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お嫁さん&魔物さんといっしょに、ムテキな異世界生活  作者: 法蓮奏
帝国魔法学院(スフレ帝国)編
113/631

第113話 軍事演習(5)

軍事演習が一段落します。


 

 オレは、迫りくる炎の塊をぼんやり見ながら、

 地面に膝をつくと、


 ばんっ!


 地面に、手のひらをたたきつけた。

 

 どおーーーーーーーーーーーーーーーーーん


 しゅんかん、氷の巨大な塔が、地面から出現した。

 

 そして、

 

 どっかーーーーーーーーーーーーーーーーーん


 氷の塔は、迫りくる、炎の塊に激突した。

 さらに、巨大な炎を、突き破りながら、空へと伸びていった。


 『バビルの塔(氷版)』だ。


 まあ、ホントは、『水魔法』の『氷柱』なので、地面をたたく必要は、まったくない。

 そもそも、地面と関係ないし…

 しかし、ちびっ子もたくさんいるのだ。このアクションは必須だろう……と納得することにした。


 おおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーー


 観客席に、驚愕の声がとどろいた。

 何故か、字面はいつも『お』の連続だが、けっして手抜きではない。


 「見ろ!炎が、どんどん消えていくぞ!」

 「あの大魔法が、破られた!」

 「で、でも…」

 「と、飛び散った炎が落ちてくるわ!」

 「うわーっ」

 「もう間に合わねえ!」

 

 こまかく実況してくれている観客もいるようだ。


 たしかに、思い切り『バビルの塔(氷版)』をぶっつけたせいか、炎の塊が割れて、大きな火のが降り注いてきた。

 まあ、大きいのに、『火の』というのも、おかしいが…



 「効果範囲、設定」

 「水魔法、氷槍」

 

 オレの、周りに、『氷の槍』が、続々と現れる。

 

 「補助魔法、追尾!」

 「標的、大きいけど『火の』!」


 びゅんびゅんびゅんびゅん………………

 

 『氷の槍』が結晶するなり、次々に射出された。

 いっけん、無軌道に散っていくように見える。

 だが、落下する『火の粉』を追いかけ、片っ端から、貫き、消失させていった。


 

 「す、すげえ…」

 「『氷の槍』が…」

 「自分で『火の粉』を追いかけてる…」

 「火の粉が、どんどん消えていくわ!」


 観客の、実況は続いているようだ。



 しばらくすると、演習場には、雲を貫いて屹立きつりつする、馬鹿でかい『バビルの塔(氷版)』だけが残った。


 こんどは、オレのターンだった。


 「効果範囲、設定」

 「可視化、青」


 およそ百名の宮廷魔導士の、頭上に、青い空間が広がっていく。


 見る見るうちに、その空間は、魔導士たちの頭上を覆い隠し、さらに、観客席の手前まで広がり、止まった。

 観客席の上にまで、伸ばすわけにはいかない。


 「水魔法、氷槍」


 オレは、ふたたび、『氷の槍』を現出させた。

 こんどは、あの砂漠での戦闘を再現するためだ。



 『決闘』の話が出たとき、お后様は、オレが、二万のデザート軍を、ひとりで片づけたと話した。

 スターチ侯爵たちは、それを頭から「嘘」と決めつけた。


 そして、お后様をおとしめるために、やたらと吹聴ふいちょうしていたのだ。

 『王妃ともあろう者が、見え透いた嘘をついた』と。

 シャルのママを、嘘つき呼ばわりするなど、許せるものではない。



 青い空間が広がるのを、追いかけるように、『氷の槍』が姿を現した。それは、次々と、数を増やしていった。

 やがて、広大な青い空間すべてが、無数の『氷の槍』で、埋め尽くされた。


 「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」」」


 観客たちからは、声すら上がらなかった。

 演習場は、静まり返った。


 「こ、降参する…」


 宮廷魔導士長のテレーズさんの声が聞こえてきた。

 頭上を埋め尽くす槍の矛先をみて、腰を抜かしている魔導士もいるようだ。



 宮廷魔導士たちは、みな、膝をついて両手をあげ、戦意がないことを示していた。ある意味、模擬戦終了の合図のようなものだろうか。

 


 「げ、幻覚だ。み、見せかけに決まっとる!」

 「そ、そうだ…」

 「あんな数、ありえない…」

 「げ、幻惑にすぎない」


 スターチ侯爵一派が、ぶつぶつ、わめき始めた。

  

 すると、外野席の、傭兵や冒険者たちまで、虚勢を張った。


 「そ、そうだ、そうだ!」

 「あ、あんなの、ニセものにきまってらあ!」

 「だ、だまされねえぞ!」


 さきほどの、大魔法の激突も、幻惑とでも言うのだろうか。それは、宮廷魔導士全員を、詐欺師呼ばわりしているのとおなじだろう。



 もはや、観客たちでさえ、あきれていた。


 「あいつら、何を…」

 「あたまが、おかしいんじゃねえのか…」

 「あきれたわね…」


 しかたがない…


 オレは…


 右手を、スターチ侯爵たち貴族へ、

 左手を、助っ人の傭兵や冒険者たちへ、向けた。


 すると、オレの手の動きに合わせるように、『氷の槍』が、向きを変えた。


 半数は、スターチ侯爵たちへと、矛先を向け、

 残り半数は、傭兵と冒険者たちへと、矛先を向けた。


 「じゃあ、試してみるか?」

 「すぐに、わかることだ」

 スターチ侯爵に、問いただした。


 「「「「「「「「「ひいい………っ」」」」」」」」


 侯爵デブたちと、傭兵たちは、いっせいに悲鳴を上げた。 そして、四つん這いになって、出口へとあわてた。



 なんだ、幻影だなんて、ちっとも思ってないじゃないか…

 ホントに、口先ばっかりの連中だな。


 「そのくらいにしておけ…」

 賢帝が、静かに言った。


 「明後日の楽しみがなくなってしまう…」

 明後日は、『決闘』の日だ。

 賢帝も、ねちねち楽しんでいるようだ。


 

 「冗談じゃねえっ!」

 「なんで、あんな化け物と戦わなくちゃいけねえんだ」

 「あんなやつが相手じゃ…」

 「命がいくつあっても、足りやしねえ!」

 

 傭兵も、冒険者も、真っ青になって逃げだした。

 このまま、帝都からも逃げ出すのだろうか…



 まあ、予定通りなのだけれど…



 スターチデブ侯爵も、セザールも、次々と観客席から逃げ出そうとしていた。

 『決闘』の元凶、クロードなどは、唇まで紫色になって、カタカタと震えていた。


 今のこいつらには、『貴族の名誉』など、欠片もみあたらなかった。そんなものは、もともと持っていなかったのだろう。

 せいぜい、もっているのは、根深い劣等感と、その反動としての虚勢と傲慢だけなのかもしれない。




 

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