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お嫁さん&魔物さんといっしょに、ムテキな異世界生活  作者: 法蓮奏
帝国魔法学院(スフレ帝国)編
114/631

第114話 帝国の魔女

いぜん、三人称で書いたせいか、一人称で書いているときにも、なんとなく、三人称ぽくなってしまいます(笑)。いろいろ難しいものだと思います。



 じつは、模擬戦の後始末が、まだ終わっていない。


 今の騒ぎで、宮廷魔導士たちも、動くに動けなかったらしい。いまだに、『氷の槍』の下で、震えていた。

 おびえているというよりも、じっさいに、寒いのだろう。風邪をひいていなければいいのだが…


 しかたがない


 「効果範囲、設定」

 「可視化、赤」


 赤い空間が、宮廷魔導士百人を包み込んだ。

 赤いからと言って、暖かいわけではない。単なる着色だ。


 「空間魔法、転移」


 赤い空間と共に、魔導士たちが消えた。


 そして、『氷の槍』に囲まれた空間のそと、賢帝たちの近くに、ふたたび、姿を現した。


 「「「「「「「「「ええええ…っ」」」」」」」」」」


 観客席が、きょう、何度目かのどよめきに包まれた。

 

 先日、ぬいぐるみを、目と鼻の先に、転移させただけで、歴史的な偉業だったのだ。無理もなかった。


 オレは、『氷の槍』の下に、だれもいないことを、再度確かめた。


 それから、右腕を、ゆっくり下した。

 

 どすーーーーーーーーーん

 どすーーーーーーーーーん

 どすーーーーーーーーーん


 『氷の槍』が、次々と落下する。

 激しい地響きと共に、地面に突き刺さっていった。


 しばらくすると、演習場には、巨大な『バビルの塔(氷版)』がそびえ立ち、無数の『氷の槍』が地面に刺さっていた。


 幻惑の類と思う余地を与えないために、すぐには消去しないことにしていた。まあ、なにをどうやっても、そう思い込みたいヤツは思うだろうけど…

 

 帝都は、もともと夏のような気候だ。

 しかし、この演習場だけは、空気がひんやりとしている。

 まるで、ここだけ異世界のようだった。異世界のなかの『異世界』だろうか。


 観客たちは、あらためて、目の前の『異世界』を見て、言葉を失っていた。

 

 

 そのとき、静まり返った演習場に、弱弱しいながらも、りんとした声が聞こえてきた。


 「ほ、ほんとうに…、来たかいが…、あったわね」


 だれもが、声の主を探した。

 聞き覚えがあったからだ。


 「あそこだっ!」

 「あそこに、いらっしゃるぞ!」

 中年の男が、立ち上がって、大声で指さした。


 演習場の、出入り口に、三人の女性が見える。

 

 ひとりの女性の両肩を、ふたりの女性が支えていた。

 支えられていたのは、いかにも貴婦人といった感じのばあちゃんだった。


 「は、母上…、なぜ、このようなところに…」

 賢帝が、声を震わせて、立ち上がった。


 あっというまに、ばあちゃんのそばに駆け寄ると、

 「なぜ、母上を、連れ出したっ!」

 ばあちゃんの肩を支えていた、ふたりを叱りつけた。


 「…シャルル、おやめなさい…」

 「…わ、わたしが、無理を言って…連れてきてもらったの」

 ばあちゃんは、毅然として言った。


 「…おばあさま」


 「…お義母さま」


 シャルも、お后さまも、駆け付けてきていた。


 「なぜ、このような無茶を…」

 泣きそうな声で、賢帝が尋ねる。


 すると、ばあちゃんは、やさしく微笑んだ。


 「…だって、シャルの…だ、大事なひとが、参加するのでしょう」

 「…わ、わたしも、その子に、あ、会ってみたくて」


 それから、オレをじっと見て言った。

 「…すばらしかったわ」


 「…こ、氷の大魔法だけでも、びっくりだったのに」

 「…空間転移まで、つ、使いこなしているのね」


 うれしそうに、微笑っている。


 「…ほんとうに」

 「…来たかいが、…あった」


 しみじみと、そう言い終わると、


 ごほっ、ごほっ…、血を吐いた…

 あたりが血で染まった。


 さすがに、オレにも、これはヤバいとわかった。

 

 「お、おばあさまーっ」

 シャルは、すでに、泣き出していた。

 

 「は、母上、ど、どうして…」

 賢帝まで、泣き出した。マザコンだったのか…


 お后さまは、オレをすがるように見ている。

 この中では、一番冷静なのだ。


 「シ、シャルル…しっかりしなさい…」


 ばあちゃんは、あれだけ吐血しても、毅然としていた。

 

 「わたくしも、て、『帝国の魔女』と呼ばれた魔導士…」

 「ベッドの上で、最期を迎えたいなどと思ってはいないわ…」


 かっこいいばあちゃんだった。

 こんな体で、オレに会いに来てくれたと言った。


 しかたがない、


 「ライム、セーラ、出てきてくれ…」

 リュックに隠れていた二人を呼んだ。


 「ジュンしゃま…ようすは見ていましたニャ」

 ライムは、状況を把握していた。


 セーラは…、

 「ジュンくん、ジュンくん、シャバの空気はうまいねぇ…」

 …通常運転だった。

 

 「…あら、せ、精霊さまがみえる…わ」

 「いよいよ、お迎えが、き、きたのかしらね」


 ばあちゃんが、嬉しそうに言った。


 「ライムは、そっちの担当ではないのニャ…」

 ばあちゃんに喜ばれて、ライムが、困っていた。




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