるついでに、悪さをしようと思いつくバカがいるものだ。

 

 騎士団長は、帝都の巡回を最大限に強化した。

 それにともなって、オレにも、ケルベロスさんの増員を要請してきたのだ。


 いま、帝都は、街なかも、帝城も、ケルベロス部隊が目を光らせていた。

 いや、ケルベロスさんなので、『鼻をクンクンさせていた』と言うべきだろうか。


 さらに、余計な悪事をする余裕を与えないために、オレも出動することになった。まあ、いってみれば、『追い出し担当』である。

 じっさいに、オレを目にすると、傭兵も冒険者も、青くなって、城門へと逃げ出していった。



 「ねえ、ねえ、ジュンくん…」


 必死で駆けていく連中の後姿を見ながら、セーラーが、しみじみとつぶやいた。

  

 「ジュンくんってば、もう、すっかり『化け物』になっちゃったんだね…」


 …………


 「セーラちゃん…」


 ライムが、まじまじとセーラを見た。

 「それを言っちゃあ、おしまいニャ…」





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