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お嫁さん&魔物さんといっしょに、ムテキな異世界生活  作者: 法蓮奏
帝国魔法学院(スフレ帝国)編
112/631

第112話 軍事演習(4)

きょうは、なかなかあわただしい一日で、ようやく、いま、書き終わりました。

ちょっと、疲れました(笑)

 


 ごおおおおおおおおおおおおお………っ

 

 オレの頭上に、巨大な炎の塊が迫っていた。

 すでに、視界は、この炎で埋め尽くされている。


 観客席からは、たくさんの悲鳴が聞こえてきた。 


 「きゃー、あぶないっ!」

 「何をしてるのっ!」

 「さっさと逃げろー!」

 「誰か、助けてあげてー!」


 いちおう、オレの心配をしてくれているらしい。

 こういうのも、悪くないものだ。


 オレは、迫りくる炎の塊をぼんやり見ながら、

 地面に膝をついた。

 


*****************



 また、いつものように、時間は、さかのぼる。


 賢帝と、オレの模擬戦は、結局、引き分けということになった。

 将軍じいさんが、オレたちの間に入って、宣言してしまったのだ。続けるわけにはいかない。


 賢帝は、なにやら悔しそうにも見えたが、観客のみなさんは、大満足だった。

 とくに、こどもたちには、龍と、龍もどきの衝突が、たいそう刺激的だったらしい。「すげー、かっこいい」と、いつまでも、興奮していた。 


 …………………… 

 

 「まあ、こんなもんじゃろう…」


 ご意見番の老人会も、そんなことを言いながら、観客席に引き上げていった。なかなか、うるさい評論家連中だった。


 しかし、一部には、きゅうに、お通夜のようになった連中もいた。


 スターチ侯爵一派だ。


 貴族連中は、学院生も含めて、すっかり無口になっていた。


 傭兵や冒険者連中にいたっては、

 「こんなの聞いてねえぞ」だの、

 「ちょっと、魔力の強いだけの小僧じゃなかったのか」だのと、

 いまさら、文句を言っていた。

 ずいぶん軽い気持ちで、オレを殺しに来たものだ。



 スフレ帝国は、『魔法先進国』らしい。

 なかでも有名なのが、帝都パルミアの『帝国魔法学院』、つまり、オレたちが、通い始めた学校だ。この世界では、知らないものはいないほどの『名門』だという。

 たしかに、異世界に来て、オレが知り合ったひとたちも、大半が、学院の卒業生だった。

 

 そういうお国柄のせいか、『軍事演習』でも、『魔法師団の大規模魔法演習』が一番人気らしい。

 オレには、陰の薄い騎士や兵士たちが、ちょっと、かわいそうにも見えた。しかし、その騎士や兵士たちですら、『魔法の演習』を楽しみにしていた。


 その、お楽しみの『魔法師団の大規模魔法演習』の時間となった。


 「今年の『魔法師団の大規模魔法演習』は、ひとあじ、ちがうのじゃ」

 なぜか、司会が、シャルになっていた。


 「シャルちゃん、かわいいーーー」

 「がんばってー、シャルちゃーーん」

 いわゆる「黄色い声援」が飛び交っていた。

 もちろん、女の子のきゃあきゃあ声である。

 

 「今年は、模擬戦を行うのじゃ」

 「大規模魔法の模擬戦じゃ」


 「「「「「「「えーっ!」」」」」」」

 さすがに驚いている。



 それはそうだろう。

 大規模魔法を、撃ちあって、無事でいられるはずがない。

 大量殺人大会になってしまう。


 「それでは、宮廷魔導士対ジュン殿の、模擬戦を始めるのじゃ」


 「「「「「「「「……ホントにやるの?」」」」」」」」


 観客のみなさんが、狼狽する中、模擬戦は開始された。



 あらかじめ描かれた魔法陣のまわりを、百名を超える宮廷魔導士が、二重三重に取り囲んでいる。

 詠唱の合唱が、演習場に、こだましていた。


 オレは、演習場の中央で、ひとりぽつんと立っていた。

 もちろん、魔導士たちからは、かなり離れている。

 大規模魔法は、遠距離魔法でもある。

 離れたところから、敵軍に向けて、どかーんと一発撃ちこむためのものなのだろう。


 「おいおい、ほんとにやる気だぜ…」

 「大丈夫なの、あの少年…」

 「あの子、シャルちゃんの大切なひとなんでしょ…」

 「もう、詠唱が始まってしまったぞ…」

 

 「ロリコン死ね!」


 また、みんな、心配してくれているようだ。

 もちろん、最後のは、聞こえなかったことにした。




 ごおおおおおおおおおおおおお…………


 魔法陣の上空に、とてつもない大きさの炎の塊が出現している。大規模魔法が、完成したようだ。

 ただ、魔導士たちは、額にびっしりと汗をかいていた。今も、魔力を込め続けているのだろう。


 「さあ、撃つわよ!」

 赤毛の魔導士長テレーズさんの声が、響いた。

 

 詠唱が、変わった。

 射撃用の詠唱なのだろう。


 ごおおおおおおおおおおおおお…………


 巨大炎が、ぐらりと傾いた。

 上空から、オレに向けて、斜線上に打ち下ろすらしい。


 ごおおおおおおおおおおおおお…………


 ゆっくりと落ち始めた炎の塊に、いきなり加速がかかった。

 オレの視界を、かんぜんにふさぎながら、落下してくる。すさまじい熱量に、目の前の薄い空気が、ゆがんでいた。


 オレは、迫りくる炎の塊をぼんやり見ながら、

 地面に膝をついた。





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